紹介の連鎖
― いまもスポーツ選手とかが来ていると思うのですが、プロアスリートから信頼を勝ち得るために必要なことっていうのは何だと思いますか?
園部先生 それは、明確な変化を与えることだと思います。まず痛みで来たら痛みを変える取る。あとはスポーツ選手の場合、明確に動作を変えることです。
たとえば、陸上選手が来たら「走りやすい」、野球選手が来たら「軸が取りやすい」「投げやすい」「打ちやすい」、そういうことに尽きると思います。
私の治療院にはたくさんの著者人が来ますが、理由はこの2つができるからだと思います。
― ここを立ち上げて集客は苦労しなかったんですか?
園部先生 もちろん、正直、最初は心配でした。最近のデータをみると、理学療法士が開業すると、1年目でほとんどが潰れるんです。5年やっている人はほとんどいないって言うから、ちょっと心配はありました。
だけど、実際に開業してみて、すぐに心配ないと分かりました。私の治療院は1度も宣伝なんてしたことないし、それに看板すらなかったんです。それでも最初の月からすぐに予約でいっぱいになりました。いまは新規の予約で4ヶ月以上待ってもらっています。紹介の患者とかは少し早めるけど、新規はそんな感じです。
― それは技術とかですか?
園部先生 ここのホームページを見たらわかると思うけれど、体が悪い人がコンディション・ラボのホームページの動画を見たら来たくなっちゃうようなホームページを作れました。とは言え、ホームページを見て来た人って今はまだあまりいないんです。
ホームページを見てくる人は、もっとあとになって増えてくると思います。いまはほとんどが紹介なんです。一番多いのは患者が「友達や家族もみて欲しい」という紹介です。あとはドクターが紹介してくれることも多いです。その他にも、近隣施設の柔道整復師とかトレーナーが紹介してくれます。あとは、チームが選手を送ってきてくれるなど、本当にほとんどが紹介なんです。
― 関東労災病院の頃から積み重ねてきて、いろんな方に信頼して貰ったというところがありますよね。
園部先生 そうかもしれません。でも私の治療院は自由診療なんですよ。だから病院にいるよりも紹介は減るなと思っていたんです。でも結果は、逆でした。つまりはるかに紹介が増えたんです。自由診療で、インソールも作ると病院で作るよりもお金もかかります。それでも紹介がすごく増えたんです。
選手が選手を紹介するのもすごく増えたし、患者が患者を紹介するのもすごく増えました。よくあるのは、おばあちゃんが来ると、うちのおじいちゃんを診て欲しいというのもすごくあります。
病院にいる時よりも紹介が増えたのが何故かっていうと、いまの病院の仕組みって、患者にとってはとても面倒な仕組みになっていると思うんです。病院に行って診察で2時間待って、リハビリ科に来る時は、リハの診察や手続きでかなり待ってと、面倒な過程を踏んで私のところに来ていました。あれを知っている人は、簡単には紹介しないんですよ。
― ここへ来る年齢層は若い方が多いんですか?
園部先生 いや、やはり主体は中高年です。身体が悪い人が多いのは中高年ですから。多くの治療院が中高年の人たちをたくさん通わせて利益を得ようとします。でも私のところでは、それほど頻繁に通わせることはしないんです。
1度目の治療をやって、次来るまでは1ヶ月以上空けます。何回かやって良かったら、半年後か1年後にしちゃうから、患者が通う回数が非常に少ないと思います。
依頼に応えたその先にあるもの
― 間が1ヶ月以上空いちゃうということは、即時的な効果だけじゃダメじゃないですか。
園部先生 医療で流行っている施設は、たくさん通わせているところが多い印象です。それは否定しないけれど、少ない回数で良くするということは、1番誰でも望むことだと思うんです。
歯医者に行くと、まだ通うのかよって思いますもんね。だから少ない回数で良くすることはいいことだと思っていますし、私だって全てを良くできるわけじゃないけど、なるべく少ない回数で良くしてあげたいって思っています。
通う頻度が少なくても、予約がいっぱいということは、来ている患者がすごく多いんです。半年で延べ500名以上来たと思いますよ。少ない回数で、できるだけ多くの患者を良くしてあげたいと、そんな思いが私にはあるんです。でもだからこそ、次から次へと依頼していただけるのではないかと思っています。私は臨床家の本当の力は、依頼されることにあるんだと思ってるんです。
例えば病院で働いていたら、ドクターから「君に見て欲しい」といわれることや、患者が「先生に見て欲しい」と言われること、あとは後輩から「困っている患者がいるから見てもらえないか」と、依頼されるということ、そしてこうした依頼に答えられる臨床家が本当の力をもっている臨床家だと思っています。
