キャリアコンサルタントが徹底サポート

ベトナムの補装具について

6094 posts

ベトナムの義肢装具士の教育

ベトナムで義肢装具の作製を行っているのは、労働・傷病兵・社会省(Ministry of labor, Invalid and Social Affairs ; 以下MOLISA)の管轄下の養成校を卒業した義肢装具士(Prosthetist and Orthotist ; 以下PO)です。養成校(短期大学)はベトナム全土において、首都ハノイに1校だけあり、ドイツの援助で建設され、運営においても以前は支援を受けていました。3年制で、講師4名、助手約20名、学生数45名(1学年15名)です。正規コースと更新コースがあり、卒業後は病院、公的・民間義肢装具会社などに就職しています。

ベトナムで用いられている主な義肢装具

11938702_1032829753405943_437996085_n

11911732_1032829756739276_198149233_n

作製されている義肢装具の分類としては、義肢(義手・義足)、装具(上下肢・体幹)、オーダーメイド靴(補高靴、インソール)があります。義足に関しては、スイス・ジュネーヴに本部のある赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross ; 以下ICRCとする)が作製のノウハウの伝達や部品の調達を支援しています。また、一部の富裕層を対象にドイツや台湾、日本からの輸入部品を使って義足を作製することもあります。装具に関しては、下肢・体幹装具ともに日本で広く使用されているものと類似したものが入手可能ですが、作製が簡単でコストが低いものが高頻度に使用されています(主な下肢装具の種類は両側金属支柱型、プラスチック型(シューホーン等)。また、継手の種類は膝継手にはリングロック、足継手には単軸・ヒンジ継手)。義手や上肢装具に関しては、義足や下肢・体幹装具ほど普及しておらず、義手はあっても装飾用のみ(筋電義手は患者の金銭的負担が大きいため)で、上肢装具は用いられていないことが多く、あっても拘縮予防の手のスプリントです。

義肢装具の製作の流れ

 11940195_1032829750072610_455073387_n

MOLISAの管轄下の病院・リハセンターにおける一般的な装具作製の流れは以下の通りです。Drの診察・処方➡製作所で作製➡Dr.のチェック➡PTがリハ中にチェック。義足の作製に関しては、チームアプローチがなされ、最初の処方の段階からDr・PT・POが揃って患者の状態を評価します。ICRCの支援が入っていることからも、そのサービスの水準は日本などの先進国とそれほど大差はない印象を受けます。

一方、保健省(Ministry of Health ; 以下MOH)の管轄下の病院には義肢装具製作所は併設されていないため、外注業者に委託しています。義肢装具の作り変えの時期について、明確な基準はなく、3~6ヶ月で患者が再来院した際にDrが必要性に応じて判断するようです。

義肢装具購入時の負担額

11942271_1032829760072609_475613719_n

ベトナムでは戦争での負傷兵や労災は、MOLISA管轄下の病院でサービスを受けることが多いです(日本でいう労災保険のようなものでしょうか)。その際、義肢装具購入にあたる費用は、患者と国が半分ずつ負担します。また、一般の健康保険は保険証に規定されているMOH管轄下の病院でサービスを受けます。例えば、その病院に装具などの工房があれば装具なども保険でのサービスで自己負担が減りますが、他所からの購入となると基本的に実費です。

例を挙げると、靴べら式短下肢装具(Shoehorn brace ; 以下SHB)の代金は片足で約70万ドンです。ベトナム人の平均月収は200万ドン(約1万円)(都市部では300万ドン、地方では150万ドン。http://businesstimes.com.vn/facts-figures-rich-vietnamese/参照)であるため、全額実費負担のケースだと患者は平均月収の35%程度の代金を負担することになります。 一方、日本ではSHBは片足で約47,000円(付属品を付けると+α)ですが、医療保険制度が普及しているため、高額な装具も身障手帳を使えば0~1割負担、通常の医療保険でも0~3割負担で購入できます。 経済成長の著しいベトナムにおいて、義肢装具を購入できる経済力のある人々が増えてきていることから、今後も義肢装具療法は発展方向にあると言えると思われます。

ベトナムの福祉用具

ベトナムでは、都市部には国内外の福祉用具業者の支店があり、代金を支払えば庶民レベルでも必要な福祉用具を手に入れることができます。しかし、物はあるにも関わらずセラピストでさえも「(値段が)高いから…」と言って、福祉用具を深く知ろうとしないという現状もあります。そうなると、誰が福祉用具を紹介し、患者へ提供すればよいのでしょうか…

セラピスト自身の意識改革も、今後のベトナムにおけるリハビリテーションの課題といっても、過言ではありません。

執筆者経歴

経歴

山本健一RPT

1987年 九州リハビリテーション大学校卒業

1987年 岡山労災病院勤務

1990年 JICA青年海外協力隊 ジャマイカ派遣

1993年 潤和会記念病院勤務

2014年~現在 JICAシニア海外ボランティア ベトナム派遣  

小竹里佳RPT

2008年 大阪医専卒業

2008年 兵庫県立リハビリテーション西播磨病院勤務

2011年 兵庫県立リハビリテーション中央病院勤務

2014年 京都下鴨病院勤務

2014年~現在 JICA青年海外協力隊 ベトナム派遣  

峯松亜由美CPO

2007年 神戸医療福祉専門学校三田校卒業

2007年〜現在 株式会社 大井製作所勤務

ベトナムの補装具について

Popular articles

PR

Articles