アムステルダムにて
世界の医療を旅する男・山本啓太
前回の山本は、インド・マザーハウスでの体験について報告した
そして今回、オランダに住むTEDスピーカーに会いに行く!
今夜、山本啓太が療法士たちの知らない医療の世界へとお連れします!
※この記事はTBSクレイジージャーニーを少しだけパロディーしてます
MC:今回はなぜオランダへ?
山本:デザイナーのマイルハ・ソネジ氏に会い、TED Talksで話していた2つの作品、アイディアを形にするコツ、プレゼンテーションを上手くやるコツについて聞いてきました。
MC:それではVTRです。
きっかけは英語の勉強中
引用:TED Talks
ディレクター(D):マイルハ氏はどうやって知ったのですか?
山本:英語の勉強をしていたときにTED Talks(TED)をよく利用してまして。ある時、パーキンソン病患者に対するプロダクトデザインについて語る彼女を知り、ぜひ会ってみたいと思ったんです。
D:そこからどうやって会うことに?
山本:Facebookでダイレクトメッセージです。ダメ元で会いに行っていいか聞いたら、快くOKしてくれました。ちなみに今回の旅では、15名ほどの医療従事者にアポを取りましたが、全員快諾してくれました。この記事を読んでくれている人も会いたい人がいるなら、ぜひ連絡してみてください!
TEDで紹介した2つの作品
No spill cup(こぼれないコップ)
〜デザイン会社VanBerloにて〜
山本:早速ですが、 マイルハさんの話を初めて聞く人たちのためにTEDで話されていた2つの作品の紹介と製作した経緯について聞かせてください。
マイルハ:一つ目は、No spill cup(こぼれないコップ)という安静時振戦(安静時に手足が不随意にふるえる症状)に対する作品です。きっかけは、私の叔父がパーキンソン病を発症したことです。もともと社交的な性格でみんなとコーヒーやチャイを飲むのが大好きでした。しかし、安静時振戦の影響で人前で飲むのをやめてしまったのです。それならば手が震えても中の液体がこぼれないコップを作ってみては?と思い、製作したのがNo spill cupです。
もう一つは、Staircase illusion(錯覚の階段)というすくみ足現象に対する作品です。症状の程度にもよりますが、すくみ足現象に悩む人の多くは、平地では足が出にくい一方で、階段ならば問題なく歩くことができます。ならば平面の床に本物の階段に見える絵を描いたらどうかと思ったのです。この効果は、ぜひTEDで確かめてみてください。
山本:すくみ足現象には床に線を引いたり、棒を置くだけでも有効なケースがあるのですが、それらと比較はされましたか?
マイルハ:はい、それらの視覚刺激では効果が出にくくなった時期に試したのですが、明らかにStaircase illusionの方がすくみ足現象が軽減しました。この結果に対する考察は、A painted staircase illusion to alleviate freezing of gait in Parkinson’s disease で報告しています。
シンプルであることの素晴らしさ
Staircase illusion(錯覚の階段)
マイルハ:すくみ足現象に関して、一緒に論文を書いたパーキンソン病の専門医であるBastiaan R. Bloem医師は以前、Google Glassを用いたすくみ足現象に関する研究を行ったのですが、Google Glassを通して視覚刺激を与えてもすくみ足現象は改善しなかったと報告しています。
この結果に関して私は、Google Glassを使用することで歩行中のタスクが増えるため、パーキンソン病患者には適さないのではないかと考えています。その点、Staircase illusionは非常にシンプルです。その有効性を検証するため、今後彼らと研究を行う予定です。
ただ勘違いしてほしくないのは、私がTEDで伝えたかったことは2つの作品の成果ではなく、シンプルであることの素晴らしさです。Google Glassは近い将来、パーキンソン病患者の生活を良くするかもしれません。しかし、非常に高価なため貧しい人たちはとても使用することができません。一方、床に絵を描くというシンプルな行為で彼らの生活を変えられる可能性があるのです。
山本:これら2つの作品を購入することはできますか?
マイルハ:これらは大学時代の課題で製作したので、販売はしていません。しかし、Staircase illusion(錯覚の階段)に関しては要望があれば、データを送らせてもらっています。もし利用したいという方はnospillcup@gmail.comに英語で連絡をください。お金は求めませんが、少額で良いのでどこか信頼できる機関や団体に募金してもらえると嬉しいです。
アイディアを形にするコツ
山本:話は変わりますが、どうすればマイルハさんのようにアイディアを形にできるのでしょうか?
マイルハ:一つは自分の直感に従うことです。私の場合、ペットボトルを見ていた時にNo spill cup(こぼれないコップ)を作ろうと思いました。ペットボトルの上部のような形状ならば、液体は溢れにくいのでは?と考えたのです。
もう一つはトライアル&エラーを繰り返すことです。No spill cupを製作した時は、異なる形状の試作品をたくさん作りました。Staircase illusion(錯覚の階段)の時は、何枚もの普通紙に印刷をして、テープで一枚一枚床に貼り付けて、すぐに叔父に歩いてもらいました。失敗するからこそ問題点がわかり次のステップに進めるのです。
山本:なるほど、自分の直感を信じて、トライアル&エラーですね!
プレゼンのコツ①恋愛ドラマのように
山本:それでは最後にプレゼンについて質問させてください。プレゼンを上手くやるには、ボディランゲージを使う、ジョークを挟む、質問を投げかけるなど様々な手法がありますが、マイルハさんが考えるプレゼンのコツって何ですか?
マイルハ:私が一番重要視しているのは恋愛ドラマのようなプレゼンをすることです。
山本:・・・よくわかりません。どういうことですか?
マイルハ:一回のプレゼンに問題→解決といったストーリーをたくさん入れるのです。ずっとハッピーな恋愛ドラマなんて誰が見ますか?プレゼンも同じです。私のTEDでのプレゼンでは、①安静時振戦→No spill cupで解決、②すくみ足現象→Staircase illusionで解決、③メッセージ→シンプルの重要性と7分間に3つのストーリーを入れています。
プレゼンのコツ②練習はほどほどに
マイルハ:二つめは練習しすぎないことです。
山本:えっ、練習しすぎたらダメなんですか?
マイルハ:練習しすぎると話す内容を暗記してしまいますからね。そうなると聞いている方は退屈です。なので伝えたいポイントは3つから多くても5つに絞る。あとはその場の雰囲気に合わせてフィーリングで話すのです。
プレゼンのコツ③一人で練習するな
マイルハ:最後は一人で練習しないことです。必ず周りにいるプレゼンの得意な友人などに協力してもらい、どんどん指摘してもらって下さい。もし一人で練習するならビデオで撮影しながら行うと良いですよ。「表情が硬いなあ」とか「”えー”が多いなあ」といった自分の癖に気づくことができます。
山本:わかりました。①問題→解決をたくさん入れる、②練習はほどほどにフィーリングで話す、③一人で練習しないの3つですね。これらを取り入れるだけでもかなり良くなる気がします。この記事を読んでくれた人が少しでも上手にプレゼンができるようになると良いですね。
今日はありがとうございました。
山本啓太の世界の医療を巡る旅はこれからも続く!
【目次】
第4回:旧ソ連の影響残る地で生きる障害者たちに会う in キルギス
第6回:マザーハウスでボランティアするも1時間が限界だった話 in インド