一流医師の共通点
武田先生 米国に渡り、そして日本での経験の中で、私が意識していたことは「一流から学ぶ」ということです。日本国内と米国で、スポーツ医学、靴と足の医学、膝関節培養軟骨移植、ACL再建術、肩関節外科の権威と言われる複数名の教授や医師から手術、外来、さらには付属のリハビリセンターにて最先端のリハビリ・運動療法を学びました。
その中で、私が最も注目していたことは「一流と呼ばれる医師の共通点とは何か」という部分です。手術はもちろん、外来やその医師の私生活からも学びました。
とにかく一流医師の24時間を観察し、患者さんの迎え入れ方から患者さんを触る時間の長さなども観察していました。やはり、一流と呼ばれる医師は問診、理学所見、検査から診察までしっかりとこだわって行なっているという共通した特徴があります。
私のクリニックにいらっしゃる患者さんの中でも、それ以前に通われた整形外科ではまともに問診、理学所見、検査をされていない方、ほとんど触ってもらっていない患者さんに出会うことが度々ありますが、本当に同じ整形外科医としては情けないこと極まりないと感じます。
私のクリニックでは、こだわりのある優秀な理学療法士の先生方が常にいますが、私自身も世界の一流の医師から学んできた通りにしっかりとこだわって運動器のプロフェッショナルの医師として、手で体を触れて理学所見をきちんと取り、動作もしっかり診て診察を行っています。
私自身が専門家としての信頼に足るバックグラウンドがない中では、「トータルに患者を診るべきだ」といくら言っても説得力がありません。ですから、私個人が開業するにあたって、同業の整形外科医から後ろ指を刺されないだけではなく、それなりに一目置かれるレベルまで自分を高めていきたい!ということを意識して、これまで勉強し続けてきました。
今の健康法・予防法、10年後も続けていますか?
ー 今日本の問題として、健康問題が取り上げられる部分が多くなり、予防が盛んに叫ばれています。武田先生が健康予防を文化として根付かせるために必要なことはなんだと考えますか?
武田先生 私の過去を知る友人が、私の今のこの発言を聞くと「武田の口からこんな言葉が出るとは思わなかった」と言われるかもしれませんが、重要なのは“継続性”だと思います。
私自身、私の身の丈にあっていないと思われるほどの、大きな学会で特別企画のシンポジストをご指名・ご招待いただくという大変光栄な機会を与えていただいたことがこれまで何回かありましたが、その中のスライドでお伝えしたことの中に、「メディアなどで今流行の健康法、例えばサプリやダイエット法を見て始めようとした時“10年後もそれをやっているか?”ということを、まずは自問自答しよう!」という、話をしたことがあります。
いくら健康的なことや良い方法であっても、3,4年程度の継続では、その人の一生の健康に対しての影響はほとんどないに等しいのではないでしょうか。
「10年継続できるのか」という問いに対して、尻込みしてしまうものであれば最初からその健康法には手をつけないほうがいいと思います。
その点、ランニングやヨガ、太極拳、ピラティスといったものは、健康文化と言える比較的継続性の高いものなのではないかなと思っています。
原著から学ぶピラティス氏の想い
ー ピラティスは継続性が高いと考える理由を教えてください。
武田先生 ピラティスの本質そのものに答えがあると思います。ピラティス氏が生前に書いた2冊の本「Your Health」と「Return to Life Through Contrology」の内、『ピラティスのバイブル』と言われている後者の原著(原著でない類似の本の翻訳は他にもありますが)を私が監訳したのが「リターン・トゥ・ライフ・スルーコントロロジー〜ピラティスで本来のあなたを取り戻す」(現代書林)ですが、ピラティスにおいてWhole Body Health(身体全体の健康)、Whole Body Commitment( 身体全体の公約) 、Breath(呼吸)の3つが基本理念となっています。
私はピラティスの原著を翻訳する上で、Whole Body Commitmentに関してはどのように訳すべきか、最初はわかりませんでした。
今でこそ、某CMで「Commit(コミット)」という言葉は、広く知れ渡りましたが、Whole Body Commitment :ホールボディコミットメントを直訳すると「全身の宣誓、宣言」となってしまうように、世界三大ボディワーク(ヨガ、太極拳、ピラティス)の一つであるピラティスのバイブルを翻訳するのは当然のことながら精神的にも大きなプレッシャーがかかり大変苦労しました。
しかし、私のメンターとも言えるニューヨーク在住のピラティス・ティーチャー五十嵐祐子さんから「あなたが訳さないで、誰が訳すの」と叱咤激励をいただき、引っ張ってもらった御蔭で何とか翻訳を仕上げることができました。
私自身、本来ドイツ語が母国語であったピラティス氏が米国に移住して外国語であった英語で本を著すにあたり、ピラティス氏自身、言葉にはこだわり慎重に選んだに違いないと思うと、私は通常の翻訳をする時のように、わかりやすくするためだけに「意訳する」ということを極力避け、ピラティス氏が選んだ言葉を尊重して、原文に忠実に翻訳することを心がけたので、私自身、非常に悩みながら翻訳を進めていった訳ですが、その翻訳のプロセスの中で徐々にピラティス氏が何を伝えたいのか、おこがましいかもしれませんが、わかってきました。
実際、私はピラティス氏が何を伝えたいのか、なんとしても理解したいと思い、ピラティス氏が写真でパンツ一枚の裸でピラティスをしている姿を真似し、同じ格好でエクササイズを一つひとつしながら、そのエクササイズの解説の翻訳もしました。(笑)
