第二回:ギターリハビリテーション【理学療法士|ジャパハリネットギタリスト 中田衛樹先生】

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前回の続きからー。

高次脳機能障害に対してギターを用いた介入例

- このインタビューを行う前から思っていたのですが、音楽業界から完全に決別して、医療業界にきたわけですが、どこかでそれまで培ってきた音楽の経験をこの分野に生かそうとは思わなかったのですか?

中田先生:実は、やめた時からそれはずっと思っていました。これまで歩んできた道が何かに生かすことができないかなって。実は一人の患者さんに出会ったことで、それが実現できる可能性を感じたんです。

 

うちの病院では、高次脳機能障害の支援拠点機関で高次脳機能障害をもった方々が外来に通われています。その中で、一人「ギターをやりたい」という方がいて、担当は僕ではなかったのですが、担当の作業療法士の方から「教えてやってくれないか?」ということで、ギターを教えることになりました。

 

実は、僕がギターを教える以前から担当の作業療法士が簡易上肢機能検査*1(STEF:Simple Test for Evaluating Hand Function Test)という評価をしていて、その点数がずっと変わらなかったんです。

 

でも、ギターを教えることで急に点数が上がるようになりました。この経験は、論文にして日本行動分析学会と行動リハビリテーション研究会で発表させていただき、論文も投稿しました。(※中田衛樹・他:高次脳機能障害を呈した症例に対するギター演奏練習‐応用行動分析学的介入により行動変化を認めた一例‐.行動リハビリテーション2017;6:18-22)

 

*1簡易上肢機能検査(以下STEF)は、10種類のテストからなり、それぞれ大きさや形の異なる物品を把持して移動 させるという一連の動作に要した時間をストップウォッチで計測し、決められた点数(1~10点)を加えて、右手と左手との差を 左右別に合計点数を算出する検査器具です。また参考値との比較も可能です。

 

- やはり発表の時は、舞台でギターを弾かれたのですか?

中田先生:それは流石にできなかったです。笑 それから毎年患者さんのサークル(『えこまちOB会』)と関わりがあって、年に2回ぐらいはイベントでコンサートをしています。

 

そのサークルは当院と関わりのあった高次脳機能障害を呈した方たちで構成されているサークルで、メンバーそれぞれが得意なことややりたいこと(絵本の読み聞かせや、楽器演奏、英文朗読etc)にチャレンジしていくということがコンセプトのサークルです。

 

そのサークルの一人が実体験を元に絵本を作りました。その読み聞かせをするのに、BGMを作ってほしいと依頼があり、やっとことがないので不安でしたが、何事にもチャレンジしていくその姿勢に胸を打たれ快諾しました。

 

そのような活動もしてます。今では、これまでのキャリアが医療の中で生かせるという確信をもっていますが、その方々との出会いがあるまでは、半信半疑でした。というのも、履歴書を書く欄に自分のバンドの事を書く欄がどこにもなかったんです。

 

自分がやってきた音楽、8年間一生懸命頑張った音楽の時間というのを否定されたような気持ちで、全く社会的に認められんのだと。例えばミスチルの桜井さんだったら堂々とミュージシャンと書けると思うんです。

 

自分で“元ミュージシャン”と書く時がありますが、どこかで世間に認められないと感じていたんです。そんな想いが、この患者さんたちを通して報われた気がしました。

 

- 一度音楽に対しては挫折して、“解散”という道を歩んだわけですが、その音楽によって、今また新たな道を開いたんですね。バンド当時の音楽と今の音楽には何か違いがありますか?

中田先生:難しいですね。どうなんだろう。あんまり考えた事がなかったです。

 

- ある意味、患者さんを通して、中田先生がリハされたんですね。

中田先生:それはありますね。今から思えばですけど。多分それはあると思います。最近、バンドを再結成したんですけど「俺やっぱりやりたかったんやな」と思います。

 

「あー自分はこんなにギターが好きだったんだ」「自分はこんなに音楽が好きだったんだ」と、後々気付かされる事があって、正直自分には音楽の才能がないってもうきっぱり思ったんです。昔。

 

「もうダメだ。自分には音楽の才能がない」と。ただ、一旦再結成して、やらないといけない状態になった時、「これどうやったらもっと上手くなるんやろ」「これどうやったらもっと音良くなるんやろう」と、自分で考えていく中で、楽しさを改めて感じています。

 

結局、自分は音楽がとても好きだったんですね。そうでなければ人に頼まれた時、承諾しないですからね。きっと捨て切れなかったんだと思います。そもそも、ギターも捨ててなかったですからね。

 

- 話が少々前後しますが、先ほどギターによる症例改善の発表を日本行動分析学会で行われたとのことなのですが、行動分析を臨床に取り入れたきっかけはなんだったのですか?

中田先生:私が一年目の頃です。ここの病院では、1年目にスーパーバイザーがつきます。その方が、行動分析を臨床に取り入れていました。ある日、自分が担当する脳血管疾患の患者さんで寝返りの練習をしていたのですが、全然できなかったんです。手順を覚えられない。

 

それでバイザーの先輩に相談したら、「この通りにやってごらん」とその方が書いた論文(岡田一馬・他:逆方向連鎖化の技法を用いた起居動作練習の効果‐認知症を合併した重度片麻痺者における検討.行動リハビリテーション2014;3:37-42)を渡されました。そこに書かれている通りにやったら、1回目の介入でできたんです。

 

具体的な方法ですが、逆方向連鎖化っていう方法なんですけど…

 

—続く。

 

【目次】

第一回:デビュー・解散・理学療法士

第二回:ギターリハビリテーション

第三回:モチベーションをチューニング

最終回:僕は理学療法士です。

 

中田先生のプロフィール

理学療法士

ジャパハリネットギタリスト

<研究発表実績>

・  逆方向連鎖化を用いた起居動作練習効果の検討 第19回愛媛県理学療法士会学術集会

・   逆方向連鎖と部分練習を用いた起居動作練習効果の検討 行動リハビリテーション研究会 第4回年次大会

・   脳卒中発症後に当院に入院した65歳男性の退院までの経過報告 愛媛脳卒中シームレス研究会 第18回中予地区作業部会

・   逆方向連鎖化と部分強化の技法を用いた起居動作練習効果の検討 第44回四国理学療法士学術大会

・   維持期の高次脳機能障害患者に対して、行動分析学的介入により行動変化を認めた一例 第3回慢性期リハビリテーション学会

・   高次脳機能障害を呈した症例に対するギター演奏練習 行動リハビリテーション研究会 第5回年次大会

・  回復期脳血管障害者の重症度とADLの関連 第47回四国理学療法士学術大会

・  回復期脳血管障害片麻痺者の端座位自立度の検討‐麻痺重症度と年齢および認知症が及ぼす影響‐ 行動リハビリテーション研究会 第8回年次大会

<論文投稿実績>

・  重症片麻痺者に対する逆方向連鎖化を用いた起き上がり,寝返り練習の効果.高知リハビリテーション学院紀要2014;16:13-16

・  逆方向連鎖化と部分練習の技法を用いた起き上がり動作練習‐高次脳機能障害とパーキンソン症候群を合併した脳血管障害患者に対して‐.高知リハビリテーション学院紀要2017;18:27-32

・  高次脳機能障害を呈した症例に対するギター演奏練習‐応用行動分析学的介入により行動変化を認めた一例‐.行動リハビリテーション2017;6:18-22

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