英語能力編
まず、 1. 自身の現状把握をする(英語能力編) についてお話します。
第2回でも少し触れたのですが、「自分の能力を客観的に把握できる」とは、つまり「メタ認知」能力です。
直感に左右されず、周辺環境や経験を組み合わせながら客観的に自身を把握できる能力です。
ここがしっかりしていれば、周囲の甘いささやきにブレることはないです。
また現状を把握できるからこそ目標設定への戦略を見出すことが可能です。
私自身、自分の英語力の酷さは知ってはいましたが、教材を中学1、2年レベルを選択することに抵抗がかなりありました。
ですが、音読でスムーズに話せる、発音を間違えない、リスニングでしっかり聞き取れるか?になると、日本人は急に苦手になります。
そもそも中学3年レベルの文章をスピーキングで自在に操れる事はハイレベルとされています。
■テスト対策のためでは英語力はつかない
また、一般的な英検やTOEICでも英語能力を知る上での基準が記されているので、参考にはなると思うので掲載します。
TOEICの表で自身のレベルをなんとなくでよいので想像してみてください。
TOEICでは書店に行くと600超えとか800超えとかのタイトルが目立ちますが、療法士で英語から遠ざかっていた方がいきなり受けると200点台~300点台だと思います。
550は英検2級レベルと言われています。
英語の世界で必要最低レベルとされているのが英検2級とされています。
では、高校のころ英検2級を持っていたセラピストがどれだけいるでしょうか?
しかもその後、英語の勉強を継続された方はいるでしょうか?
また英検2級は6割で1次試験を通過しますが、ぎりぎりの人と9割以上取れる人には大きな差があります。
加え、英検2級を一般の受験勉強的で頑張ってとれる能力と僕が考える英語力にはかなりズレがあります。僕が考える英語力は、テスト対策しなくてもいきなり英検2級を8割以上とれるようなレベルです。
いわゆるテスト対策をして英検2級をとれるような能力は、あくまでテストのための英語力です。TOEICでも同じです。
TOEIC900とれても全く話せないひとがいるそうです。
これではバランスが悪すぎて英語力が高まっているとは言いがたいです。
テストのためのテスト対策は英語力を高めるには不向きです。
僕が考える英語力はこれまで述べたとおり、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングが比較的均一のレベルで、このような能力が医学系の英文読解にも非常に大切だと考えています。
■中1の教科書から始めることが上達への鍵
高校2年位の文書はなんとか読めたとしても中学1年の文書を瞬間的に発話できなければ、僕は中1の教科書から始めるべきだと考えています。
よくリーディングで頭から英語を理解していく方法がありますが、
頭から理解するには文法を無意識的に処理できるレベル、
単語を瞬間的に思い出せる能力、構文を素早く見抜く能力、
コロケーション(形容詞や名詞などが組み合わさり意味を形成する用語)を数多く知っている必要があります。
そのためにも中学1,2年の教科書からはじめ、現在形や過去形、現在進行形や疑問文などを身体に刻んでおくと、その後の勉強がスムーズになると言えます。
自身の現状把握をする(生活環境編)
それでは2の自身の現状を把握する(生活環境編)について述べます。
これは英語能力とは別で、自身の生活環境や仕事、家庭、将来の目標などを把握するという意味です。
英語を勉強するには最低でも集中して30分、基本平日2時間くらいはほしいところです。
現状の学生あるいは療法士生活のなかでこの時間を確保できるでしょうか?
毎日仕事が7,8時に終わるセラピストの方々はこの2時間を確保できるでしょうか?
英語に必要な基本能力を身につける時間は4000時間(英検準一級レベル)と言われています。
僕も英検準一級をバランス良い勉強方法で獲得できるレベルが、高速に医学論文を読めるレベルであり、私が考えるセラピストの英語力の一つのゴールと考えています。
もちろん英検2級レベルでも医学論文に十分取り組めるレベルと思うので、 ひとつの目標としてよいかもしれません。
中高の学生生活は1200時間とされています。
英検準一級レベルを目標にする場合、残りの2800時間をどう確保しますか?
