理学療法士がファッションに関わること
川崎市にある障害者施設に勤めました。元々小児をみたくて働いていましたが、障がい者はリハビリして身体機能が改善しても、生活が変わりにくい。
リハビリにジレンマを感じたことが、車いすファッションプロデュースを始めたきっかけです。障がい者、特に車いすユーザーの方は褥瘡や変形、緊張などにより洋服の制限があります。
着替えやすいスウェットやジャージー素材、褥瘡予防のための幅の広いスニーカーなどを身につけがちです。でも本当はおしゃれをしたい、女の子らしい格好をしたい、という想いを、誰にも言えないけれど心の隅に抱いている。
「好きなものを選択して欲しい。」「洋服を通して自分に自信を持ってほしい」と思いました。そして結果として、外に出るきっかけになってもらえたらなと思っています。
車いす用の洋服は、そのほとんどが高齢者向けですね。 “着たいよりも着せやすい服”になっていて介助者目線です。デニム素材だけど褥瘡にならないようにお尻の部分だけスウェット生地だったり。
「あなたが着たいですか?」と思うような洋服が並んでいます。
オシャレでなおかつ機能性のあるファッション
車いす専用のお洋服は少なくても、街に出ると車いすの人でも着やすい洋服はたくさんあります。海外のファストファッションはサイズ展開が多く、オシャレでウエストがゴム素材のパンツ等も豊富。
ルミネ・パルコなど、私たちが買い物に行くお店に、実はたくさんオシャレで機能的なお洋服はあるんです。車いすユーザーの洋服の悩みは、聞いていくと障がいに関わらず共通点があります。
その悩みを解決できる洋服を、シーズンごとに流行を取り入れて伝えています。例えば、車いすユーザーさんは姿勢のポジションが低いので、上から見られると胸元が気になるんです。
今シーズンは流行のボトルネック(首つまりデザイン)を紹介しました。また近年スニーカーが流行り、様々なデザインが出ているので、「尖足にはこういうデザインが良いですよ」なんてアドバイスもします。
好きなファッションもQOL
ファッションが好きな人というより理学療法士でファッションが好きな人という方が信頼されます。特に靴のこととか障がい特性などですね。
イベントに参加してくれやすいように感じています。理学療法士がいると安心感があるみたいです。そこは免許を持っていて良かったと思います。
私は普段のリハビリの時もファッションについて聞きます。着物を着る必要がありますか?とかスカートを履きたいですか?など。ファッションの嗜好によって、その人に必要な歩き方も姿勢も変わります。
最近は着物を着て草履を履く必要のある方と歩き方の練習をしました。病院にいても問診で服装のことはあまり聞かないですよね。
着たい服を着て、履きたい靴を履いて、行きたい場所へ出かける。それが、その人らしい生き方だと考えます。目の前の患者さんにとって必要なことは、ただ安全に歩くことではなくて、その先にあるのではないかなと思います。
次のページ>>オシャレが体幹トレーニングに
岡野菜摘先生経歴
『大好きな服を着て 大好きな人と 大好きな場所へ』をモットーに、理学療法士の知識と技術をファッションに混ぜ込みながら、ブログで発信。
また、デザイナーの鈴木綾と共に、イベント『車いすでお買い物ツアー』を実施中。外出のきっかけ作りや、仲間作りを、ファッションを通して創造している。
選択肢を増やし、自ら選択することの楽しさを伝えることで、車いすユーザーが、自分らしく生きることのできる社会を目指す。
ブログ:「あのモデルさんと同じ服が着られた!車椅子女子の表参道ファッション」
HP:「車いすファッションプロデュース」