産後に自転車に乗ると骨盤底筋が押されて痛い!

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産後8ヶ月になっても、自転車に乗ると骨盤底筋の圧迫による痛みが気になるという相談を受けました。左右両側に筋の凝りのような症状があるとのことでした。

アライメントとしては仙骨右傾斜・尾骨左偏位が認められ、その原因因子として仙結節靭帯・大殿筋、梨状筋・坐骨神経の癒着が認められました。さらに、陰部神経を内閉鎖筋からリリースすると骨盤底筋の主訴に近い症状が再現され、梨状筋を坐骨神経からリリースしようとすると足底にしびれが誘発されました。

 

マルアライメントの治療として、腹臥位で左仙結節靭帯、左梨状筋のリリースを行うとともに、寛骨下方回旋(前額面)に対して背臥位で中殿筋、小殿筋、関節包、大転子とのリリースを実施してPSIS間距離を縮小させました。結果因子の治療として、腹臥位で陰部神経を内閉鎖筋に対して内側に向けてリリースし、骨盤底筋に向けて近道させるように移動させて治療を終了しました。

 

以上の治療の結果、帰宅時に最寄り駅から自転車に乗ったところ症状は消失していたとのことでした。以上より治療効果が得られたことはわかりますが、この症状が仙骨傾斜による尾骨偏位が引き起こしたのか、あるいは陰部神経もしくはその枝である会陰神経などの絞扼障害が原因だったのかははっきりしません。もしかしたら、両方の影響があったのかもしれません。

 

陰部神経痛についてのレビュー論文がありました。
Hibner, M, Castellanos, M, et alGlob. libr. women's med.,
(ISSN: 1756-2228) 2011; DOI 10.3843/GLOWM.10468

 

陰部神経痛は、坐骨内側から陰部にかけての痛みを主訴とし、Alcock’s canal syndrome、cyclist syndrome、pudendal nerve entrapmentなどとも呼ばれています。女性特有ではないようですが、産後の女性には高頻度にみられます。また、自転車のサドルのように坐骨の内側から骨盤底筋にかけて荷重することによって増悪し、硬く平坦な椅子では軽減します。

 

上記の論文には、加えて以下のように記載されています。

During vaginal delivery, pudendal nerve injury occurs from stretching of the pelvic floor by the fetal head at the level of the ischial spines.
(陰部神経は正常分娩により坐骨棘付近で損傷する)
   
Typically, symptoms are present with sitting and absent during standing or lying down.
(症状は坐位時に増悪、立位や臥位で軽快)
   
Another common symptom is the sensation of a foreign body in the vagina, perineum or rectum, frequently described as a “golf ball” or “tennis ball”.
(子宮脱のような腟内の異物感を引き起こすこともある)
      
 

産後、保育園の送り迎えなどに自転車を使用される方も多いと思いますので、参考になれば幸いです。

 

■ 筆者・セミナーご紹介

筆者:蒲田和芳

・広島国際大学総合リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 教授

・株式会社GLAB(ジーラボ) 代表取締役

・一般社団法人日本健康予防医学会 副理事長

・株式会社リベラシオン 代表取締役

 

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