今月3日、厚生労働省にて社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、全国リハビリテーション医療関連団体協議会(日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会も含まれる)が「令和3年度 介護報酬改定に関する要望」を提出した。
▶︎ https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000655198.pdf
Ⅰ.退院前カンファレンス参加加算(仮)の新設
(対象:通所・訪問リハビリテーション事業所)
入院・入所中の患者において、退院後に利用が予定されている通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションの医師、 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が退院前カンファレンス等の直接の話し合いの場に参加した際の加算を新設する。
導入の意義
・実績指数の導入により在院日数が短縮している回復期リハビリテーション病棟退院後患者において、退院後リハビリ テーションの課題や目標、実施プログラムがスムーズに伝達できること、また退院後速やかに生活期リハビリテーションが開始できることが望ましい。
・これらの状況から、退院前カンファレンス等で直接の情報交換を促す仕組みが必要と考えられる。
要望理由
・回復期退院後にリハビリテーションが開始されるまでのタイムラグは以前より課題になっており、入棟中に退院前カンファレンス等による直接の話し合いが行われた方が通所・訪問リハビリテーションが早期に開始されている。
・入棟中に退院前カンファレンス等による直接の話し合いが行われた方がリハビリテーション計画がス ムーズに引き継がれている。また退院後早期にリハビリテーション が開始された方がその後のADL向上が大きい。
Ⅱ.1専門職配置や加算算定率等を基準化した総合的な報酬体系の構築
基本報酬に「専門職配置」「加算算定率」「社会参加」等を含めた総合的なリハビリテーション の評価を導入して、介護老人保健施設の基本報酬と同様の構造としてはどうか。同時に要支援と同様の「規模別」「提供時間別」でない算定構造としてはどうか。
大規模事業所は良質なサービスを提供しているため、減算を廃止してはどうか。
要望理由
現在の報酬体系が、以下のように非常に複雑かつ基本単位への積み上げ式であるため、 利用者や家族、介護支援専門員等の関係者の理解が進まない。また基本報酬のリハビリ テーションとしての評価が乏しいために、自立支援を促すインセンティブが少ない。
Ⅱ.2 活動・参加に向けたリハビリテーション専門職配置の拡充
通所リハビリテーションにおいて、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3職種配置(常勤換算人数で規定)している 施設及び事業所を評価すること。
要望理由
厚生労働省統計(平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況)によると、通所リハビリテーション事業所は8,114件(常勤換算人 数:理学療法士1.55人、作業療法士0.75人)と専門職種の配置は一定の割合に達し、日本理学療法士協会の調査では、3職種配置 している事業所の割合は27%である。
○ また、3職種配置している通所リハビリテーションおいては、各加算の取得率が高いと示唆されている。
○ 老人保健施設、通所リハビリテーションにおいて、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の機能が発揮できるリハビリテーションの提供体制の 構築が必要である。
Ⅱ.3 社会参加・重度化防止等に向けた事業所評価の対象者の見直し
社会参加支援加算の対象者を要支援者とし、地域活動への参加を促してはどうか 事業所評価加算の対象者を要介護者とし、維持向上に向けた取り組みを促してはどうか。
要望理由
・「社会参加支援加算」は、対象期間中の新規・終了者数や適切な終了者数割合、 終了後も安定していること等を評価するものであるが、要支援者は計算に含まれない。 本来は要支援者こそ、このプロセスが必要である。
・一方「事業所評価加算」は、対象期間に利用者が維持・向上した割合で評価するもの であるが、対象は要支援のみであり要介護者は除外されている。本来であれば要介護者 こそ状態を維持・向上させることが重要であり、報酬上評価すべきである。
Ⅱ.4 短期集中個別リハ実施加算や生活行為向上リハ実施加算の弾力化
短期集中個別リハビリテーション実施加算や生活行為向上リハビリテーション実施 加算の弾力化して、集中的なリハビリテーションを提供可能としてはどうか。
現行の課題
