なぜ半分は農をし、半分は療法士をする半農半療法士をしているのか?
半農半Xという生き方をご存知でしょうか。著書にもあるのですが、半分は農をして自立した生活を送り、残りは自分の好きなことをして生活をする生き方のことです。
そういう生活をしようと思ったのは、ある当事者との出会いがきっかけでした。
現状の日本社会では、障害者や高齢者と呼ばれる方々は生きにくさを感じています。その状況で、箱の中でリハビリテーション活動をしていても、どこまで意義があるのだろうかと考えさせられました。地域で生きる当事者たちの声を聴き、地域に根付いたリハビリテーション活動を早急に始めなければならないと焦りを感じました。なぜなら当事者たちが社会の中で役割を担い、地域の人たちと関わりあうにも、まちの優しさが足りないからです。
その優しさは本当に必要か知るため、まちづくりや障害者の歴史、北欧の福祉について学びました。その中で私達人類はどのようなところで集団を創り上げ、共同して生存してきたのかを見つめ直し、それはやはり農が中心だと知りました。その手順に沿って、まちづくりをすることで地域の凝集力は増し、『絆』の強い地域ができると思い活動することを決めました。
実際にその手順通り農を始めてみましたが、地域住民との関わりに驚きました。農をしていると人が集まってきました。そこでのつながりや絆は地域の健康に寄与していることを感じました。そうしてSocial Capital(=絆)は蓄積し気付いたころには他の地域よりも転びにくく、歯の多い高齢者が住む地域になっていると信じております。これは当事者の視点に医療からの視点(SocialCapital研究に基づく)を加えた活動です。
東北の震災から『絆』が大きな注目を集めました。戦後から70年が経ち、いよいよ文明の転換期を迎えましたが、私達の文化を見返すと、この『絆』に着目した動きは非常に重要ではないかと考えています。
私はそういった形のリハビリテーションの追求を常日頃考えています。リハビリテーションを機能回復だけでなく、尊厳再建や役割創造という意味でとらえると、私達療法士は地域に根づく必要性があると強く感じます。
農をしながら、自立した生活(自助互助の関係性の中で)は理に適っています。
現在の仕事
端的にいうと、『まちづくり』です。地域が自立していないと、そのしわ寄せは地域住民に回ってきます。それは逆もしかりで、地域住民が自立していないと地域は自立できません。だから人と地域に関わっています。
まず地域住民との関わりですが、農地・公共施設・教育施設・商店街・飲食店に出向き、様々な方とタイアップしながら、医療・リハビリテーションの話をしています。地域住民のリテラシーの蓄積が急務です。日本の社会保障制度は主にハード面の整備が中心でした。その結果、毎朝クリニックに通う高齢者や夜中でも平気で救急車を呼ぶ国民が多くなってしまいました。福祉の精神は一人ひとりが養わなければなりません。だからこそ、地域住民のいる場所へ出向いています。しかし、そんな難しいことを直接言っても医療従事者しかわかりません。だからこそ、他の業界の人たちと共に、わかりやすく伝える必要性があります。
地域自体との関わりですが、行政機関や公共施設へ出向き、様々な仕組み作りを行っています。今は主に介護予防事業に関する仕組み作りを行っています。介護予防教室は様々な地域で行われていますが、参加率は1%未満です。私達が予防したいのはそこに来る健康意識の高い人、ではなく99%の健康意識の低い人ではないでしょうか?そうしたときに、場を変える必要性があります。現在の取り組んでいる場には来ないのですから、こちらから出向く、でよいと思います。医療機関に所属していれば、いくらでも来ますから、医療従事者にはそういった意識が低い傾向にあります。何をしたいのかを考えたときに、場というのは非常に重要です。
農地で介護予防という取り組みもやっているのですが、なぜ農地なの?とよく言われます。一次産業の就労者のほとんどは高齢者。生活の柱となるこの産業区分にいる人たちが健康でいることは日本人においては最も重要ではないかと思います。
キャリアアップとは? そのために”今”行っていること
まだキャリアはありませんが、意識的にすることはないと思います。直向きに想いをのせた活動は必ず自身のためになります。私は『情けは人の為ならず、巡り巡って己が為』という言葉を大事にしています。