令和3年度介護報酬改定の主な事項について1月18日、第199回社会保障審議会介護給付費分科会にて発表された。シリーズ第3回目の記事となる今回は訪問リハビリテーションとしていきたい。
大枠は以下の通り。
【基本報酬及び加算】
基本報酬及び長期の介護予防訪問リハビリテーションに係る減算等
【自立支援・重度化防止の取組の推進から】
リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取り組みの強化
・ 計画作成や多職種間会議でのリハ、口腔、栄養専門職の関与の明確化
・ 退院退所直後のリハの充実
・ リハビリテーションマネジメントの強化
介護サービスの質の評価と科学的介護の取り組みの推進
・介護老人保健施設における在宅復帰・在宅療養支援機能の評価の充実
【介護人材の確保・介護現場の革新から】
処遇改善や職場環境の改善に向けた取り組みの推進
・【サービス提供体制強化加算】訪問看護及び訪問リハビリテーションにて現行の勤続年数要件の区分に加えて、より長い勤続年数で設定した要件による新たな区分を設ける。
訪問リハビリテーションの介護報酬改定の主軸と見通し
改定の主軸は、今まで以上に事業所直属医師との連携強化・他事業者との連携強化をして、ADL自立度向上を求めるものとなっている。その他、長期化する介護予防訪問リハビリテーションの必要以上の介入を抑止等が含まれたものとなった。
細かな改定を考慮すると、よく理解していればかゆいところに手が届く、柔軟性も加わった改定と捉えることも可能といえる。それでは、基本報酬から整理していく。
基本報酬及び加算
訪問リハビリテーション費
・292単位/回 → 307単位/回(新)
・移行支援加算(旧:社会参加支援加算)→ 17単位(変更なし)
介護予防訪問リハビリテーション費
・292単位/回 → 307単位/回(新)
・利用者に対して、介護予防訪問リハビリテーションの利用を開始した日の属する月から起算して12月を超えて介護予防訪問リハビリテーションを行う場合は、1回につき5単位を所定単位数から減算する(新設)
(共通項目)事業所の医師が計画の作成に係る診療を行わなかった場合の減算
リハビリテーション計画の作成にあたって事業所医師が診療せずに「適切な研修の修了等」をした事業所外の医師が診療等した場合に適正化(減算)した単位数で評価を行う、
診療未実施減算について、事業所の医師の関与を進める観点から、以下の見直しを行う。(告示、通知改正)
20単位減算/回 → 50単位減算/回(新)
・事業所外の医師に求められる「適切な研修の修了等」について、令和3年3月31日までとされている適用猶予措置期間を3年間延長する。
リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取り組みの強化
① 計画作成や多職種間会議でのリハ、口腔、栄養専門職の関与の明確化
・加算等の算定要件とされている計画作成や会議について、リハ専門職、管理栄養士、歯科衛生士が必要に応じて参加することを明確化する。(通知改正)
※この他、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する各種計画書(リハビリテーション計画書、栄養ケア計画書、口腔機能向上サービスの管理指導計画・実施記録)について、重複する記載項目を整理するとともに、それぞれの実施計画を一体的に記入できる様式も作成。
② 退院退所直後のリハの充実
・週6回を限度とする訪問リハについて、退院・退所直後のリハの充実を図る観点から、退院・退所日から3月以内は週12回まで算定可能とする。(通知改正)
③ リハビリテーションマネジメントの強化
自立支援・重度化防止に向けた更なる質の高い取り組みを促す観点から、訪リハ・通リハのリハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)を廃止し、基本報酬の算定要件とする。VISITへデータを提出し、フィードバックを受けPDCAサイクルを推進することを評価する取組を老健施設等に拡充する。(告示修正)
【リハビリテーションマネジメント加算】
<現行> <改定後>
加算(Ⅰ) 230単位/月 →(廃止)
加算(Ⅱ) 280単位/月 → リハビリテーションマネジメント加算(A)イ 180単位/月
リハビリテーションマネジメント加算(A)ロ 213単位/月(新設)
