社会的な大きな問題となっている認知症 ー。
今回報告された京都大学の研究によって、小血管性認知症の発症機序の一部が解明された。
本研究グループは、小血管性認知症の患者7名(男性4名、女性3名)と、同年代で認知症ではないコントロール群6名(男女各3名)の脳内を解析し、脳の血管内でBMP4が、通常よりも多く発現していることを発見しました。
また、細胞実験と動物実験を行い、脳に届く血液の量が減少すると、脳血管の細胞からBMP4が多く分泌され、脳の障害および認知機能の低下につながる可能性があることを見出しました。
小血管性認知症は、小さな脳梗塞を繰り返すことにより、その部分の脳細胞が死滅し、認知機能などに障害が起こる。動脈硬化などで慢性的な脳の虚血状態となると、血流量を増加させるため、血管新生に寄与するBMP4(Bone morphogenetic protein 4)と呼ばれる分子が産生される。
また、BMP4は、骨形成を促す分子だが、脳内では、細胞の分化にも働くとされており、アストロサイトとよばれる細胞への分化を促す。このアストロサイトは、脳組織の瘢痕化につながり、認知機能の低下を招いてしまうそうだ。
このBMP4を抑制する薬を脳血流量の低下したマウスに投与すると、この瘢痕化を改善させることが出来たと報告されている。
また、2025年には、65歳以上の認知症高齢者数が約700万人に達すると見込まれている。
研究者らは、将来的に、小血管性認知症や血管障害を合併するアルツハイマー病の治療法開発などへ繋げていきたいと述べている。