高齢化問題は、刑務所にも及んでいる。
60歳以上の割合が2014年時点で18.4%と5人に1人が高齢者の割合だ。 これは、日本国内の高齢化率とほぼ変わらない数値である。
そんな実情を感じる記事を紹介する。
官民共同運営の刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」(あさひ)には、主に60代以上の高齢者を集めた特別の居住区(ユニット)がある。通常の刑務所と違って、リハビリテーションを兼ねた運動の時間や認知症予防にもつながるプリント学習の時間が設けられている。若い受刑者に交じり、木工や野菜加工など通常の刑務作業に就くことが体力的にも厳しいためだ。
高齢者ユニットは約30人で最年長は80代。刑務作業の合間に、作業療法を週4回、
理学療法は週3回受ける。取材に訪れた日は、午後の約2時間、作業療法と理学療法のプログラムを2班に分かれて受けていた。
詳細を読む(引用元):毎日新聞
以前にPOSTでも高齢受刑者の認知症問題 を取り上げた。
今回紹介されている内容も、作業療法士による小学生レベルの計算問題や間違い探しなど認知機能に対するものから、理学療法士による集団体操や平行棒を使用して片脚立位といった運動機能に対するものまで、世間一般のリハビリテーションと何ら変わりない。
その後、畑での農作業や100円均一で販売するヘアピンのケース詰めなどの「刑務作業」を行うという。
畑で収穫したものは、近所の保育園に贈ったりする事があるそうで、作業療法室に園児達からもらったお礼のパネルが飾られているという。
彼らにとって、刑務所内での生活がADLであり、「刑務作業」により社会参加することがQOLの一部と考えるべきなのか。
高齢受刑者には「リピーター」が多いそうだ。
満期となり社会に戻るも、お金も身寄りもなければ、再び刑を犯し刑務所に戻ってくるという。その方が生きていけるからだ。
本当にリハビリテーションが必要な部分は、そこではないだろうか。
法務省があげている「再犯防止に向けた総合対策」 の中では
平成29年までに高齢又は障害を有する者に対し、身体機能や生活能力の維持・強化のためのPDCAサイクルに基づく指導・支援を実施する。
とされている。
刑務所のイメージは、決して良いものではない。しかし、高齢化という時代の流れに、柔軟に対応できる療法士が増えていかなければならないと感じた。