脳梗塞リハビリセンター非常識への挑戦-非常識が常識へ-

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誤解だらけの脳卒中リハビリテーションの献本をいただきましたので、こちらで書評させていただきます。

々がいる医療という分野において、まことしやかにささやかれている“常識”。その裏付けは、一枚一枚A4用紙を地道に積み重ねつくられた研究からうまれています。

 

また、一方では経験的な側面から“常識”がつくられ、古(いにしえ)からの言いつたえのごとく、今にまで継承される“常識”まで、幅広い“常識が”我々の業界にはあります。

 

そんな“常識”によって、退路を断たれる患者さんがいるということを本書(誤解だらけの脳卒中リハビリテーション)は教えてくれています。

 

と、非常にそれっぽい書きだしからスタートしました、今回の書評ですが毎度おなじみ、POST編集長イマイがお伝えいたします。

 

まず、みなさんは自費リハビリ事業を行なっている「脳梗塞リハビリセンター」をご存知でしょうか?

 

我々のような専門職であれば、一度は見聞きしたと思いますが、突然業界を席巻したこの施設の会長が執筆された本作。単純に、自社の事業を説明する書籍かと思いきや、我々療法士のプライドを取り戻す書籍となっていました。

 

具体的な内容説明はこの後おこないますが、ズバリ感想からのべますと「我々、療法士が日本の医療を幅広く救う」という自信をもたせてくれる書籍です。

 

個人的には、文中たびたび出現する「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士」の文字。我々専門家は、つい略語であるPT,OT,STを使用しがちですが、この書籍ではほとんど略語は使われていません。

 

この辺り、著者である早見会長の、我々専門家に対する敬意を非常に感じることができます。それでは、具体的な内容の説明をしていきましょう。

 

いきなり熱い

 本書は、全200ページにもなる書籍なのですが、その1/4つまり50ページにかけて、この書籍を書いた意義を説明しています。本書の構成はおもに、「脳卒中リハビリテーションにおける10の誤解」を解説し、その誤解を正すよう様々なデータから分析され解を出されています。

 

実は、この誤解が、日本における脳卒中リハビリテーションのさまたげとなっていること、強いては患者さんの障害になっていることを強く訴えられています。

 

一つだけ例に出しますと、本書の帯にも書かれています「もうこれ以上改善しない」という点について、脳梗塞リハビリセンターに通われているお客さんの実体験やデータから、それを否定しています。

 

我々リハビリの専門家でも、どこか「もうこれ以上改善しない」という感情は頭の片隅にあったのではないでしょうか?

 

お客さん、患者さん、利用者さんの誤解もさることながら、我々専門家自身の誤解も正さなくてはなりません。

 

実際に、本書に書かれている10の誤解はどれも、我々専門家が読んでも“誤解していた”と感じるものも多く、対象者の誤解を解除するとともに、我々専門家の誤解も解除しなければならないと感じました。

 

いきなり目がさめるような誤解

 もう少し、本書の10の誤解を取り上げてみようと思います。まず一つ目の誤解から、いきなり目がさめるような文言が書かれています。それは、「リハビリはどこで受けても、基本的には同じものだ」と、ある意味でドキッとするタイトル。

 

実際の内容は、本書を手に取って読んでもらいたいのですが、専門家がみてドキッとした、部分の話ではなく、各期(急性期、回復期など)で受けるリハビリの目的の違いを解説しています。

 

ドキッとした理由はいうまでもなく、専門家であれば、個人個人の質による違いを解説されるのかと思ったことでしょう。でも、それに対する解も実は本書に書かれています。

 

この部分については、私がここで書いてしまうと偏った見解になりかねませんので、具体的な見解は本書を手にとり、読んだ専門家にゆだねたいと思います。

 

本書には、これ以外にも専門家がドキッっとしてしまう文章が、いたるところに散りばめられています。ただ、そのドキッの種類は様々です。「ヤバっ」というドキッもあれば、「そんなに褒められては照れる」というドキッまで様々です。

 

私個人としては、P70〜書かれているこの文言「脳卒中リハビリの専門家は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士」という部分です。

 

ある意味、当たり前なのですが、昨今我々のなかでこのような自信が、薄れてしまっているのではないかと思っています。本書では、この部分をとくに強調して書かれており、専門家にとっては叱咤激励のような書籍となっています。

 

この書籍を読んで、もう一度リハビリテーションを遂行するための専門家、プロフェッショナルは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士なのだということを心に刻んでほしいと思います。

 

著者の覚悟が半端じゃない

 本書では、著者の早見会長が経験されたご自身の入院経験から、日本におけるリハビリテーションの価値をもう一度見なおそう、という覚悟をいたる所で感じます。その中でも、P75~書かれている部分には、並々ならぬ覚悟を感じてなりません。

 

日本において、自費分野でリハビリテーションを行うということは、ある意味でタブーへのチャレンジだったことと思います。理由は、我々療法士には開業権がない点です。

 

それに対し、早見会長は行政側への度重なる確認や自身の下調べによって、法令遵守しています。この部分について、実際にお会いしたさいに、お話を伺いましたが、最初の逆風たるや、私の想像をはるかに超えています。

 

そんな苦労の中でも、忖度しない姿勢は、自分自身の襟をただす思いとなりました。具体的な内容はさけますが、脳卒中リハビリテーションにおける“6ヶ月の壁”について言及している点です。

 

もちろん、これは確証なものがあるわけではありませんが、“ある意味で日本の黒い部分に、光を当てた内容で、その潔さは爽快”です。P80に書かれている療法士が行うマッサージ問題に関しても、非常に爽快な回答をされているので、ぜひご注目いただきたいポイントです。

 

まとめ

 本書をいただき、1時間ほどで読破してしまうほど、“前傾”してしまう本書ですが、上記の内容では書ききれないほどの良書です。ただ、私の話が長すぎても、みなさんが飽きてしまうかと思いますので、この辺りで締めたいと思います。

 

本書は、上記以外にも「我々、療法士が日本の医療を幅広く救う」という点を非常に強調されて書かれていると、私自身感じました。それと同時に、著者の事業に対する覚悟にも触れることができた気がします。

 

本書には、この他自費リハにおける料金の部分に関しても解説されており、自費リハの実際を包み隠さず書かれています。

 

自費リハ分野に興味がある人はもちろん、この分野に対して“誤解”をもたれている方に、とくに読んでいただきたい書籍となっています。この書評が皆さんの“誤解”を正す、一筆になることを期待して締めさせていただきます。

 

最後に、ご献本いただきました早見会長はじめ、脳梗塞リハビリセンターで日々研磨されているスタッフの皆様へ、御礼申し上げます。

 

 

 

著者紹介

早見泰弘(はやみ やすひろ)

株式会社ワイズ代表取締役兼CEO

1972年東京都千代田区生まれ。

法政大学経済学部卒業。

1995年にWebマーケティング会社である株式会社イニットを設立。業界有数の会社に成長させ、目覚ましい進歩を続けるITサービス事業界の第一人者としてインターネット事業に携わる。

2013年、長期間入院した際にリハビリの重要性を身をもって実感したことがきっかけで、ヘルスケア事業で起業することを決意し、2014年2月に株式会社ワイズを設立。

リハビリで悩む多くの人々にも改善する希望をもってほしいという思いで、機能訓練型リハビリデイサービス「アルクル」、脳梗塞特化型自費リハビリ施設「脳梗塞リハビリセンター」などの事業を展開。

従来のリハビリにとらわれない、新しいサービスを生み出し続けている。

 

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