Spine Dynamics療法と臨床推論(クリニカルリーズニング)【理学療法士|脇元幸一先生】

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臨床推論からみる慢性疼痛疾患


脇元先生 臨床推論(Clinical Reasoning: CR)とは、臨床現場で様々な決定・判断を行なうために、事象に対して仮説と検証を繰り返し、最善と思われる行動を選択する際の思考過程を指します。

 

ここにSpine Dynamics療法の視点を加えるならば、障害形成に至った患者さんの心身プロセスを問診と機能評価から導き出すことになります。



前回お伝えしたとおり、慢性疼痛疾患の背景には「患者さんの生き方」があり、心のプロセス→社会的プロセス→体の力学的プロセス→障害像形成という臨床推論が成り立ちます。

 

つまり、疾患は偶然に天から降ってくるものではなく、患者さんの生き方から『なるべくしてなったもの』であるということです。すべての疾患は自己責任により起きていると言っても過言ではありません。



具体的な患者さんの生き方とは、患者さんの意思により決定・習慣化された情動(怒り、恐怖、不安、社会的感情、思考、認知など)・行動を差します。

 

つまり、患者さんの1日の習慣的情動・行動パターン(どのような意思で習慣的情動・行動を得たか)が原因となり、体の一部に反射を通じて機能的問題が生じ、そこからの力学的運動連鎖の破綻によって体幹・四肢末梢の障害ができてしまうということです。



例えば、イライラしながら1日を過ごしてしまうと、呼吸運動を支配している交感神経機能の興奮により呼吸筋の筋緊張が亢進し、胸郭(呼吸ユニット)の機能障害を生じます。それが原因となり力学的なプロセスを経て、四肢の疼痛性疾患を形成してしまいます。



また、脳の疲労も当然ながら交感神経活動異常に繋がり、様々な機能障害像を形成することは容易に想像できるでしょう。



脇元先生 君(インタビュアー)の姿勢を診ていると内臓性の反射がでていて、消化器の情報が集まっている下位胸髄セグメントが情報過多になっているね。

 

おそらくそのあたりの筋肉は硬くなっているはずだよ。ほら、その部分を叩くと胃周囲の腹膜に痛みを感じると思うよ。




(背中の下位胸椎の背筋をトントンと打診すると、痛みを感じる)



脇元先生 これが原因で、脳から骨盤の前傾運動制御が過剰になり、関連する太腿裏のハムストリングスが硬くなる。だから君のハムストリングスには強い圧痛が生じているよ。




(学生のハムストリングスを触ると、その圧痛で体がのけぞった…!)



脇元先生 ハムストリングスは骨盤を制御する他に、膝の包内運動(関節適合性)をコントロールしていて、ハムストリングスが硬くなると包内運動が上手くいかなくなる。

 

関節に非生理的ストレスがかかるから、この非生理的ストレスに耐えうるように、関節の扁平化(変形)が始まる。だから適合性の悪い関節に痛みや可動域制限、拘縮が発生するようになる。

 

この推論を確かめるために、君の硬くなっている背筋を柔らかくする簡単な体操で解決してみよう。




(椅子に座った学生に、なにやら2,3の体操をさせた…)



脇元先生 ほら、背筋が柔らかくなって、ハムストリングスの圧痛はほとんどなくなったでしょう。


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これで、さっきの推論は正しかったことがわかります。このことから分かるのは、患部は体に悪さをする加害者ではなく、実は“被害者”なのです。つまり痛みの原因はそれ以外の部位、つまり全身にある。全身の問題が身体一部(患部)の障害を形成しているということです。』




以上の学生インタビュアーでのデモンストレーション後、脇元先生は以下の言葉を残した。



一般的な患部治療は、①痛みを感じる部位に物理療法(温熱や電気療法)②関節可動域制限に可動域トレーニング③筋力低下に筋力トレーニングを行うことが現在の主流となっていますが、今一度根本原因を考えた治療選択をして欲しい。



つまり、①痛みはどのような理由でどのように形成されたか②なぜ関節可動域制限が生じたのか③なぜ筋出力が低下しているのか。この答えを正しく推論してほしい。

 

そうすれば、①物理療法を行う部位は患部だけでなく、②可動域制限を生じるに至った機能的因子を治療する。つまり、③筋出力抑制が起こっている全身の力学的環境が治療対象、といったように推論の幅が広がり、これまでと治療部位、治療選択が変わっていくと思います。

 

 

病気になった生き方から病気にならない生き方へ

慢性疼痛は、一時的に症状が改善しても、また患部の痛みを繰り返すことが多くあります。その原因は、患者さんの生き方(習慣性情動・行動パターン)にあってイライラや寝不足などが体に影響を与えています。

 

 

だから、患者さん自身の情動・行動パターンが変わらない限り、また同じ症状を繰り返すのです。

 


だから「病気になった生き方」から「病気にならない生き方」というものを、患者さん自身に気付いて頂くことが大切です。そして、患者さんに『病気にならない生き方』を獲得してもらう行動変容こそがリハビリテーションにおいて重要な課題となります。



最終回:スポーツ現場で必要とされる”勝たせる”理学療法士

 

 

脇元幸一先生の経歴

【主な経歴】

西日本リハビリテーション学院卒業

1987年:東京慈恵医科大学病院

1989年:船橋整形外科病院 理学診療部 部長

2006年:清泉クリニック整形外科 設立(現在 医療法人 SEISEN 専務理事)

東海大学 医学部基礎医学系分子生命科学 研究員

国立電機通信大学産学官プロジェクト人間工学共同研究員

信州大学医学部大学院医学研究科共同研究員

【著書】

スポーツ選手のための心身調律プログラム」(大修館書店)

アスレチックリハビリテーションガイド」(文光堂)

 

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