脳画像を見ることの重要性
脳のなかで行われる手続き上の問題やこれからの可能性,配慮すべきことなどを画像からある程度考察することができるのであれば,評価やプログラム立案のときに相当な手助けになる.
出典:症例で学ぶリハ戦略
普段臨床で脳がどのように機能し、それが身体機能や高次脳機能に如何に影響を与えているかを可視化することは困難である。ただ現象の表出には脳からの指令の結果であり、同時に自己の行動や環境が脳にフィードバックという形で影響を与えている。近年脳システムの解明により、それらの損傷がどのような形で表出されるかが脳画像をみたときに理解できるようになり始めている。
脳システムの基礎⇒実践
本書籍の大きく分けて2つのトピックスで構成されている。「脳のシステムを学ぶ」と「症例」である。前半部で基礎的な脳卒中のリハビリテーションを行う上での脳システムを解説している。イラストが豊富に使われており、イメージしにくい脳での手続きを解説している。
臨床では脳卒中などで脳に損傷を受けたときに、その損傷部位の画一的な障害 (例:視床出血=感覚障害)を想起しやすい。この方法は一問一答のように明快な答えが得られることが多い。ただ、脳システムはネットワークによる様々な部位で連携を取り合って機能しているといわれている。本書籍ではこの連携を意識的に解説しているように感じる。
基礎的な脳システムを学習した後に症例を通して学ぶことができる。理論を学ぶこととそれを実践することでは、そこに至るまでの時間や労力が大きく違うと直感的であるが感じることがある。リハビリテーションにおいても論文や書籍から得た知識が次の日の臨床で活用しきれないことも多く体験する。そのような時に症例を通しての学習できることはうれしい。すべてを鵜呑みにすることは危険であるが、著者が臨床で対象者を前にしてどのように考え理学療法・作業療法を提供したのかを知ることができる。
セラピストに求められるものとは...
脳画像を見たときに想定される障害像や今後の可能性を理解することで、リハビリテーションを展開しやすくなる。しかし、生物学的な「ヒト」としてのみでは、人格を有する対象者に対しては不十分となりやすい。最後に本書籍に書かれていた脳システムを臨床に活用するにあたっての求められる姿勢を引用して書評を終了する。
脳画像をみて知ることは,こういった問題があるかも,という「可能性」のレベルだからである.そこにセラピストたちの知恵と発想力が活かされ,「生活を営む社会的動物である」人間に向き合う彼らの情熱が結集される.
出典:症例で学ぶリハ戦略
今回紹介した書籍
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最後に
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