衝撃と危機感を感じたこと
POSTインタビュアー:研修を経て、取り組みたいことなどはありますか?
中川先生:認知症啓発ですね。
デンマークやオランダでは衝撃と大きな危機感を感じました。
今は公共施設や地域資源の中でいくつか認知症啓発に関する取り組みをさせて頂いていますが、認知症者に優しい地域づくりから、多様性への許容ができる社会変化を起こしていきたいと思っています。
POSTインタビュアー:なるほど。もうすでに具体的に何かされているのですか?
中川先生:去年から農を通じたコミュニティづくりをしています(過去記事参照)。
これも認知症者へのセーフティーネットになるのかなと思っています。
日本文化には隔てが少なかったように思いますが、時代を経て個人が強くなってきているように感じています。そのような状況では共同体をなさずして生活を送れてしまいます。
そして、認知症徘徊者や児童たちへのセーフティーネットは引けなくなるように思います。NHKの調査結果では年間1万件の徘徊者に関する通報があり、うち数百人はお亡くなりになっていたりするようです。
結局は顔の見える関係性の中で問題が完結するようにしないといけなくて、そういう意味で農を通じたというのは理に適っています。
日本人の9割が近所の方に醤油を貸せるというアンケート調査があるのですが、このシェアリングコミュニティは顔の見えるというのが前提だったりします。
日本文化には顔の見えるというのが必要なのでしょうね。
POSTインタビュアー:私も非常に必要性を感じます。話は変わりますが、欧州で活躍される療法士にあってきたそうですが、どうでしたか?
中川先生:欧州では5名ほど日本人療法士とあってきました。
研修で来ている方、働かれている方などいろんな形でしたが、皆共通点があるように思います。みなさん本当に素敵でした。
僕がお話しさせて頂いた方々の内容はインタビューで紹介されているので是非見て頂きたいですね。(*ページ下に先生方のインタビューを掲載しております)
真の「自立支援」のサポートをする
インタビュアー:これからのリハビリテーションの在り方はどう思いますか?
中川先生:医療は数十年も前にパラダイムシフトを起こし、現在は地域包括ケアシステムの確立が求められる時代です。
そんな時代だからこそ、自立支援に関わる療法士の視点はかなり重要だと思います。
予後予測に基づく、生活支援を家族・他職種に伝え、患者を取り巻く背景因子を上手くコーディネートする能力を強く求められると思います。
そのためには広い視点が必要で、まずは他職種のことを理解することから始めることも必要だと思います。
リハビリテーション専門職の活用の仕方を知っている他職種は少ないと思います。
ですから、療法士が他職種の目的・手法を知り、その中にうまく組み込みながら療法士の活用の仕方や他職種から求められていることを提供する能力が必要になるかと思います。
これから地域に医療・介護専門職が流れるかと思います。地域包括ケアシステムというチームの中で療法士の役割を協調的に果たすことが我々の使命ではないでしょうか。
欧州ではたくさんのジェネラリストが活躍しておりましたので、そう強く感じます。
<バックナンバー>
<中川RPTがヨーロッパ滞在中にインタビューした先生方>
中川征士先生経歴
フリーランス理学療法士
<現在の活動>
半農半療法士・診療所・訪問看護・西日本ヘルスリサーチラボ・介護予防ネットワーク・竹の園(竹林の管理)・地域リハビリテーション支援センター・SHUHA-Re Project・社会課題を考えるセラピストの会(ATSSI)・暮らしの保健室<所属>半農半療法士/暮らしの保健室さくらい
<運営・掲載ページ(一部)> ・地域に溶け込む新たな形!?半農半療法士とは?(All About掲載)・なぜ半分は農をし、半分は療法士をする半農半療法士をしているのか?(POST掲載)
<受賞歴>
2014年:奈良介護大賞(個人) 奈良介護大賞 中川さんら - 6団体2個人に/あたたか介護賞(奈良新聞)キーワード
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