【鵜飼建志先生】プロ野球・スポーツリハビリに関わる理学療法士としての歩み

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自分の武器を持てば、理学療法士として食いっぱぐれることはない

 最近では、将来に対して不安を抱えている若手療法士の方々がいるということをお聞きしましたが、どの先生も言うと思うんですけど、技術でも知識でも人より優れた何か、アイディアなど持っていれば食いっぱぐれることはないと思います。

 

ですが、ただ人に言われたことだけをやっていてもそれは無理だと思います。

 

「自分の理想に向かってずっと努力できていること」が条件だと思います。ただし私もまだまだ発展途上なので、なかなか明確な目標を意識したことはなく、「今、目の前にある壁をどう乗り越えるか?」ということを続けてきて、幸い食いっぱぐれることなくやって来れているのかなと思います。

 

“本物”に近ければ近いほどより明確な目標に向かって進んでいるんじゃないかなと思います。

 

私なりの“本物”の定義ですが、一つは高いレベルで患者を治せること、もう一つはそれをさらに進化させ続けていけることです。

 

そのためにはまず自分のプライドを持っていることと、言葉にするとキレイ事に聞こえてしまうかもしれませんが「患者さんのために」っていう意識を高く持っていること、が資質として必須です。

 

私は格闘技が大好きなんですけども、ある意味で治療は戦いなんですよ。なかなか治せない症状や障害を持った患者がいて、それに対して戦って勝ちたい。

 

治せないということはその症状に敗北を感じます。負けたくないので勝つまで治す、勝てるように勉強する、そうやっているうちに本物に近づいて、本物になっていくのではないかと思います。

 

人と同じことは出来ない。だから自分のスタイルを磨くしかない

 私自身もちろん尊敬している人、例えば同じ中部学院大学の林典雄先生に整形外科リハビリテーション学会を通じて会った時に「すごいな、こんな知識と技術を持てたらいいな」と思いましたが、その人と同じ道を歩こうとかその人になりたいと思うことはないですね。

 

それは、目指したくないとか目指せないとかじゃなくて、ある意味そこは“個性”であって同じものを求めても意味がないですし、そもそも同じことはできないと思っています。学ぶところは数々の先生からありますが、自分のスタイルを壊すべきではないと私自身思っています。

 

私自身も、このような機会でお話でもしなければあまり深くは考えていなかったとは思いますが、実は結構行き当たりばったりです。私の授業みたいに(笑)。

 

大まかに目指す方向性を決めながらも、同じレールの上を進もうとするのではなく自分の道を歩いて行く、でも遠くばかり見ているのではなくまず目の前の患者に照準を合わせて一症例ずつ治していく。

 

でも目の前の患者のことばかりではなく、先のことも見据えて進んでいく、とこの繰り返しの状態です。

 

先のことを見すぎていれば今やることが明確になりませんし、今やることにばかりに目を向けてしまえば先の目標がぶれますからね。

 

常に視点を変えながら修正を加えていければ良いと思います。

 

理学療法士がスポーツ分野に行くのは異端な時代

私は学生時代からずっとスポーツ分野の理学療法をやりたかったんです。

 

ところが、学校の特徴なのか時代なのかわかりませんが「スポーツをやりたいなどということは口にするな」と言われていたんです。実際のところはわかりませんけど、業界的にもその道を目指す人は異端児だったと思います。

 

今では当たり前にたくさんいますけどね。

 

でも当時、そんなことを言っていると学校側に「国はお前みたいにスポーツをやりたいとか言っているヤツのためにPTを養成する学校を造っているわけじゃない」って言われるんです、国立系の専門学校で学費が超格安だったので。

 

これは先生にも言われましたし、先輩にも言われました。先輩はむしろ心配して「先生ににらまれるからそんなことは言うな」というアドバイスでしたが、まだ若かったので反発して聞き入れませんでした。

 

先生からは「お前みたいなヤツはやめろ」としょっちゅう言われていました、他にも理由はありますが(笑)。

 

それでも、私はどうしてもスポーツ分野をやりたかったものですから、たまたま東京に遊びに行った時に、当時では珍しいスポーツ分野の理学療法を専門でやっている施設にいきなり連絡して、見学させてもらいました。

 

もともと見学に行くために東京に行ったのではなくて観光でした(笑)。

 

「俺はスポーツ分野をやりたいと言っておきながら、スポーツの理学療法をしているところを見たことがない。そもそも見たこともないのにスポーツ分野をやりたいと言えるのか?」と観光中にふと思って東京のある施設の見学を急遽決めたんです。

 

電話をしたらありがたいことに見学を許していただけました。

 

そこで見たスポーツリハは私が考えていたもの半分、違うの半分という感じでした。まず思ったのは「甘くないな」でした。スポーツだから楽しくリハを、ではなく、鬼気迫るもの・必死さを療法士、選手の双方から感じました。

 

