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開発途上国の地域医療を学ぶ in エチオピア~KEITAのメディカルジャーニー

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ダナキル砂漠にて

 

世界の医療を旅する男・山本啓太

 

前回の山本は、オランダで活躍するTEDスピーカーへ取材を行った

 

そして今回、開発途上国の地域医療を学ぶためエチオピアへ行く!

 

今夜、山本啓太が療法士たちの知らない医療の世界へとお連れします!

 

※この記事はTBSクレイジージャーニーを少しだけパロディーしてます

 

 

MC:今回エチオピアに行かれたきっかけは?

 

山本:エチオピアの理学療法士ケディール・サニー氏がCBR(地域に根ざしたリハビリテーション)に関する興味深いプロジェクトを実施してるのを知り、話を聞きたいと思って会いに行ったんです。

 

MC:それではVTRです。

 

CBRは障害をもつすべての子どもおよび大人のリハビリテーション、機会均等化および社会統合に向けた地域社会開発における戦略の一つである。CBRは、障害のある人、家族およびコミュニティ並びに適切な保健医療・教育・職業・社会サービスが一致協力することによって実施される(1994年合同政策方針、WHO、ILO、UNESCO)

出典:CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)

 

きっかけはWCPT Congress 2015

 

ディレクター(D):これから会いに行くケディール氏はどうやって知ったのですか?

 

山本:WCPT Congress 2015(以下WCPT 2015)の参加をきっかけに知りました。彼は『エチオピアの地域で働くCBRワーカー、保健スタッフ(以下まとめて地域保健スタッフ)に対して5日間の研修を行った結果、地域の医療状況が改善された』という発表をされており、どんな内容の研修を行ったのか聞いてみたいと思ってメールしたんです。

 

D:話は脱線しますが、アフリカへ行くことに対して抵抗は?

 

山本:正直少し怖かったですよ。けど夜は出歩かないスリに気をつける抗マラリヤ薬を飲むなど基本的な対策をすることで案外大丈夫だと感じています。コーヒーやご飯をご馳走してくれたりとフレンドリーな人が多い国というのが個人的な印象です。

 

エチオピアの地域医療

国内唯一のPT養成校ゴンダール大学にて

 

山本:ケディールさん、こんにちは。早速ですが、エチオピアの地域医療の現状について教えてもらえますか?

 

ケディール:エチオピアの地域医療は日本のような先進国とは大きく異なります。最も顕著な違いが医療へのアクセスです。エチオピアに住む人々のうち17%に当たる約1500万人が障害者で、そのうち300~400万人は子どもだと言われています。そして彼らの多く(特に農村部に住む障害者)は、近くに病院がない、交通手段がない、お金がない、障害への差別があるといった理由で適切な医療が受けられないことを経験しています。

 

山本:アジアやアフリカの農村部でよく見られる状況ですね。

 

ケディール:その状況を改善するために地域保健スタッフ(CBRワーカー、保健スタッフ)が障害者の家を一軒一軒訪れるのですが、彼らは障害の有無を検査したり、受診の必要性を判断したりする能力がありませんでした。つまり、彼らの仕事は障害者の家を訪れて話を聞く、もしくはマッサージをするだけだったのです。その影響もあってか、ここゴンダール北部地区の人口は約300万人であるにも関わらず、リハビリ目的に病院を訪れた子どもの数は年間たったの152人でした。

 

これらの現状を改善し、障害をもつ子どもたちのQOLを向上させることを目的としたのが私たちのプロジェクトで、その途中経過をWCPT 2015で発表したのです。現在もプロジェクトは継続中で、ゴンダール大学、地域の保健省、オランダ人小児科医が共同で実施しています。

 

 

山本:私もベトナムのCBRプログラムに少し関わった経験があるのですが、なかなか成果が出せない状況でした。具体的にはどのようなことを実施されたのですか?

 

ケディール:まずはオランダから小児科医を招き、現地の理学療法士たちに対して5日間の研修を実施しました。その後、その理学療法士たちが地域保健スタッフに対して継続的に研修を行っています。具体的には、子どもの障害を発見するために3つの評価方法(①Pediatric Evaluation of Disability Inventory、②Alberta Infant Motor Scales、③Flash cards)を使えるように教育しました。その結果、リハビリ目的に病院を訪れる子どもの数は年間200人以上増え、受診する子どもの平均年齢は13.6歳から6.5歳に低下しました。

 

地域保健スタッフの給料は?

 

山本:地域保健スタッフを採用する際の条件は?

 

ケディール:エチオピアでは初等教育を受けていない人も多いので、10~12年の教育を受けている人を条件に採用しました。

 

山本:彼らは給料を貰っていますか?ベトナムのタイニン省、マダガスカルのアンチラベ市の地域保健スタッフは皆無給で働いていました。

 

ケディール:彼らは月100ドル程とエチオピアの平均月収の半額ほどの給料を貰っています。その給料はSave the Childrenなどの国際NGOから出ています。この運営資金を外部団体に頼ることに関して、継続性が失われるといった理由から反対意見も多く、「地域保健スタッフは善意を動機に働くべきであり、故に無給であるべきだ」という意見もあります。

 

一方で、世界銀行の総裁ジム・ヨン・キム氏は「AIなどの自動化によって失われる開発途上国での雇用機会を地域保健スタッフを正規雇用することで補いたい」と地域保健スタッフが収入を得ることについて肯定的な意見をTED talksで述べています。

 

引用:TED Talks

 

山本:今後このプロジェクトはどのように進展していくのでしょうか?

 

ケディール:一つはエリアの拡大です。これまではゴンダール北部地区だけで行っていたのですが、南部にも拡大している最中です。もう一つは地域保健スタッフのスキルアップです。彼らの業務は今のところ障害の有無に関するスクリーニングだけで、あとは病院で働く理学療法士たちが対応しています。なので地域保健スタッフ自身である程度介入できるところまで教育していきたいと考えています。

 

山本:CBRには保健だけでなく、教育・生計・社会・エンパワーメントといった領域がありますが、他にはどのような取り組みをされているのでしょうか?

 

ケディール:私たちのプロジェクトは障害をもつ子どもが主な対象なので、彼らに装具を提供したり、教育環境を整えたり、他には教師に対する障害教育や手話の指導も実施しています。また大人に関しては、職業訓練小さなビジネスを始める障害者への出資も行っています。

 

海外との繋がり

 

山本:先ほどインターンで来ているオランダの理学療法士に会いましたが、他の国との繋がりがあるのですか?

 

ケディール:私たちは現在いくつかのプロジェクトを実施しているのですが、中にはオランダやベルギー、カナダの大学と共同で実施しているものもあります。なので、もし何かやりたいプロジェクトがあったら声を掛けてください。ちなみに10年ほど前、青年海外協力隊の日本人理学療法士がこの大学で働いていたことがあるんですよ。

 

山本:今日伺った話は、私が今後開発途上国で働く際の参考にさせてもらいます。ありがとうございました。

 

山本啓太の世界の医療を巡る旅はこれからも続く!

 

【目次】

第1回:中国の伝統武術・太極拳を体験する in 台湾

第2回:宗教系の高齢者施設で驚きの風習を知る in 台湾

第3回:神秘の国の変貌する医療に迫る in キルギス

第4回:旧ソ連の影響残る地で生きる障害者たちに会う in キルギス

第5回:国際協力って何すりゃいいの? in ベトナム

第6回:マザーハウスで働くも1時間が限界だった話 in インド

第7回:TEDスピーカーに色々聞いてみた in オランダ

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