前置きが長くなりましたが、そういったことを通して、ピラティス氏の伝えるWhole Body Commitment( 身体全体の公約)を私は、「自分自身の心技体の健康を達成する上における自分自身との約束を決定し、宣言し、実際に行動し、その約束をきちんと果たすこと」なのだろうと解釈しました。
つまり、ピラティスの本質に約束をきちんと実際に行動してやり抜くという継続性を意味する「Whole Body Commitment」が込められていることが理由です。
ちなみに、ピラティス氏の原著を読みながらWhole Bodyをただの「身体」と解釈するのではなく「心技体」を含む身体全体(私はこれを「カラダ」とカタカナを使って表現しています)を意味していることがわかりました。
そのほか、身体を意味する単語として、ボディやフィジックスといった単語を用いています。どれも訳せば身体ですが、ピラティス氏が意味をもってこれらの言葉を書き分けたことが原著を通して伝わってきました。
>>武田先生考案、ビヨンド・ピラティス無料体験会Introduction Workshopのお申し込みはこちらから
詳細はこちら
続くー。
【目次】
第二回:一流の医師から学ぶ仕事の流儀
第三回:自分にも患者にもコミットメント
最終回:ピラティスを越えたその先へ
武田淳也先生のプロフィール
<経歴>
平成 5年 福岡大学医学部卒
平成 5年 福岡大学病院 整形外科教室入局
平成 7年 臨床研修修了
平成 7年 福岡市保健福祉局 中央保健所 予防課医師(在職中、国立公衆衛生院長期研修、結核予防研究所長期研修)
平成11年 福岡市保健福祉局 東保健所 予防課予防係長(医長級)
同年 以降 広島県立病院麻酔救命救急治療科、島根医大整形外科、アメリカへスポーツ医学研修留学(7医療機関)、整形外科進藤病院、川嶌整形外科病院、船橋整形外科スポーツ医学センター、アメリカへピラティス・リハビリテーション 認定資格取得コース等、国内外で研修、勤務
平成17年 Polestar Pilates(米国マイアミ本部))にてピラティス・リハビリテーション指導者資格取得、
同年 福岡市にスポーツ・栄養クリニック開業
平成18年 Pilates Lab福岡開業、日本ピラティス研究会設立
平成20年 Pilates Lab代官山開業
平成24年 スポーツ・栄養クリニック薬院 通所リハビリテーションセンター開業
平成25年 スポーツ・栄養クリニック代官山開業
同年 ストレッチ&コンデッィショニングDr.Plus開業
<資格・所属学会・団体など>
- 日本整形外科学会認定専門医/認定スポーツ医/認定運動器リハビリテーション医/認定脊椎脊髄病医/認定リウマチ医
- 日本体育協会公認スポーツドクター
- 日本医師会認定健康スポーツ医/認定産業医
- 日本骨粗鬆症学会認定医
- 日本臨床内科医会認定臨床内科専門医
- 日本糖尿病協会療養指導医
- 認定認知症相談医
- 日本抗加齢医学会認定専門医
- 義肢装具判定
- 介護支援専門員
- 全日本スキー連盟公認指導員/検定員/ドクターパトロール
- 日本ピラティス研究会会長
- Motor Control: ビヨンド・ピラティス®代表、クリエーター
- PMA-CPT(Pilates Method Alliance Certified Pilates Teacher)
- Core Align®認定インストラクター、ファカルティトレーナー(日本に5人のみ)
- Bodhi サスペンション・システム認定インストラクター、ファカルティトレーナー(日本に2人のみ)
- Pfilates®認定インストラクター(ファカルティトレーナー、アジアエリアコーディネーター)
- カラダ取説マスター・シニアエデュケーショナル
- 日本整形外科学会 会員
- 日本臨床整形外科医会 会員
- 日本整形外科スポーツ医学会 会員
- 日本関節鏡・膝・スポーツ医学会 会員
- 日本臨床スポーツ医学会 会員
- 日本運動器科学会 会員
- 日本腰痛学会 会員
- 日本ダンス医学会 会員
- 日本骨粗鬆学会 会員
- 日本抗加齢医学会 評議員
- 運動器抗加齢医学研究会 世話人
- 日本肥満学会 会員
- 日本糖尿病学会 会員
- 日本臨床内科医会 会員
- 全日本スキー連盟 会員
- PMA(Pilates Method Alliance) 会員
- 日本ピラティス研究会 会長
- NPO法人芸術家のくすり箱 プロフェッショナル会員(ダンサー、芸術家のメディカルサポート)
- 日本カラダ取説協会 会長
- 広域医療法人明和会 スポーツ・栄養クリニック理事長
- Pilates Lab(代官山・福岡)代表
- ストレッチ&コンデショニングDr.Plus 顧問
- ToeSox Japan 顧問
- 日本経済大学健康スポーツ経営学科客員教授
著書
12月9日(土)ビヨンド・ピラティス無料体験会の詳細
東京会場:12月9日(土) 15時~18時
場所:Pilates Lab代官山スタジオ
〒150-0021
東京都渋谷区恵比寿西2丁目21−4 代官山パークスビル3F
内容:
・ピラティスの効果、エクイップメント(器具)を使ったピラティス体験
・立位でのMotor Control 改善に最適な、新時代トレッドミル「CoreAlign®」体験
・クライミングロープを使ったサスペンション等ツールの機能的進化版「Bodhi Suspension System®」体験
・臨床応用・予防事業へ展開の提言・ディスカッション
第二回満員につき急遽、第三回(12/9)開催決定!