問題
74歳の男性。脳梗塞で入院中である。1か月前、四肢麻痺にて緊急入院し、脳幹梗塞と診断された。入院中に肺炎を発症し、抗菌薬にて治療後に回復期リハビリテーション病棟に転倒した。転倒時、意識は清明。不全四肢麻痺のため車椅子への移乗と食事に介助を要する。体温36.4℃。血液所見:赤血球421万、Hb 13.4g/dL、Ht 42%、白血球6,400、血小板21万。胸部エックス線写真に異常を認めない。転倒前に実施した喀痰培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌〈MRSA〉陽性が判明した。リハビリテーションは訓練室で実施している。この患者への対応で誤っているのはどれか。
a 院内で情報を共有する。
b リハビリテーションは継続する。
c バンコマイシン点滴静注を開始する。
d 食事介助の際にマスクとガウンを着用する。
e 使用したティッシュペーパーは感染性廃棄物とする。
↓
↓
↓
正解
c
MRSA感染が拡大しないように、感染症対策チームを交えて情報交換し、適切な対応を取るのが望ましいですね。正解のCに関しては、療法士の方はあまり馴染みのない知識だと思いますが消去法で解けた方もいるのではないでしょうか。MRSAでも、個室にて対応し介入の最後に入るなどの、感染拡大を予防するような方策を立てることができますね。また、MRSAは接触感染しますので、食事介助の時はもちろん、通常時からスタンダードプレコーションに留意すべきです。MRSAの方の使用したティッシュペーパーは感染性廃棄物となりますので、捨てる場所を間違えないようにしましょう。
問題
右中殿筋不全患者の歩行時にみられるのはどれか。
a 体幹を前に傾ける。
b 右下肢を分回しする。
c 右大腿部遠位に手を当てる。
d 左右の下肢を側方に広げる。
e 右立脚時に骨盤を左側に傾ける。
↓
↓
↓
正解
e
この手の問題は理学療法士の方の得意分野なのではないでしょうか。aはおそらく腰痛の方、bのぶん回し歩行は片麻痺、cは膝折れを防ぐため(おそらく)、dははさみ歩行で対麻痺ですね。ということで正解はeでTrendelenburg徴候となります。
問題
肩関節周囲炎のため右肩に疼痛と運動制限とがある患者にTシャツの着衣指導を行う場合、シャツに通す順番で適切なのはどれか。
a 左上肢→右上肢→頭
b 左上肢→頭→右上肢
c 右上肢→左上肢→頭
d 右上肢→頭→左上肢
e 頭→右上肢→左上肢
↓
↓
↓
正解
d
続いては、着衣動作に関わる問題。痛みと可動域制限があるため、衣服を着るときは患側から、つまり右上肢から入れて、順に通していくdがベストでしょう。ちなみに、逆に脱衣の時は、左上肢→頭→右上肢の順が望ましいでしょう。
問題
24歳の男性。左片麻痺を主訴に来院した。10日前から全身倦怠感と微熱とを自覚していた。今朝9時に突然左手足が動きにくくなったため受診した。胸痛はなかった。22歳時に僧帽弁置換術を受けている。意識は清明。身長181cm、体重68kg。体温38.1℃。脈拍96/分、整。血圧152/92mmHg。顔面を含む左半身に不全麻痺を認める。胸骨左縁第3肋間を最強点とする拡張期雑音を聴取する。脊柱側弯と漏斗胸とを認める。血液生化学所見:AST 36U/L、ALT 40U/L、LD 182U/L(基準176〜353)、CK 68U/L(基準30〜140)。CRP 6.5mg/dL。
左片麻痺の原因として最も考えられるのはどれか。
a 脳塞栓症
b 脊髄梗塞
c 硬膜外血腫
d くも膜下出血
e アテローム血栓性脳梗塞
↓
↓
↓
正解
a
発症要因を解う問題。2年前に弁置換術を受けていることや、10日前からの倦怠感と発熱、さらに来院時CRP上昇を認めていることから人工弁関連の感染性心内膜炎が考えられます。拡張期雑音を認めることも疣贅の存在が示唆され、左片麻痺は疣贅による脳塞栓が疑われます。bの脊髄梗塞であれば顔面麻痺は生じませんし、cの硬膜外血腫であれば外傷歴があるはずです。dのくも膜下出血は突然の頭痛により来院するケースが多いとされています。eのアテローム血栓性脳梗塞確の可能性はありますが、aよりは「最も考えられる」ものではありませんね。
問題
65歳の男性。筋力低下を主訴に来院した。1年前から上肢の筋がやせて筋力が低下してきた。5か月前から歩行に際して疲労が目立つようになり、階段を上るのが困難となった。2か月前から言語が不明瞭になった。意識は清明。身長170cm、体重53kg。呼吸数26/分、整。舌の萎縮を認める。四肢に筋萎縮と中等度の筋力低下とを認める。上下肢ともに深部腱反射は亢進し、Babinski徴候は両側で陽性。感覚は正常。排尿障害はない。この疾患で病変がみられるのはどれか。2つ選べ。
a 中脳黒質
b 舌下神経核
c 脊髄前角
d 脊髄側角
e 脊髄神経節
↓
↓
↓
正解
b,c
最後の問題は難易度Aクラスと言えるでしょう。答えられた方はかなり精通している方なのではないでしょうか。 筋力低下、球麻痺があり、筋萎縮があることから下位運動ニューロン障害が考えられます。同時に錐体路障害があり、上位運動ニューロン障害も示唆され、感覚・自律神経は問題がない。となると筋萎縮性側索硬化症ではないかと考えられます。よって、正解は、球麻痺症状から延髄に存在する舌下神経核の障害、下位運動ニューロン症状より、脊髄前角が障害となります。