短期集中個別リハビリテーション実施加算の対象については、退院・退所、初回 認定日から3ヶ月以内とされ、集中対応の必要な対象者は含まれていない。 通所リハビリテーション利用者の集中的なリハビリテーションの提供については、利用 中の対応時間を増やす、居宅訪問を追加する等、事業所側の負担により対応す ることが多くなる。
Ⅲ.1 訪問リハビリテーションにおけるリハマネジメント加算の評価
訪問リハビリテーションにおけるリハ診察の評価が十分でないため、訪問リハにおけるリハマネジメント加算Ⅱ~Ⅳに関して、通所 リハと同様の比率でプロセス毎の上げ幅に対応していただよう要望する。
要望理由
・通所リハにおけるリハ計画書の作成は、Ⅰと比較しⅡにおい て多くの時間を要しており、訪問リハも同様と推察される。
・通所リハにおけるリハ会議は、Ⅰと比較しⅡにおいて多くの時間を要しており、訪問リハにおいても 同様と推察される。
Ⅲ.2 訪問リハ計画診療未実施減算研修修了等期間の延長と研修団体の拡大
①減少傾向にあるが、事業所医師の不足等により訪問リハ計画診療未実施減算による訪問リハが一定数提供されている。訪問リハ事業 所の診療体制が十分に整っていないことから、訪問リハ計画診療未実施減算研修修了等期間を延長して頂きたい。
② 別の医療機関の医師が、訪問リハ計画診療未実施減算のための適切な研修の受講をできない状況があり、日本医師会の研修のみで なく他団体の研修も要件として頂きたい。
要望理由・課題
①訪問リハ事業所医師の計画診療は外来通院による診療が多く、他医療機関からの情報提供併用が4割程度となっている。訪問リハ計画診療未実施減算の割合 は減少傾向にあるが、令和3年3月までに事業所医師の診療体制を改善させることは難しく、研修要件等の制約のない訪問看護Ⅰ5へ移行するケースが増加す る可能性がある。また、コロナ禍により適切な研修受講終了が遅延する可能性も高いことから期間延長は必要である。
②「かかりつけ医機能研修」の日程に合わせることや事業所医師の不足などありなかなか受講できないケースがある。研修受講を促すために他団体の研修も要件に入 れることで受講しやすい環境を設定する必要がある。
Ⅲ.3 訪問リハビリテーション費における退院(所)直後3ヶ月の回数制限の緩和
在宅生活を早期に安定させるために、医療保険と同様に退院(所)直後の3ヶ月間は1週間に12回まで算定可能として 在宅生活へのソフトランディング機能を強化していただきたい。
要望理由・課題
①退院・退所直後は、在宅での生活が病院・施設と大きく異なりADL低下を引き起こしやすいため病院・施設と同様の回数 を一定期間行い状況に合わせて漸減し生活を安定させる。 ② 急性増悪で状態が低下した際、回数を増加させることでADLの改善は図れ、回数を戻すことでADLの改善は緩徐となる。
③ 短期集中日数と訪問リハ回数は相関しており、短期集中が増えれば訪問リハ回数は増え、短期集中が減少すれば訪問リ ハ回数は減少する。短期集中後、回数を増加したまま継続することは少ないと思われる。
Ⅳ.1 計画書等の様式の簡素化および統一化
1.通所リハ・訪問リハ計画書について、Excel形式にて(特に初回)は手間がかかるため、簡便に入力できる形式の ものを配布してはどうか。
2. 初回の通所リハ・訪問リハ計画書については、統一書式以外であっても退院前のリハ計画書を暫定的に使用できる などの柔軟な運用ができるようにしてはどうか。
3. 運動器機能向上等の各種加算の様式を事業所独自で作成するため、他の事業所との互換性がなく、情報共有 に手間がかかるためその様式例をしめしてはどうか。
4. 書類や手続きのほとんどが紙媒体のため、計画書を含む書類や署名・捺印等をIT化してはどうか。
要望理由・課題
①医療保険でのリハ計画書との統一様式になり利便性は上がったが、情報量が過度に多く手間がかかる上、利用 者への説明の際は文字が小さすぎるため拡大した書類を別途用意する必要がある。またExcel形式で作成のため、 システムとの互換性に乏しい。
② 回復期リハ病棟で一般的に使用されているリハ計画書と比較して情報量が過度に多く、入院中に本様式があまり 使用されていない。特にIADLについての入院中の評価は難しく、慣れない項目への記入となり混乱している。「情 報量の削減により入力負担を軽減」「回復期病棟等を退院後に通所リハ・訪問リハを利用する場合、統一書式 の使用により、回復期病院等に診療報酬上のインセンティブを付与」ということが考えられる。
③ 書類等のIT化については、今般の新型コロナウイルス感染症対策上からも有用と判断される。
Ⅳ.2 VISITデータ提供加算の創設
① VISITデータを提供するリハマネ加算Ⅰ、Ⅱにおいてもデータ提供の加算を創設して頂きたい。
② VISIT提出書類の緩和を検討して頂きたい。
要望理由・課題
① リハマネ加算Ⅰ、ⅡにおいてはVISITデータを提出しても加算算定ができない。
② VISITデータは提出方法も煩雑で業務負担が大きく初回の入力には1時間以上を要している。
③ VISITデータ提供加算が算定できれば50%以上の事業所が参加を希望している