例えば、1日1時間だとすると、何年かかるでしょうか?
毎日やったとしても2800÷365=8年近くを必要とすることになります。
平均2時間であれば4年になります。
土日5時間やれば3年に削れます。
英会話学校に通って思うように能力が伸びないというヒトは、そもそも英語の勉強時間が足らないヒトが多いのです。
まずは勉強時間を本当に確保できるか?
確保するためには何を辞めるか、自問自答する必要があります。
私自身は「6時までには職場をでる」という風に決めて、カルテを可能な限り時間ないに書き上げたり、実技練習は昼休みに組み込むなど、工夫をしました。
職場を出る時間を決めると逆算的にこれまで行っている習慣を見直す機会になります。
若いころは特に「長く残っている人が仕事を頑張っている人間、勉強している人間」と勘違いしやすいです。
職場の雰囲気もダラダラと長く残る習慣が出来上がっている職場もあります。
英語を学習するために環境を変えるということは本当に大変なことですが、夜9時以降の勉強となると効率が悪いです。
できるだけ睡眠時間を削るような身体に負担のかかる勉強方法は辞めるべきです。
疲労は集中力の低下や継続できなくなる要因になるので注意が必要です。
なによりも自身の仕事でありセラピーに英語の勉強の弊害が出ることはプロとして一番あってはならないことだと考えます。
モチベーション維持のためのポイントに移ります。
「英語力を高める=継続する」ことが重要です。
まずは3日、3週間、3ヶ月を目安に継続できるかTryしていきます。
私自身モチベーションを継続するための方法として以下の3つを特に意識しました。
1.本当に読みたい論文、書籍の選別。
2.周囲に○○ヶ月でこれを読み切り、月2回現状読んだ範囲をまとめ発表すると事前に公表。
3.本当にやる気のある相方・メンバーを探す。
1の本当に読みたい論文、書籍の選別ですが、まずは「英語に毎日触れる」という環境が大切です。
いきなり文法の勉強や英語資格にチャレンジするためにテキストをこなすような習慣を作れる人であればよいですが、まずは読解中心でもいいので、自身の仕事や興味に関連のある論文や書籍をみつけることが大切です。
しかし、興味があるからといって英語の漫画(ワンピースなど)を選択する場合、自身のトレーニングとしてはよいですが、2の周囲に公表して勉強会を企画することにつなげていくのは難しいです。
専門的な内容だと周囲も耳を傾けてくれますし、自身のセラピスト技術に直結します。
これは私が考える英語力とはちょっと離れるトレーニングになりますが、まずは論文を中心に英語に触れる習慣を作ってから、受験型の勉強を取り入れ音読やスピーキング、リスニングに取り組んでいく流れが自然かと思います。
2の周囲に公言する方法ですが、私は相方のPT佐藤と一緒に、「近代ボバース概念 理論と実践」の原著である「The Bobath Concept in Adult Neurology」の書籍250ページを二人で相談して翻訳し、途中途中職場の勉強会の中で発表していきました。
2週間毎でしたので、モチベーションが切れかかるタイミングにうまく入れることで結果的に8ヶ月、ほぼ毎日英語に触れる習慣を作ることができました。
これは書籍でなくても論文を10冊くらい選んで同様の方法を行うことも可能かと思います。
3ですが、実際職場や学校にどれほど英語スキルを本当に伸ばしたいというセラピストあるいは学生さんがいるでしょうか?留学経験があったり、英会話学校に通っているからといって本当に英語スキルを伸ばした人かどうかはわからないです。
毎日2―3時間英語の勉強に取り組める同僚を見つけ出してください。
1年目にもすごい奴がいるかもしれません。是非自身の仲間にしてください。
互いにwin-winの関係を作ってください。
■ +α 今回の「ちょっと気になる英文読解シリーズ」
Motor recovery after stroke is related to neural plasticity, which involves developing new neuronal interconnections, acquiring new functions, and compensating for impairment.
However, neural plasticity is impaired in the stroke-affected hemisphere.
Therefore, it is important that motor recovery therapies facilitate neural plasticity to compensate for functional loss.