有名な理学療法士はたくさんいるけれど、臨床家として依頼されて結果を出しているかということに、若い療法士はちゃんと注目して欲しいんです。私たちがなぜ学ぶのか、その理由は、結局は患者をよくしたくて学ぶわけですよね。だから少なくとも治療のことを学ぶときに、どんなに有名だとしても依頼をされていない理学療法士から学んだって意味があるのか、私は甚だ疑問です。とても有名だけど、依頼がないどころか、臨床すらしていない理学療法士が決して少なくありません。このような理学療法士が治療のセミナーを開催することに私は少々疑問に感じます。
若い理学療法士は、「依頼されている」ことこそが臨床家の力だということを分かって欲しいと思っています。理論が正しいんじゃなくて、その理論を使って患者が良くなる。良くなるからちゃんと依頼を受けている。そこにしか臨床家の力を示すことはないと思うんです。
私のところには、たくさんのドクターから患者を紹介されるし、実際にドクター自身も患者で来たりもします。日本でドクターが自由診療の治療院に患者を紹介するというのはほとんどないと思います。私はそれを誇りに思っているし、嬉しいし、期待に応えたいし、だから、まだまだ成長したいって、想いにもなります。
― いま理学療法士の開業権はグレーですが、若いセラピストが開業することが増えてきて、一部問題になっていますが、開業について先生はどうお考えですか?
園部先生 開業しているから開業についての否定はできません。ただ、いま理学療法士は開業ブームでたくさん開業しているけれど、ほとんどは「病院の給料が上がらないし、いっちょ開業でもして勝負してみるか」という人が多いと思うんです。だから開業している理学療法士の多くは、集客と売上ばかりに焦点が行っているような気がしています。
その考えは決して否定できないけど、患者に技術を提供できないまま開業しても、仮にはじめはうまくいっても最後はうまくいかなくなると思います。自由診療なんだから、整骨院や整形外科のクリニックと比べて保険が使えません。だから、特別な治療技術がないとお金を払ってまでも来ないと思いますよ。
集客技術を中心に考えている人が多いけど、最初はうまくいっても同じ釣り堀でやるようになっちゃうから、最後は上手くいかなくなるんじゃないかなと思います。開業して上手くいくには、技術を磨いてからというのが、私の考えです。
予約がいっぱいになるとゆとりが出るんです。でも、もし1日に半分くらいしか予約が埋まっていなかったら、どうにかして予約を埋めようとしますよね。よくなって患者が来なくなったら困るし、何回も来させようとすると、本当の追求ができなくなると思います。だから集客技術も大事だし、無視できません。でも最終的には、治療技術に尽きることを絶対に忘れないで欲しいんです。
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【目次】
第一回:師入谷誠との出会い
第二回:倒立振り子理論
第三回:運動と医学の出版社を設立
第四回:コンディション・ラボを開業
第五回:家族
園部先生のオススメ書籍
園部先生コメント>>一般書では、松下幸之助の道をひらくっていう本がすごく好きです。あとは斉藤一人、勝間和代、マイケル・ボルダック、デール・カーネギー、ナポレオンヒル、スティーブRコヴィーとか好きです。1番多い年は200冊ぐらい本を読んだんですよ。下記は私のお勧めの書籍集です。ぜひご覧ください。http://pt-sonobe.com/books
園部 俊晴先生プロフィール
・コンディション・ラボ(インソールとからだコンディショニング専門院)所長
・運動と医学の出版社 代表取締役社長
・臨床家のための運動器研究会代表
・身体運動学的アプローチ研究会会長代行
経歴
平成3年4月 関東労災病院リハビリテーション科勤務
平成18年6月 秩父宮スポーツ医科学賞奨励賞
平成22年10月 臨床家のための運動器研究会 代表理事
平成28年1月 身体運動学的アプローチ研究会(入谷式を発展させるための会) 会長代行
平成29年3月 26年間勤務した関東労災病院を退職
平成29年4月 コンディション・ラボ(インソールとからだコンディショニング専門院)を開業する。 同時に㈱運動と医学の出版社 代表取締役 社長に就任。足・膝・股関節など、整形外科領域の下肢障害の治療を専門としている。故、入谷誠の一番弟子。一般からスポーツ選手まで幅広く支持され、、多くの一流アスリートや著名人などの治療も多く手掛ける。身体の運動連鎖や歩行に関する研究および文献多数。著書多数。新聞、雑誌、テレビなどのメディアにも多く取り上げられる。また、運動連鎖を応用した治療概念は、専門家からの評価も高く全国各地で講演活動を行う。