最終回:上腕の太さが心不全の予後予測になる【神谷 健太郎先生】

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上腕周囲長が心不全のリスクマーカーに

 

ー 二の腕の太さが重要という論文を発表されたと聞きました。

 

神谷 健太郎先生 以前よりBMIが高いと心臓病になりやすいけれど、いったん心臓病になった人はむしろBMIが高いほうが予後が良いというオベシティパラドックスという現象があることが知られていました。しかし、BMIは筋肉や脂肪などを判別することができないので、心不全の人はただただたくさん食べてメタボになればよいのかという疑問がありました。

 

この研究では四肢筋量の代替指標として上腕周囲長を、内臓脂肪の代替指標として腹囲を測定して心不全患者さんの予後との関連をみたところ、上腕周囲長の予後予測能が極めて高かったという結果でした。もともと、上腕周囲長は全身の筋肉量をある程度反映するという研究があり、WHOでも開発途上国における栄養評価の指標として推奨されていました。この論文は、2016年にアメリカの心不全専門雑誌「JACC: Heart Failure」に掲載していただきました。

Complementary Role of Arm Circumference to Body Mass Index in Risk Stratification in Heart Failure.

 

この雑誌は心不全分野のトップジャーナルでしたので、その後も雑誌やテレビなどで紹介していただき多くの方から反響がありました。

 

ー 国際誌に論文を投稿するということも大切なことなのかもしれませんね。

 

神谷 健太郎先生 そうですね。でも、私も最初の英語原著論文はアクセプトされたのが2014年で、書き始めてから10年以上かかっています。その間、リジェクトは10回以上で一生アクセプトされる気がしませんでした。笑

 

2011年にイタリアのVeruno Scientific Institute Exercise Pathophysiology LaboratoryにCardiac Rehabilitation Divisionの Research Fellowとして短期留学させていただきましたが、その時に色々教えていただいたのが大きかったと思います。向こうの先生方もかなりハードワークをしていて、心肺運動負荷試験の傍ら、原著論文やガイドラインなどを修正していたりしていました。その割に、16時くらいになると子供の塾の送りがあるからと、サクッと帰っていかれたりします。仕事も家庭も大切に、肌身で教えてもらった感じです。

 

ー 心臓リハビリテーション分野においては、海外と比較して日本は遅れているのでしょうか?

 

神谷 健太郎先生 臨床での実践内容や普及状況については海外にも引けを取らないと思います。学術集会に至っては、日本の心臓リハビリテーション学会ほど心リハ単独の学会として人が集まっている学会は海外にもありません。ただ、論文などでの海外への情報発信という点では圧倒的に少ないのは事実だと思います。

 

2019年の日本心血管理学療法学会学術大会について

 

ー 日本理学療法士学会が分科してからは、毎年学術大会(日本心血管理学療法学会)を呼吸や糖尿病と合同で開催していますよね。今後は単独での開催も考えているんですか?

 

神谷 健太郎先生 私の意見としては、リハビリテーションには他分野の知識が必要ですし、定期的に合同で集まってやったほうがいいと思っています。数年に1回、各分野のエキスパートが登壇して、『この数年の進歩』などというセッションがあれば、発表する側も進歩させなきゃというきっかけになると思いますし、聞く側も効率よく情報を多面的に収集できると思います。

 

ー 来年は準備委員長をされるそうですが、心がけていることや、こんな学会にしたいとかのお考えをお聞かせください。

 

神谷 健太郎先生 臨床実践とともに科学的な英語論文を自ら執筆し、積み重ねてきている先生にシンポジウムなどでは登壇してもらうようにしていますし、抄録にも主要な業績を明記するようにしてもらっています。そうすると、若手にとってなぜこの人が登壇しているのか分かりやすいですし、論文を書くモチベーションに繋がりますよね。

 

今は論文をどんどん投稿している優秀な若手も増えてきています。自分たちが主張していることがどれくらい確かな検証によって築かれたことなのか、一個一個積み木のように重ねていくことが大事だと思います。

 

ー 最後に神谷先生にとってのプロフェッショナルとはなんですか?

 

神谷 健太郎先生 わかんないです。笑 でも、口だけではなく自ら背中を見せられるような人でありたいなとは思っています。

 

【目次】

第一回:心不全パンデミック時代におけるセラピストの役割

第二回:心不全の兆候は大きく2つ。うっ血か低灌流所見か

第三回:確かな一本の積み重ねでしか世界は変わらない

最終回:上腕の太さが心不全の予後予測になる

 

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神谷健太郎先生プロフィール

北里大学医療衛生学部 リハビリテーション学科 准教授(2019年4月1日より)

2002 北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科卒業 

2004 北里大学病院リハビリテーション部 入職 

2011 Veruno Scientifc Institute リサーチ・フェロー

2014 北里大学大学院 医療系研究科 博士課程修了 

2017 北里大学医療衛生学部 講師

現在に至る

 

【学会活動・委員等】

  日本心血管理学療法学会 副代表・ガイドライン・用語策定委員

  理学療法学およびJournal of the Japanese Physical Therapy Association 査読委員 

  日本心不全学会 代議員・チーム医療推進委員・栄養ステートメント策定委員

  日本心臓リハビリテーション学会 評議員

  日本循環器病予防学会 評議員

  日本理学療法士学会

  日本循環器学会

  日本心臓病学会

  ヨーロッパ心肺リハビリテーション協会 (EACPR) 

  ヨーロッパ心不全学会(ESC-HF)

 

【表彰】 

l ヨーロッパ心不全学会 2018(ウィーン) Nursing and Allied Health Professional Investigator Award(優秀賞)

l 第1回(2018)北里大学病院・東病院特定臨床研究報奨賞

l ヨーロッパ心不全学会 2016(フィレンツェ) Nursing and Allied Health Professional Investigator Award(入賞)

l EuroPrevent 2013(ローマ), 若手研究者賞(YIA) 最優秀賞, 等

 

【執筆書籍】

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最終回:上腕の太さが心不全の予後予測になる【神谷 健太郎先生】
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