【産後におけるトラブル】
出産に向けて女性の身体には、さまざまな変化が生じます。
その中でも多くみられる症状は、仙腸関節や恥骨など骨盤帯周囲の疼痛です。
【仙腸関節痛の原因】
仙腸関節は、仙骨(せんこつ)と腸骨(ちょうこつ)の間にあり、脊椎の根元に位置しています。
周囲の靭帯(じんたい)により強固に連結しているため、3~5mmのわずかな動きを認めるものの仙腸関節を随意的に動かすことはできず、脊柱や下肢と連携して動く関節です。
仙腸関節の主な動きはS2を軸とした前後に傾く動きです。仙骨が寛骨に対して前方に傾く状態を「ニューテーション」呼び、仙腸関節の締まりのポジションとなります。
靱帯による支持により仙腸関節は安定しますが、間接的に繋がっている筋の収縮によって圧縮力が強まることでも安定性を高めることができます。
妊娠中はリラキシンなどのホルモンの影響によって靱帯の弛緩が生じ制動力が低下します。その結果、通常時より骨盤の安定性が弱まるため、筋肉や筋膜に頼って安定性を高めようとします。そのため、筋緊張亢進や関節への過度な負荷が加わり仙腸関節に疼痛が生じます。
【恥骨結合離開による疼痛】
左右の恥骨がつながっている部分は「恥骨結合」と呼ばれ、動きの少ない二次性軟骨性の関節です。
恥骨結合の安定には、仙腸関節と同様に周囲に付着する靱帯と筋肉が関与しています。
前方では「前恥骨靱帯」と「腹横筋、腹直筋、錐体筋、内腹斜筋、長内転筋」により安定性を確保していますが、臨月や出産時になると軟部組織の水分吸収が始まり、恥骨が容易に離解されます。出産に向けての準備が始まるのです。
【痛みを誘発する要因】
①筋肉による支持性の低下
胎児の成長につれて腹部も増大し、腹横筋の伸長が始まります。
妊娠中は常時伸ばされている状態となるため、筋出力が低下(伸長性筋弱化)。
腹部周囲筋による支持が不十分となり、胎児の重量が恥骨結合へと加わってしまいます。
②骨盤の歪みによる痛みの誘発
姿勢や骨盤の歪みにより、左右非対称のストレスが恥骨結合へ「せん断力」を生みだし疼痛を誘発します。骨盤の正中位を保持できずに骨盤前傾が強くなると恥骨への荷重が増加します。反対に後傾方向への動きが強くなると腹腔を圧縮して胎児を圧迫したり、骨盤底への負担が増大したりします。さらに、仙骨は後屈(カウンターニューテーション)となり尾骨への負担が大きくなってしまうのです。
【日常生活へのアドバイス】
このような疼痛は、不良姿勢を正して無理なく脊柱を伸展させるなど、「姿勢」から予防することが重要になります。
そのため、椅子座位を取る際にはクッションやタオルを用いたポジショニングや、体格にあった椅子を選択することが有用です。
座位は骨盤へ直接荷重がかかるため、痛みが出現しやすい姿勢です。デスクワークや車の運転など日常生活における指導も大切になります。
また、歪みが生じやすい「端坐位で足を組む」「割座をする」「横座りをする」は行わない方が理想的とされます。
座位に限らず、長時間、同一姿勢を取らないように心掛けるだけでも効果的です。 まずは日常の中でできる簡単なことからお伝えする関わりが大切になります。
エミアスグループは女性が輝く社会、未来を創り上げるために、産前産後や女性のライフワークバランスを応援する団体「ウーマンズヘルスケア研究会」を立ち上げ、活動しています。
産前産後で社会復帰に悩みを持たれる方は非常に多く、これからの超高齢化社会において女性の活躍はこれまで以上に必要とされるでしょう。
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