胸郭屈曲拘縮と機能性腰痛

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「胸郭屈曲拘縮」というのはあまり馴染みのない言葉ですし、運動学的に定義されたものではありません。しかし、胸椎の伸展制限に対して、時には正常な直立位に対して十分な胸郭前面の伸展が得られない状態を指す言葉として、どうしても使わざるを得ない場合があります。

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■ 胸郭屈曲拘縮とは

 

胸郭屈曲位は円背姿勢のように胸椎後弯が増強した姿勢によって生じます。このとき、胸骨と上位胸郭は下制し、中位・下位胸郭は内蔵によって下制が止められて相対的に前方にめくれ上がった状態となります。これはpectus excavatum やrib flareとも呼ばれます。

 

円背姿勢において獲得されたこの胸郭の形状は、胸郭の前面における「屈曲位」とみなすことができます。そのような状態で直立位(もしくは背臥位)になると、第10肋骨のあたりが腹壁の前面に突出し、背臥位では胸骨よりも前方に突出した肋骨として体表からでも容易に観察されます。

 

この状態は、胸郭の屈曲拘縮が解消されないまま、背臥位となって胸椎が伸展している状態とみなすことができます。つまり、胸椎と胸郭前面で一致したポジションとなっていないものとみなすことができます。このことは、下の図の胸郭可動性低下そのものであり、腰痛発症の一つの原因として理解することが必要となります。

 

 

■ 胸郭屈曲拘縮の影響

 

胸郭屈曲拘縮があると、胸郭前面の伸展可動性の低下によって胸椎の伸展も制限されます。そして、代償として腰椎へのストレスを増すことになります。すなわち、胸郭の可動性の底により、背臥位でにおいて腰が沿ってしまう(腰椎前弯が増強する)感覚が生じます。このとき、腰背部の背筋群は緊張し、背臥位の持続が困難となります。

 

 

■ 胸郭屈曲拘縮の治療

 

このような胸郭前面の屈曲拘縮に対して、前面の肋間開大が必要となりますが、エクササイズで肋間筋、前鋸筋、外腹斜筋、そして皮下組織などが作る拘縮状態を解消することはほぼ不可能です。他の部位と同様に、癒着をエクササイズで解消させることは不可能であるためです。

 

リアライン・コア<胸郭ユニット>は、中位・下位胸郭を後方に押し込む力を胸郭に加えつつ、深呼吸の吸気、上肢の挙上、後屈動作などによって上位胸郭の挙上を促すことができます。つまり、中位・下位胸郭を伸展方向(立位では前傾方向)に保持しつつ、上位胸郭を挙上することになるため、相対的に胸郭前面は伸展運動を行うことを可能とします。

 

その結果、胸郭前面は伸長され、肋間を開大することができます。これは直立位における胸郭前面の屈曲拘縮の改善を意味するものであり、背臥位や直立位での胸椎伸展を阻害しない胸郭になっていくことを意味します。

 

しかし、それでもなお癒着は解消されません。したがって、腹筋群間や肋間の組織間の癒着に対しては、組織間リリースを用いる必要があります。

 

■ 筆者・セミナーご紹介

筆者:蒲田和芳

・広島国際大学総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 教授

・株式会社GLAB(ジーラボ) 代表取締役

・一般社団法人日本健康予防医学会 副理事長

・株式会社リベラシオン 代表取締役

 

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