脱・とりあえずストレッチ
臨床の場面では関節可動域制限に遭遇することは多くあります.特に高齢者では加齢に伴い複数の関節に制限が生じていることが多いです. (図1).
そのような症例に対して最も多く実施される治療技術はストレッチであると思います.では,ストレッチの臨床効果はどうなのでしょうか?本書では運動器疾患における関節可動域制限に対するストレッチの効果についてのメタアナリスを用いて,こう記載しています.
現状では関節可動域制限に対するストレッチングの臨床効果に関しては否定的な見解が多いように思われる.ただ,それぞれの報告で対象者の基礎疾患やストレッチングの方法などが異なっているのは事実であり,これらのことが少なからずバイアスとなり,臨床効果に影響している可能性がある.
出典:関節可動域制限 (第2版)
このように,ストレッチのみでは改善困難な関節可動域制限もあります.「関節可動域制限=ストレッチ」ではなく,適切な病態把握のための評価が必要になります.
本書の構成
題名をみて一目瞭然だと思いますが,一冊を通して関節可動域制限について述べられています.第1章では,関節可動域制限とはなにか?など基礎的な項目から始まります.第2章では,①筋骨格や靭帯など関節可動域制限を引き起こす組織の構造や伸張性について,②それらが不動となったときの変化を中心に構成されています.拘縮の病態や発生メカニズムを理解する上では必要な知識となっているため,この章は情報量が多くなっています.そして第3章には,具体的な関節可動域制限に対する治療の考え方が述べられています.
読んでみての感想
臨床データや動物実験データに基づき本書は関節可動域制限の病態に迫っています.しかし,研究をデータ中心とした構成のため,理解しにくい部分もありました.本書の第1版の序で書かれていますが,今回の副題の1つである病態の理解は各組織の正常整理と比較しながらであれば理解しやすいです.今後,拘縮や関節可動域制限の改善が「なんとなく」から「メカニズムが説明できる」に変化する1冊となっています.
最後に
書評を読んでいただきありがとうございました.今回の書評の感想やご意見・リクエストがございましたらTwitter (@nM4E56Ueb5ajbe4)にお寄せください.