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第一回:内腹斜筋は3つの線維に分けられる【関西医療大学 保健医療学部 |鈴木俊明教授】

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第302回目のインタビューは関西医療大学 保健医療学部の鈴木俊明教授。脳血管疾患患者へのリハビリテーションを専門にし、鍼灸医学を組み合わせた治療なども考案している。著書として「体幹と骨盤の評価と運動療法(運動と医学の出版社)」を出版。

座位と立位で働く線維が違う

 

ー まず鈴木先生の新著である「体幹と骨盤の評価と運動療法」について伺いたいと思います。体幹筋機能ついてより細かく考えるのに役立つ非常に有意義な本だと感じました。内腹斜筋については、3つの線維に分けて考えることが臨床場面で大切だとありましたが、詳しく聞かせてください。

 

鈴木先生 機能的に考えると、内腹斜筋は横行下部線維、斜行線維、横行上部線維の3つに分けられます。

 

まず横行下部線維は、鼠径靭帯・腸骨稜から起始し、腹直筋鞘に停止する線維で仙腸関節に剪断する力が働いた時に防ぐよう作用します。また、立位で同側下肢に体重がかかった時に働く筋肉で、座位では働かないことが分かっています。体重移動の練習をする時に注意しなければなりません。

 

例えば、歩行時における立脚初期に大腿骨から寛骨を押し上げようとしたした時なんかに働くのですが、これがうまく働かないとトレンデレンブルグ様の歩行を呈します。

 

次に斜行線維ですが上前腸骨骨棘から腸骨稜に起始し、斜め上方に腹直筋鞘に停止します。これは胸郭を引き下げる作用や、体幹を前屈・回旋させる作用、胸郭を固定した際に骨盤を引き上げる作用があります。座位で体重移動を反対側にした時なんかにも働きます。

 

最後に横行上部線維ですが、これは体幹後面の胸腰筋膜から第10・12肋骨に走行します。これは動作時にあまり働かない筋肉で胸郭の安定性に関与していると考えています。

 

このように、一口に内腹斜筋とは言っても線維走行が異なると働きが違うので、 トレーニングの方法は問題となる筋線維によって変更する必要があります。

 

ー はじめ先生が体幹筋の機能に疑問を持ち、研究しようと思ったのはなぜなんでしょうか。

 

鈴木先生 これは学生時代に遡るのですが、実習時代に脳梗塞後の患者さんで座位になった時に麻痺側の腹筋が入らず、体幹が潰れてしまっている(側屈している)方を担当しました。この時にバイザーからは「潰れている側の体幹を伸張して筋を賦活する」というようなことを言われたのですが、ただ伸ばしているだけで筋収縮が入っているような気がしなかったんです。

 

筋電図は実際に、筋線維から発生した活動電位を捉えることができるので、実際に理学療法士が行うトレーニングがターゲットとしている筋に効いているのか調べることができます。そこから分かった知見から、より効果のあるアプローチを考えることもできますし、非常に有効的な解析装置です。

 

脳卒中リハの中でも特異な臨床感

 

ー 鈴木先生は脳血管疾患リハを専門とされているPTの中でも臨床の考え方が独自性があり、例えば、ハンドリングに関してもボバースのやり方とも少し違いますよね。

 

鈴木先生 実は、私の臨床の原点に立ち返ると、養成校を卒業するまではボバースにハマっていてボバースで上にいってやろうと思っていたこともあります。その頃の脳卒中リハは大きくブルンストローム法とボバース法の二つに分かれていたのですが、ブルンストローム法には私は少し懐疑的な印象を持ち、ボバース法の方が正常動作に近く自然に思えました。

 

もう、それこそ大学2年生の半ばくらいから、ボバース法をすごく勉強していて、ちょっと変わった学生だったと思います。実習も全部ボバース関連の病院に行きましたし、極めていきたいと思っていました。

 

そんな中、学生最後の実習先だったボバース記念病院で、お世話になった実習指導者から、「君は色々ボバースのことを分かっているから、一回外で苦労して、それから戻ってきてよ」と言われました。結果的に運動学を始め、色々な考え方に触れることができて、今の臨床感に繋がってきたと思います。

 

【目次】

第一回:内腹斜筋は3つの線維に分けられる

第二回:鍼×理学療法の可能性

第三回:動作分析力はどのようにして磨くのか

最終回:本物の臨床家こそ研究者であれ

 

鈴木俊明先生おすすめ書籍

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鈴木俊明先生プロフィール

関西医療大学 保健医療学部  理学療法学科   教授、学科長
大阪府理学療法士会  理事、副会長
日本基礎理学療法学会  運営幹事 

【経歴】

昭和61年3月 京都大学医療技術短期大学部 理学療法学科 卒業
昭和63年4月 京都大学医療技術短期大学部 理学療法学科 助手
平成  6年4月 関西鍼灸短期大学 神経病研究センター 講師、助教授(平成13年)
平成14年3月 藤田保健衛生大学より博士授与
平成15年4月 関西鍼灸大学 神経病研究センター   助教授
平成19年4月 関西医療大学保健医療学部理学療法学科  教授
平成23年4月 関西医療大学大学院保健医療学研究科 教授

 

第一回:内腹斜筋は3つの線維に分けられる【関西医療大学 保健医療学部 |鈴木俊明教授】

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