1日10分間の運動をすることで、身体の炎症や老化を抑制されるメカニズムを発見ー。
9月27日、東京都健康長寿医療センター研究所の研究グループは、運動で生じる骨への「力」が、力を感知するたんぱく質(Cas)に作用し、身体の組織や臓器の炎症・老化に関与する別のたんぱく質(NF-κB)を抑制させ、骨の強度・密度を維持するメカニズムを発見したことを発表した。
▶“適度な運動タンパク質”を見つけた!運動が身体の炎症・老化を抑制する分子メカニズムを発見!!健康のために1日10分、骨に衝撃を与えよう!!!
これまで、加齢性の疾患や障害に対して「適度な運動」が有効であることが証明されてきているが、「適度」がしっかりと定義されていなく、運動がどのうように好影響を与えるか分かっていないことが現状であった。さらに、多くの加齢性の疾患や生活習慣病に炎症が関係していることも知られている。
このような背景をもとに、研究チームは、骨の健康維持効果における運動の本質が、骨に加わる力(衝撃)であり、炎症の抑制や抗老化の作用があることを分子レベルで検証した。
マウスの後肢の片方の神経を切離し、歩いた(走った)際の衝撃を減弱させ、神経を切離していない方の後肢の骨と比較した結果、切離していない方の後肢に比べ、切離した方の後肢は骨量が減少しており、Casが核内分布し、NF-κBが抑制されることが示された。
さらに、骨に衝撃を与えた際に生じるCasの核内分布とNF-κBの活性低下を培養細胞で再現した結果、骨吸収(骨破壊)細胞である破骨細胞の分化を促進させるたんぱく質(RANKL)の発現が低下していることが確認された。
このメカニズムとして、運動によって骨組織内の間質液が流動し、骨細胞へ刺激が加わり、運動で生じる骨への力を感知するたんぱく質(Cas)が核内へ移行することで、組織や臓器の炎症・老化に作用するたんぱく質(NF-κB)が抑制され、最終的に破骨細胞の分化を抑制することができるとのことだ。
研究チームは今度の展望として、運動したくても運動できない障害がある者にも適用可能な擬似運動治療法の開発につながる可能性を見出すことができたと述べている。