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大胸筋の鍛え方からストレッチまで解剖学・運動学的に正しく解説

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Contents

1.大胸筋はこんな筋肉

2.支配神経や栄養動脈は走行を覚えよう

3.大胸筋の筋トレ

4.大胸筋の臨床的意義

5.大胸筋3種類のストレッチ

大胸筋はこんな筋肉

まずは、起始・停止、支配神経など基本的なことから見ていきましょう。ご存知の方も多いと思いますが、大胸筋は3つに分けられます。まずは、全体的な筋肉の位置を見てみましょう。

起始

鎖骨部:鎖骨内側半分

胸肋部:胸骨前面、第2-6肋軟骨

腹部:腹直筋鞘の前葉

停止

上腕骨大結節稜

支配神経

内・外側神経胸筋神経

髄節

C5ーTh1

作用

全体:肩関節屈曲、水平内転、内旋

鎖骨部、胸肋部:肩関節屈曲

英語

pectoralis major(略:PM/P.major/PMM)

大胸筋 停止

 

3つの筋肉を見る前に、注目いただきたいポイントがあります。それは、“停止部”です。図では分かりに以下もしれませんが、実はネジれて停止しています。この理由は定かではありませんが、やはり四足動物からの進化をうかがわせる構造であろうと思います。

 

進化の歴史を辿ると、私たちのすごーーーく昔の先祖は、四足歩行であるという説があります。そう考えると、この大胸筋停止部のネジれの意味も少し理解できるかと思います。つまり、四足の状態になると、大胸筋の停止部はネジれが解けます。いったいどのようにネジれているのか、見てみましょう。

 

大胸筋 腹部

 

もっとも深層に位置し、大胸筋全体を下から支えている縁の下の力もち。起始は、なかなか面白く、腹直筋鞘(外腹斜筋腱膜)に付着します。どうやら、腹筋との関連がありそうですね。トレーニング方法は、後ほどお伝えします。

 

大胸筋 胸肋部

 

次は、胸肋部です。だんご3兄弟でいう、次男みたいなものですね。この部分は、次男のように、自由気ままで起始部の肋骨は人によって、7,8,9肋骨まで至る場合もあります。また、対側の大胸筋と胸骨を超えて付着する場合もあるようです。

 

大胸筋 鎖骨部

 

最後は、鎖骨部です。この部位は、三角筋前部線維と類似性があり作用も一致する部分が多くあります。では、もう一度3種類の筋の走行を確認しましょう。

 

大胸筋 全体

 

支配神経や栄養動脈は走行を覚えよう

筋の起始・停止を覚える際、支配神経を同時に覚えたと思います。しかし、なかなか覚えられないのが悩みの種。支配神経も筋と同じで、名前よりも先に走行を覚えましょう。以下の画像とにらめっこしていてください。

 

大胸筋の支配神経

 

栄養血管は、オプション程度に覚えておけばいいでしょう。

大胸筋 栄養血管

 

大胸筋の筋トレ

早速トレーニングに取り掛かりましょう。まずは、誰もが行う腕立て伏せ(プッシュアップ)から。

 

プッシュアップ

 

非常に一般的なトレーニングですが、肩関節の外転角度(肘の開き)具合によってトレーニングする筋線維をわけましょう。基本的に、外転45°〜60°ほど開いた場合、鎖骨部のトレーニングになります。胸肋骨部のトレーニングの場合は、90°にしましょう。この状態から、肘の曲げ伸ばしにを意識しがちですが、肩甲骨の動きにも注目しましょう。

 

まず、肘を曲げて行く際、左右の肩甲骨を寄せて(肩甲骨の内転)いきます。肩甲骨を寄せきってから、肘を曲げる運動を意識しましょう。その状態から、肘を伸ばす際は、同様に肩甲骨に意識を持ちます。

 

この、肩甲骨の動きを意識しておかないと、肘や手首に負荷がかかりケガの原因となります。基本的に、この運動は肩甲骨と上腕骨への荷重が行えていることが必須になり、肩甲骨の動きを作らないと、肘や手首に過剰な荷重がかかりケガをします。次は、大胸筋腹部のトレーニングを行いましょう。

 

大胸筋腹部トレーニング

 

先ほどのトレーニングにプラスして、台を用います。上体をやや起こして、同様の動きをすると腹部の線維に対してトレーニングをすることができます。

 

大胸筋の臨床的意義

臨床現場でも、大胸筋の硬さは、歩行障害にも直結することがあります。まずは、下記の図を見てください。

 

大胸筋と歩行

 

大胸筋が固くなると、上腕骨は内旋します。そうなると、体幹は前傾位となり、対側の股関節伸展が行いにくくなります。片マヒ患者においても、マヒ側股関節の伸展が問題となり歩様改善の妨げになるケースがあります。この場合、健側の上肢が内旋位になり肩甲骨が外転していることがあります。

 

この場合、健側上肢を外旋、肩甲骨を内転させ歩行してもらうと、対側下肢の股関節伸展を促すことができるので、評価してみるといいでしょう。

 

大胸筋3種類のストレッチ

まずは、鎖骨部からストレチしていきましょう。

 

大胸筋ストレッチ1

 

肩の外転角度を45〜60°以内に設定し、手のひらを天井に向けてもらいます(肩関節外旋)。この肢位から、肩の水平伸展及び外旋方向に動かすことでストレッチされます。

 

重度の硬さの場合、肩がベッドから浮き上がってくるので、押さえておきましょう。次に、胸肋骨部のストレッチに参りましょう。

 

大胸筋ストレッチ2

 

ストレッチの方法はさほど変わりませんが、肩の外転角度が100°ほどになるように設定しましょう。中には、対側の大胸筋まで付着しているケースがあるので、上記の図の場合、体幹の左回旋をプラスするとさらにストレッチされます。では最後に、腹部です。

 

大胸筋ストレッチ3

 

このストレッチも肩関節の外転角度が違います。この場合は、130°ほどに設定しましょう。この筋線維は、腹部との付着があるので膝を伸ばしておくとさらにストレッチされます。さらに伸ばしたい場合、対側下肢の股関節内転筋のストレッチも併用すると、増強されます。理由は、外腹斜筋は、対側の内転筋につながるためです。

 

ストレッチの増強方法

上記のストレッチに、プラスアルファで行うとよりストレッチ効果が高まります。その前に、ストレッチとなると、伸ばす筋肉のみに目が行きがちですが、それ以外の部位のセッティングも非常に重要です。

 

対側上肢も同じ肢位または手のひらを天井に向けておくこと(肩外旋)は必須です。さらに、頸部は対側を向かせておくと、増強します。

 

いかがでしたでしょうか?筋をトレーニングする場合は、必ず解剖学を予習・復習しましょう!夏はもう始まっています!早めのトレーニングを!

大胸筋の鍛え方からストレッチまで解剖学・運動学的に正しく解説

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