"障害"の捉え方の違い
インタビュアー:ニュージーランドと日本の違いはどのようなところですか?
大郷先生:色々あります。ニュージーランドは障害の人の捉え方が違います。向こうだと「精神や身体機能の障害があって、6ヵ月間継続して社会生活上の困難が生じる人は、障害者として認定される」としています。そうすると国民の約2割は障害がある人となり、障がいの概念が日本と異なります。
障害の等級を付ける場合も、どんな疾患や機能障害を負っているかよりも、地域や社会での生活の支障や困難が継続してしまうことに着目しており、本人が何をしたいのか、それに対して何が・どれくらい出来ていないのかを大事にしています。
日本は”身体機能”を重視するが、向こうは生活の”行為”を重視しています。
税金の支給も一律でなく、人により違って、年間200万から3000万までその人の何をしたいのかで支援の金額が大きく上下します。そこらへんは柔軟で個別性を重視しているんですね。
一方で、日本は全国どこでも同じようなサービスを受けられるという、差のないことが良いところかもしれませんね。
インタビュアー:なるほど。では今、回復期リハビリテーション病院から退院された後の、地域との関わり方はどのようにされているのですか?
大郷先生:うちは訪問リハを持っているので、退院した患者さんは出来るだけ訪問リハに繋ぐようにしています。なので入院時から担当するものとやり取りできるので、密な申し送りができます。
他のところはサマリーくらいになっちゃいますよね。施設に行く場合などは、直接施設に一緒に行き、生活レベルや動作の指導方法をお伝えしています。
あとはサービスとしては、退院後1ヶ月くらいにご自宅に訪問して環境調整の見直しなどもしています。
作業療法はマクロで多様な視点を磨く
インタビュアー:これから作業療法士に求められるものは何だと思われますか?
大郷先生:そうですね。働く場所がどこになるかが凄く大きくて。どこに行っても、作業療法士のニーズはたくさんあるんですね。でもなかなかそこにチャレンジしていない。例えば「グループホームの管理者は作業療法士の方がいいじゃないか?」と言われたことがあります。
僕はあまりそのイメージが当時なかったが、作業療法士が技術を提供して患者さんに良くなってもらうというところから脱していかなければいけないんじゃないかと思います。
環境や地域などの、個別じゃない単位を見れる目を持って行かなればいけません。でも医学をベースにしていることは忘れちゃいけないと思います。療法提供するものだと思いますし、なんとなくではだめなんです。
医学をベースに、”作業”を利用して、患者さんがより良くなるために、マッチング能力を高めなければいけないと思います。「トータル的な、ライフスタイルに対してのマネージメントが出来る」ということが求められる能力かなと。それを発揮できる場所を自分で作り出していくという力も必要になってくると思います。
インタビュアー:最後に、今の若い療法士や目指している学生さんにアドバイスをお願いします。
大郷先生:出来る限り、自分と違う分野の人との出会いを大切にしてほしいなと思いますね。若い人は、入職の時に施設や病院にいくと思います。病院や施設は今までの社会生活から離れたところにあります。凄く分断されたところになっていることが多いです。
これに気づいてほしいですね。自分の人生、地域、コミュニティーからもズレた所にある。その中だけで作業療法を展開している感じになると、言葉は悪いかもしれませんが非常識、いわゆるちょっとズレた感覚になってしまう恐れがあります。
そのまま成長してしまうと、真のニーズに応えられなくなってしまうので、早い段階で全然違う分野の人と交流を持っておいてほしいです。だから、いくつかのコミュニティーに属してほしいですね。近所付き合いでも趣味でもボランティアでも。そして、仕事やプライベートで感性を磨いてほしいなと思います。何より、自分自身の人生を精一杯楽しんでほしいと思います。
大郷先生が大会実行委員長を務める次世代リハサミット2016
詳細はこちら>>http://1post.jp/2016/08/09/reha_2016_summit/