理化学研究所(理研)脳科学総合研究センターの利根川進センター長、ディラージ・ロイ大学院生らの共同研究チームは、マウス脳の海馬支脚を経由する神経回路が、記憶の想起に重要な役割を果たすことを発見した。
▶︎http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170818_2/
通常、ある特定の箱の中にマウスを入れた時に、脚に軽い電気ショックを与えると、翌日同じ箱に入れられた際に恐怖体験を想起し、すくむ行動が見られる。
ところが遺伝子改変マウスを箱に入れて同様なプロセスを与え、恐怖体験を想起させている最中に、背側海馬支脚の細胞の働きを光遺伝学で抑制すると、このマウスは怖い記憶を思い出せず、すくまなかった。また、想起中に背側海馬支脚細胞の働きを抑制しても、記憶の形成には問題がなかったそうだ。
このことから、背側海馬支脚の細胞は記憶の想起に重要な役割を果たすことが明らかになった。
さらに詳しい解析により、研究チームは背側CA1領域から直接内側嗅内皮質の第5層に情報を伝える直接経路は記憶の書き込みに、背側海馬支脚を経由して内側嗅内皮質の第5層に情報を伝える間接経路は記憶の想起に、それぞれ重要であることを示している。
私たちは、昔の思い出などを、時間や場所、またはその経験を含むあらゆる感覚を大脳辺縁系にある海馬に書き込み、いつでも想起することができる。
今回の研究により、海馬のどこの領域が関与しているかが明らかになったことは、脳科学研究にとって大きな一歩である。
今後、研究が進むことで、記憶障害の治療法の糸口となること期待する。