解剖学・運動学的にみた「歌う」ということ【理学療法士|山本篤先生】

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1. PTによる解剖学および運動学の解説 

①喉頭の解剖学および運動学


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喉頭は解剖学および運動学的にみて、非常に複雑なつくりになっています。

 

歌うときの喉頭の役割は、母音をつくりだすことが中心となります。声帯唇の振動をコントロールするために、声帯唇自身である声帯筋や、披裂軟骨をコントロールする筋群、甲状軟骨や舌骨の位置を定める舌骨上筋群や舌骨下筋群など、様々な筋肉が協調運動を成して母音を作り出すのです。



そして、このようにして得られた母音に、各咽頭収縮筋や口蓋帆挙筋などを使って咽頭や鼻腔、口腔などを変形させて共鳴腔を複雑多岐につくりだし、さらに歯列や舌を使ってノイズを付加したり響きを変えたりして、子音を作り出します。



それらの一連の動きを、想像を絶する連携の精度と速度を持って持続しているのが「歌う」という動作なのです。

 

②喉頭と頭部の運動学


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“声帯を使う”という一連の動きをイメージできたところで、イメージする範囲を、喉頭という局所から、頭部や胸部へと拡げてまいります。

 

声帯を収めている喉頭の”カプセル”の場所をコントロールする役割の一つとして機能しているのが、舌骨上筋群および舌骨下筋群です。


それらの筋群は、頭部(下顎骨や蝶形骨、側頭骨等)および胸郭(胸骨や鎖骨、肩甲骨)の硬骨に起始や停止を持つので、硬骨同士の相対的な位置関係が、喉頭の随意性の多寡、すなわち声帯の自由度に強く影響を及ぼします。

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つまり、ヴォーカリストとして意識すべきは、声帯そのものだけではなく、歌唱時の全身の姿勢を俯瞰的に捉えるという意識が不可欠となります。

 

2.声帯の動画と解説


ヴォーカリストにとって、声帯はとても意識されるものですが、実際に声帯が振動しているところを見たことがあるヴォーカリストは少ないものです。

 

最近ではインターネット上の動画共有サイト等により、そのような画像は急速に身近になってきましたが、まだまだ一般的とはいえない状況にあります。

↑↑エアロスミスのボーカル「スティーブン・タイラー」の声帯に関する動画です。ぜひご覧ください。


声帯そのものは150〜200回/秒もの速さで振動するため、ハイスピードカメラを使わない限りは本当の動きを見ることはできません。


日常的に声帯を使っているヴォーカリストには、声帯を本格的に長期間休めることは困難です。であるからこそ、歌唱する際のウォーミングアップやクールダウンはもちろん、普段暮らしている環境やレッスン室の環境をしっかりと見直すことも、声帯のケアにつながります。

 

音楽家が身体の知識を持つことしてさらに上達する

海外と比べて身体についての馴染みが薄い日本においては、音楽家自身が積極的に身体の知識を持つことにより、さらに上達を目指せる「伸びしろ」が多く残されています。


中学や高校の吹奏楽部や一部のプロ奏者の間において、体育会系の筋力トレーニングや華々しい上達マル秘テクニックがもてはやされているのが日本の現状ですが、それらにも増して「身体の知識を持つ」ことで、長く健康に音楽活動を続けることが可能になるのです。我々のような医療専門職の知識は、さまざまな分野に応用ができますし、また求められてもいるのです。


是非お持ちの知識と経験を、お求めの方々のお手元に、それにふさわしい形でお届けできるよう、日々の弛まない学びと、夢を共にする仲間との切磋琢磨をお続けください。
 

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解剖学・運動学的にみた「歌う」ということ【理学療法士|山本篤先生】

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