その時のご縁で、できたばかりの愛知県のスポーツ医療専門の施設もご紹介いただいて、見学させていただくことができました。

 

その頃、私は名古屋市内の就職に内定していましたし、その後そこに勤務しましたが、就職後も月1回の土曜日休みの日や有給休暇など使ってちょこちょこと出入りをさせていただいていました。

 

実は東京でお世話になった先生は、その後、その愛知の施設の方に転勤になっていました。

 

就職後3年半くらいたった頃、その東京でお世話になった先生から朝、勤務中の病院に電話がかかってきて「お前はいつまでそこにいるんだ!」と一喝されました。「今日どっかで待ち合わせしてたっけ!?」なんてびっくりしながら(笑)

 

電話を続けました。そしたら「お前はスポーツ分野やりたいんじゃないのか?」と言われたのでようやく電話の趣旨を理解しました。「やりたいです」と答えたら「スポーツ出来るとこあるぞ、どうする?」と言われました。

 

「いったいどんな仕事ですか?」といっても「そんなんどうでも良いだろ。俺を信用するかしないかの問題だ!」と言われてしまいまして(笑)

 

結局どこいくかもわからないままでしたね。

 

その当時、私は半年後に結婚も決まっていましたし、結婚後に住む家も準備していたので返事の期限ギリギリまで悩みました。

 

一応、今の給料よりは下がらない、通勤圏内だというところまでは聞き出せたので、お願いしました。そしたら、その行く先が“中日ドラゴンズ”だったというわけです。結果的には大変ありがたいことでした。

 

特に私は野球が好きだったわけでもないですし、プロスポーツの現場にどっぷり浸かって理学療法をするという予定もありませんでした。

 

どちらかというと、様々なご縁で、その職場にありつけて結果的にスポーツ分野ができる環境に行けました。

 

だいぶ行き当たりばったりでしたけども、自分がスポーツをやりたいという意志と行動と人とのご縁でここまでくることができています。

 

次のページ>>プロ野球の世界に入って初めて気づいたこと

 

鵜飼建志先生経歴

【学歴】

平成元年:国立療養所東名古屋病院 附属リハビリテーション学院 理学療法学科 卒業

平成 6 年:名城大学 法学部Ⅱ部 法学科 卒業(法学士)修了

岐阜大学医学部大学院 医学系研究科 スポーツ医科学専攻大学院生

【職歴】

平成元年 4 月:名古屋第二赤十字病院 理学療法士(平成 4 年 12 月迄)

平成 5 年 1 月:中日ドラゴンズ 専属理学療法士 メディカルコーチ(平成 8 年 12 月迄)

平成 9 年 1 月:平成医療専門学院 理学療法学科 専任教員(平成 14 年 3 月迄)

平成 14 年 4 月:吉田整形外科病院 リハビリテーション科 理学療法士

平成 19 年 4 月:中部学院大学リハビリテーション学部理学療法学科 現在に至る

【トレーナー経験】

元世界チャンピオン飯田覚士ほか緑ボクシングジム メディカルアドバイザー(平成元年〜平成18年)

東海学院大学ソフトテニス部 トレーナー(平成10年〜平成22年)

七十七銀行バドミントン部 トレーナー(平成23年〜現在継続中)

【非常勤講師歴】

トライデントスポーツ医療看護専門学校 理学療法学科(スポーツ理学療法学Ⅰ、Ⅱ)

東海医療科学専門学校 柔道整復科(リハビリテーション医学)

日本医療福祉専門学校 理学療法学科(運動療法:スポーツ障害系)

…ただし平成 22年 まで

平成医療専門学院(スポーツ理学療法学、徒手療法ストレッチング)

 …ただし平成 20 年 まで

【有資格】

平成元年 国家資格理学療法士

平成 13 年 日本体育協会公認アスレティックトレーナー

平成 13 年 日本理学療法士協会認定 専門理学療法士(骨・関節系)

平成 20 年 日本トレーニング指導者協会認定 トレーニング指導者

平成 22 年 日本トレーニング指導者協会認定 上級トレーニング指導者

平成23年 整形外科リハビリテーション学会認定 特別上級指導員AAA

【所属学会等】

平成元年 日本理学療法士協会(現在、日本理学療法学術大会査読委員)

平成 3 年 整形外科リハビリテーション学会

 (参加当時 研究会、現在 整形外科リハビリテーション学会 常任理事)

平成 10 年 岐阜アスレティックリハビリテーション研究会 副会長

平成 11 年 日本体力医学会 会員

平成 18 年 日本肩関節学会 会員

【執筆・・・論文】

整形外科運動療法ナビゲーション上肢篇(編集委員、分担執筆)

整形外科運動療法ナビゲーション下肢・体幹篇(編集委員、分担執筆)

復帰を目指すスポーツ整形外科(分担執筆)

 …以上メジカルビュー社

理学療法 MOOK スポーツ理学療法(分担執筆)

…三輪書店

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