NICT脳情報通信融合研究センター、鹿屋体育大学、フランス国立科学研究センターは共同で、他者の動作が、自分が予測していた動作と異なる場合に生じる“予測誤差”が、自分自身の動作を無意識のうちに修正していることを明らかにした。
▶︎ 「他者をどうみるか」が鍵! ~他人の動作を予測した時の“誤差”が自分の動作を変える~
大学野球部員30名を対象に、中心ではなく右上方向ばかりに投げるピッチャーの映像を観察するよう指示。観察前に「ピッチャーは中心を狙っている」と伝えた群(予測誤差のある群)と、「ピッチャーは様々な場所を狙っている」と伝えた群(予測誤差のない群)を作り、映像観察後の対象者の投球を比較した。
その結果、予測誤差のない群が投球した場合、これまでの研究結果と同様に、ボールは無意識に運動伝染の影響で右上方向にずれて行った。しかし、予測誤差のある群が投球した場合は、映像と真逆の方向にボールがずれて行った。
この実験結果から運動伝染は、他者の動作を真似るだけではなく、予測した動作と異なっていた場合、自身の動作もその誤差を修正するような動作になることが明らかとなった。この予測誤差を利用すれば、無意識に望ましい動作を習得させる事ができ、効率的な運動トレーニングやリハビリ方法への応用が可能になるという。
研究成果は、神経科学の国際科学誌「eLife」のオンライン版に5月29日に掲載された。