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疲労骨折とシンスプリントの鑑別

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スネの痛みはランナーなどあらゆる陸上で行う競技のアスリートを悩ませます。無理してプレーすべきか、または早めに休むべきか悩むことも多いはず。医療機関を受診してもなかなか治らないことも多いのでは?

アスリートをサポートする上で、病態の鑑別はとても重要です。

 

■ 疲労骨折とシンスプリントの鑑別

 

スポーツ現場でMRIなどの画像が得られないとき、下腿の痛みに対して圧痛の分布を調べます。脛骨内側縁上で、遠位1/3を中心に上下に圧痛領域が広がる場合は骨膜性のシンスプリント、遠位1/3で内側縁から水平面上に広がる痛みは疲労骨折またはその前段階と推測して評価を進めます。

 

疲労骨折とシンスプリントのメカニズムを識別する方法として脛骨回旋テストがあります。疲労骨折では、骨近位部を外旋、遠位部を内旋させたときに圧痛部位に一致して疼痛が惹起されます。これに対してシンスプリントでは脛骨回旋テストは陰性で、下腿前傾を伴うスクワットやカーフレイズなどヒラメ筋の緊張を高めると痛みが出現します。

 

■ 脛骨への回旋ストレスのメカニズム

スポーツ現場で仕事をする上で、下腿遠位1/3の慢性的な痛みが骨膜炎なのか疲労骨折またはその前段階かを見極める必要性に迫られます。上記の通り、触診により横断的な圧痛分布(オレンジ色)と骨の肥厚があれば疲労骨折に進行するリスクの高い状態と考えられます。

 

マルアライメントから考えると、脛骨遠位部の内旋を招くのは距骨下関節回内ですが、それを引き起こすのは距腿関節の背屈制限と距骨外旋アライメントです。この足部・足関節アライメントにより、立脚中期に下腿遠位部が内旋方向に誘導されます。

 

一方、脛骨近位部の外旋は、膝関節における下腿外旋拘縮から引き起こされます。下腿外旋拘縮はスクリューホーム運動と区別しにくいのですが、膝完全伸展に到達する前に腓骨頭の前方への移動が終了する場合に、拘縮と判断しています。他動伸展において、膝伸展中に腓骨の前方移動(すなわち膝関節外側の伸展)が止まり、内側のみが伸展する状態が観察されます。これは腓骨頭後部の組織の滑走不全が原因で起こることが多く、組織間リリースにより改善可能なマルアライメントと言えます。

 

以上の二つが組み合わさると、立脚中期に脛骨に回旋ストレスが反復して加わることになり、疲労骨折に至ると考えられます。このようなメカニズムは安静によって改善するはずもなく、疲労骨折の治癒が進んで仮骨が形成されていても再発リスクが高い状態は変わっていません。メカニズムを解消するための膝関節と足部・足関節のリアラインが必要です。

 

■ 脛骨内側縁の上下に広がる圧痛

次に、下腿の圧痛が横断的ではなく上下に広がるタイプは骨膜炎と考えられます。下腿遠位1/2から1/3にかけて脛骨内側縁にそって圧痛(青)があり、過去8年間ほどの病歴があるアスリートの話です。すねの痛みなく練習できた記憶がないほど慢性化した状態でした。過去の検査で疲労骨折を指摘されたことはなく、典型的な骨膜炎の症状でした。

 

治療の方針は、脛骨内側縁の骨膜に対するあらゆる方向からの力の伝達を軽減することとしました。骨を介した応力集中ではなく、軟部組織を介した力伝達であることがポイントです。

 

①ヒラメ筋内側縁と脛骨内側縁との間のリリース

②ヒラメ筋と長趾屈筋との間のリリース

③長指屈筋と脛骨内側縁との間のリリース

④前脛骨筋と脛骨前縁との間のリリース

 

⑤脛骨骨膜上の皮下組織(superficial fascia)のリリース

 

以上により、足関節背屈に伴う患部への力伝達が大幅に小さくなると考えられます。その後さらに背屈可動域を広げるための足関節の拘縮治療、背屈を誘導するためのリアライン・ソックス、足部回内を防ぐためのリアライン・インソールなどで足部・足関節のキネマティクスを改善した状態を保つようにします。

 

■ 筆者・セミナーご紹介

筆者:蒲田和芳

・広島国際大学総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 教授

・株式会社GLAB(ジーラボ) 代表取締役

・一般社団法人日本健康予防医学会 副理事長

・株式会社リベラシオン 代表取締役

 

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疲労骨折とシンスプリントの鑑別

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