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森田洋之医師 -夕張市が実証した"病院がなくなっても幸せに暮らせる"カタチ-

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 最初から医学部志望ではなかった

インタビュアー中川:

よろしくお願いします。
医師になるきっかけは何だったのでしょうか?

森田先生:

実は先に経済学部を出ています。
とにかくいろんなことに興味があったので、経済学部の卒業時に就職は考えていませんでした。
卒業後、哲学を専攻しようとも悩みましたが、医学部に進むことにしました。面白そうだと感じたんです。
人と人とが対面する仕事をしたいと思っていましたので。
今になって思うと経済学部を出てから医師になったのは強みだと思っていますが、
当時はそこまで考えていませんでした。
経済学部を出たときにはなんだか面白味を強く感じられなかったので、商社や金融には勤めなかったのだと思います。
ただ、根本的にはジェネラリストでありたいので、実は今の自分も医師だとも思っていません。

インタビュアー中川

いろんなご経験、すごく羨ましいです。ちなみに自己紹介の時はどのように答えられますか?

森田先生:

「何しているの?」と問われることが一番困りますね。
長くなってしまうので、一応医師をしていると答えます。
今は仕事の半分以上が研究・講演・執筆・取材です。
もちろん医師の仕事もしています。
 

インタビュアー中川:

医師として、地域医療に携わる決意をされたのはどのような経緯でしょうか?

森田先生:

田舎が好きなんです。もともとは都会っ子でしたが、今は戻る気はないですね。
仕事柄、都会に住んでた方が良いんですけどね。医学部卒業するときも地域医療に進むにはもってこいのタイミングでした。
地域医療に進むならオールラウンドプレイヤーになる必要があるのですが、僕らの卒業時からスーパーローテート研修が始まりました。
これはすごく良い機会でしたね。ラッキーでした。
僻地医療の研修や総合病院勤務も経て、それから夕張に行きました。
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 夕張が示した"地域の可能性"

 

インタビュアー中川:

では、財政破たんの後の夕張の話を聞かせてもらえますか?

森田先生:

炭鉱の閉山で、夕張は人口がすごく減って高齢化率がすごく高くなりました。
いわゆる日本の未来を完全に象徴していました。
その中で財政破たんと病院閉鎖となりました。でも一方で、夕張市民の高齢者ひとりあたりの診療費は軽減しました。
高齢者が増えると社会保障費も増える、とみなさん決まったように言いますが、減らすことだってできるんですね。
夕張はそれを証明したんです。

インタビュアー中川

高齢化に伴って社会保障費は増大傾向にありますが、その逆方向へ向かった夕張市民は他の地域の人たちと意識が違うのでしょうか?

森田先生:

はじめからではないですね。
僕が行った当初は文句も多かったです。
だけど今はほとんどないですね。
今、夕張市民は豊かです。

インタビュアー中川:

豊かというと具体的に聞かせて頂けますか?

森田先生:

例えば、僻地ならではの人と人との繋がりが豊かなんです。
地域全体が顔見知りで、雪かきもみんなでやる文化があります。
夕張は田舎ですから、本屋さんは1件もありません。
だけど文具屋さんが本を仕入れてくれて、文具の横に本があったりします。
そして、その文具屋さんが本を届けてくれたりするんです。
床屋さんも送迎付きです。
そういうFACE to FACEな関係性だからこそ、それが出来る豊かさがあるんです。

インタビュアー中川:

素敵な生活ですね。
今は介護サービスによってそれらが減ってきている印象ですが、これからはそういうのが求められる時代でしょうか。
森田先生:
そうですね。
高齢者になったら医療におんぶにだっこという姿勢ばかりではなくて、最後まで支え合って元気に生きていけると良いですね。
総合病院で最先端の医療を受けても、人間には必ず死が訪れます。
だったら、在宅や馴染みの施設で少しの医療を受けながら、家族や地域のあたたかな人間関係の中でそれまでの生活を継続し、死を迎えたほうがいいかもしれない。
それが、ひいては子どもたちの負担軽減にもなるわけですね。
そういう姿勢は目指そうと思えば目指せると思います。
夕張市民はそうできているので。
人口が減っているから経済成長は望めないかもしれない。
だけど経済成長だけが幸せではない。
さっきも言いましたが、夕張市民は財政破綻しても、すごく豊かです。
心の持ちようも元気さも。

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   これからの地域医療

インタビュアー中川:

これからはそういう豊かさを市民が気付いていくことが必要でしょうか。
森田先生:
はい、そうですね。
だけどなかなか今すぐにというのは難しいと思います。
夕張は財政破たんもあって、市民の意識が変わったのかもしれませんが、他ではそんなことってあまりないと思います。
だから今は他の地域で町内会とか、商店街とか、PTAとか色んなコミュニティに参加して学んでいる最中なんです。

インタビュアー中川:

いいですね。最近始まった地域ケア会議に各地区で出ていますが、本当に地区によって課題って全然違いますよね。
森田先生:
そうですね。
ベッドタウンなんかだと、お母さんたちの関係性はあってもお父さんたちの関係性は少なかったりしますね。
コミュニティーの中にもテーマ型のコミュニティーと地縁型コミュニティーがあって、夕張なんかは地縁型コミュニティーになります。
こういうところも考えていかないといけません。
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  森田洋之先生の経歴

【主な経歴】

1990:一橋大学経済学部入学

1996:同大学卒業、宮崎医科大学医学部入学

2002:同大学卒業

県立宮崎病院(初期研修)、同心会古賀総合病院(内科後期研修)

夕張市立診療所(2012年は所長)

ナカノ在宅医療クリニック

現在:南日本ヘルスリサーチラボ代表

森田洋之医師 -夕張市が実証した"病院がなくなっても幸せに暮らせる"カタチ-

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