Ⅴ.1 老健施設におけるリハビリテーション専門職の配置の評価
老健入所者に対する個別リハにおいて、最低3名以上のリハ専門職を配置した場合、これを評価する。
要望理由
老健施設は在宅復帰機能の充実が求められているが、そのための個別リハへの評価が不十分であることや質の高い対応をするためのリハ専門職の 配置基準が不十分である。下図より、在宅復帰率・病床回転率の高い基準である超強化型、在宅強化型はリハ専門職の配置が5名以上である 率が高いことから、最低3名以上の配置が望ましい。
Ⅴ.2 介護医療院、介護療養型医療施設、介護老人保健施設に おける離床を促すための取組に対する評価
介護医療院、介護療養型医療施設、介護老人保健施設の入所者(障害高齢者の日常生活自立度ランクCの入所)に 対し、医師の医学的管理下における離床の取組等を実施し、ADLが維持・向上した場合、新たな評価をいただきたい。
要望理由
〇重度障害高齢者への尊厳の保持には、最低限の座位生活が維持されることが重要である。離床におけるリスクを考慮した医学的管理下での良肢位の座位生 活は、寝たきり状態による廃用症候群を防止することはもちろん、嚥下障害を改善し、認知機能にも良い影響を与え、自発性を高めることが知られている。
〇介護保険施設の入所者は要介護5が45.8%、要介護4が39.2%と85%を占め、ほとんどの者が車いす生活と考えられる。
〇「平成28年度 介護保険施設における寝たきりゼロのためのリハビリテーションの在り方に関する調査研究事業」、及び「令和元年度 長期療養を目的とした施 設におけるリハビリテーションの在り方等に関する調査研究事業」より、医師、リハビリ専門職と看護職、介護職が協働して、環境調整、リハビリテーション・機能 訓練等の提供によって離床頻度・時間は増加・確保されることがわかっている。
Ⅵ.1 通所介護等との連携の評価
通所リハ等への報酬設定により、地域で専門職人材を活用しやすくなるのではないか。 通所介護等の自立支援に向けたサービスの質的向上が見込めるのではないか。
現行の課題
生活機能向上連携加算では、通所リハビリテーション事業所、訪問リハビリテーショ ン事業所、医療提供施設から通所介護へリハ職員を派遣。一方で派遣した側に 報酬設定がされていないために依頼しにくい。 通所リハビリテーション事業所、訪問リハビリテーション事業所、医療提供施設の職 員派遣又は計画書の作成等の連携を評価されていない。
Ⅵ.2 自立支援型ケアマネジメントを推進するための居宅介護支援 事業所とリハビリテーション専門職のチーム体制の構築
現行の生活機能向上連携加算に定める助言を受けた上で計画を作成する事業所に、居宅介護支援事業所を追加すること
要望理由・課題
○ 平成30年度介護報酬改定では、自立支援・重度化防止に資する介護を推進することを目的に、生活機能向上連携加算の見直しが行われ、 訪問・通所介護事業所等ではリハビリ専門職・医師の助言(アセスメント・カンファレンス)を受けたうえで介護計画を作成することが評価された。
○ 高齢者の自立した生活を実現するためには、退院時や状態変化時の速やかで効果的な自立支援型ケアマネジメントが重要であることから、こ れまでも居宅介護支援における医療と介護の連携を強化し、質の高いケアマネジメントを推進するための制度改正が行われてきた。
○ 今後さらに、自立支援・重度化防止に資する介護を推進するためには、生活機能向上連携加算における介護職とリハビリ専門職との連携と同 様に、介護支援専門員(ケアマネジャー)とリハビリ専門職がチームとなり、速やかに自立支援型ケアマネジメントを実施することが有効と考える。
Ⅵ.3 リハビリテーション専門職のアウトリーチ機能の強化に向けた 生活機能向上連携加算の連携施設拡大
現行の生活機能向上連携加算に定める、訪問リハビリテーション若しくは通所リハビリテーションを実施している事業所又はリハ ビリテーションを実施している医療提供施設に認可病床数が200床以上の病院を加えること
要望理由・課題
○ 平成27年度介護報酬改定では、自立支援・重度化防止に資する介護を推進することを目的に、リハビリ専門職が助言(アセスメント・カンファ レンス)を行う生活機能向上連携加算が新設され、介助方法や目標等の助言が行われている。
○ 日本理学療法士協会が実施した訪問および通所リハビリテーション事業所対象の調査では、本加算にかかる他事業所からの依頼を断った事 業所のうち、訪問および通所リハビリテーション事業所の約5割が「外部派遣できるマンパワーがない」ことを断りの理由に挙げており、本加算の普 及を阻害する要因となっている。
○ 本加算は、リハビリ専門職が利用者の身体の状況等の評価及び個別機能訓練計画を作成することと定められており、所属の事業所形態を問 わず、リハビリ専門職は評価や個別機能訓練の計画立案を行えることから、リハビリ専門職が所属する多様な施設が関与できるように見直すこと により、本加算が普及され、自立支援・重度化防止の推進に寄与すると考えられる。