Stroke rehabilitation programs should include meaningful, repetitive, intensive, and task-specific movement training in an enriched environment to promote neural plasticity and motor recovery.
Rehabilitation with Poststroke Motor Recovery:A Review with a Focus on Neural Plasticity Naoyuki Takeuchi and Shin-Ichi Izumi(2013)アブストラクトより引用
主/Motor recovery after stroke 自/is 補/related to neural plasticity, 関代/which involves /developing new neuronal interconnections, /acquiring new functions, / and compensating for impairment.
(翻訳):脳卒中後の運動回復においては神経可塑性が関連し、それ(神経可塑性)とは、つまり新たな神経の相互接続の発展、新たな機能獲得、そして機能障害の代償を含んでいる。
(簡単な説明):まずisを見た時点で主語が前のMotor recovery after strokeであることがわかる。
細かく分けるとafter strokeが前置詞句としてMotor recoveryを修飾する。
その後、補語としてrelated toとなっており、神経可塑性に関連するものと訳せる。
その神経可塑性に関連するものが何かを関係代名詞以下が説明しており、どこまでを指すかは、カンマで続く内容と読み取れる。
なぜなら最後にandがあり、A,B,and Cという流れは英語の文体でよく見られる内容である。
接/However, /主neural plasticity /自/is /補語impaired in the stroke-affected hemisphere./接Therefore, /主it /動is /補important /関that /motor recovery therapies/他動/ facilitate /目的語neural plasticity /不定詞to compensate for functional loss.
(翻訳):しかしながら、神経可塑性は脳卒中に伴う半球損傷において障害を呈する。
それゆれ、運動回復の治療では、失われた機能を代用するための神経可塑性への促通が重要となる(簡単な説明):神経可塑性が主語、isが動詞で、 impairedは受動態ではあるが個々ではin以下を受ける形容詞的用法となる。
~されるという受動態的な意味で捉えないように注意。It~thatは強調構文と呼ばれ、It is~that・・・(・・・なのは~だ)という訳をする。
つまり、Motor recovery therapies(運動回復治療法)がfacilitate~を促通することが重要であると解釈する。
facilitateが他動詞であり、therapiesを他動詞と捉えないように注意。
他動詞は目的語を必要とし、それは神経可塑性でありどのような神経可塑性かということがto以下で説明されている。
/主Stroke rehabilitation programs /助動詞should include /目meaningful, repetitive, intensive, and task-specific movement training/前 in an enriched environment /不定詞to promote neural plasticity and motor recovery.
(翻訳):脳卒中リハビリテーションプログラムでは、神経可塑性と運動回復を促進するための豊富な刺激環境下において、意味のある、反復、集中的、課題特異型訓練を含むべきである。
(簡単な説明):Stroke rehabilitation programsが主語でshouldという助動詞がくる。
その後includeという他動詞がくる。他動詞のあとは目的語、目的語は何かというと、meaningfu, repetitive, intensive, taskとなる。
そのような目的語がin以下の前置詞句の中で実践されることが求められ、to promoteは不定詞としてin an enriched environmentの前置詞句の名詞を~するためのという形容詞的用法で翻訳する。
to不定詞は主語、目的語、補語、形容詞的用法、副詞的用法がある。
いかがでしたか?徐々にちょっと気になる英文も増えていっています。
ただ見てお分かりの通り、医学論文の文法は高校1年レベルで十分読解できます。
ただ、瞬間的に読めるには文法を知識レベルではなく知恵レベルまで高めることが重要で、そのためには音読などのトレーニングが重要になります。
これで「現状把握と目標設定、モチベーション維持のためのポイント」をこれで終了させていただきます。
自身の現状や目標をどのようにするか、時間確保をどうするか、モチベーションを維持するために工夫できる要素は何かないか?など、考える機会になったのではないでしょうか。
【目次】
第一回:リハビリ職(理学・作業療法士のための)英論文読解講座
第四回:英会話 絶対音読標準編
第七回:英語トレーニング法 英語を書く(Writing) ポイント
最終回:実戦へチャレンジ
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