加算(Ⅲ) 320単位/月 → リハビリテーションマネジメント加算(B)イ 450単位/月
リハビリテーションマネジメント加算(B)ロ 483単位/月
加算(Ⅳ) 420単位/月 → 廃止(加算(B)ロに組み替え)
〔算定要件〕
<リハビリテーションマネジメント加算(A)イ>※現行のリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)と同様
①医師はリハビリテーションの実施にあたり、詳細な指示を行うこと。さらに医師の指示内容を記録すること。
②リハビリテーション会議(テレビ会議可(新設))を開催して、利用者の状況等を構成員と共有し、会議内容を記録すること。
③3月に1回以上、リハビリテーション会議を開催し、利用者の状態の変化に応じ、リハビリテーション計画書を見直すこと。
④PT、OT又はSTが、介護支援専門員に対し、利用者の有する能力、自立のために必要な支援方法及び日常生活上の留意点に関する情報提供を行うこと。
⑤PT、OT又はSTが、(指定居宅サービスの従業者と)利用者の居宅を訪問し、その家族(当該従業者)に対し、介護の工夫に関する指導及び日常生活上の留意点に関する助言を行うこと。
⑥リハビリテーション計画について、計画作成に関与したPT、OT又はSTが説明し、同意を得るとともに、医師へ報告すること。
⑦上記に適合することを確認し、記録すること。
<リハビリテーションマネジメント加算(A)ロ>
・加算(A)イの要件に適合すること。
・利用者毎の訪問リハビリテーション計画書等の内容等の情報を厚生労働省に提出し、リハビリテーションの提供に当たって、
当該情報その他リハビリテーションの適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。(CHASE・VISITへのデータ提出とフィードバックの活用)
<リハビリテーションマネジメント加算(B)イ> ※現行のリハビリテーションマネジメント加算(Ⅲ)と同様
・加算(A)イの①~⑤の要件に適合すること。
・リハビリテーション計画について、医師が利用者又は家族に対して説明し、同意を得ること。
・上記に適合することを確認し、記録すること。
<リハビリテーションマネジメント加算(B)ロ> ※現行のリハビリテーションマネジメント加算(Ⅳ)と同様
・加算(B)イの要件に適合すること。
・ 利用者毎の訪問リハビリテーション計画書等の内容等の情報を厚生労働省に提出し、リハビリテーションの提供に当たって、
当該情報その他リハビリテーションの適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。 (CHASE・VISITへのデータ提出とフィードバックの活用)
(※)CHASE・VISITへの入力負担の軽減やフィードバックにより適するデータを優先的に収集する観点から、
リハビリテーション計画書の項目について、データ提供する場合の必須項目と任意項目を設定。(通知改正)
介護サービスの質の評価と科学的介護の取り組みの推進
介護老人保健施設における在宅復帰・在宅療養支援機能の評価の充実
【介護老人保健施設】居宅サービス実施数に係る指標において訪問リハビリテーションの比重を高くする。
処遇改善や職場環境の改善に向けた取り組みの推進
【サービス提供体制強化加算】
訪問看護及び訪問リハビリテーションにて現行の勤続年数要件の区分に加えて、より長い勤続年数で設定した要件による新たな区分を設ける。
旧
サービス提供体制強化加算 6単位
(加算要件)
訪問リハビリを直接提供するPT/OT/STに、勤続3年以上の者がいること
新
サービス提供体制強化加算(Ⅰ) 6単位(新設)※算定要件 イ 勤続7年以上1人以上
サービス提供体制強化加算(Ⅱ) 3単位(新設)※算定要件 ロ 勤続3年以上1人以上
※いずれか一つのみを算定可能
以上が訪問リハビリテーションに係る改定のまとめとなる。訪問リハビリテーションにおいても、訪問看護と同様に介護予防訪問リハビリテーションの期間による減算が行われた。
基本報酬・リハビリテーションマネジメント加算の改定の主軸は事業所医師との強い連携と関連職種との連携強化と考えられる。特に、事業所の医師が行う診察・説明や同意等が細かく具体的なことで、利用者のADL向上に優位な差を認めたとする解釈資料等もあるため、より改定の後押しとなったと考えられる。
実態的には医師の時間が割かれる部分に課題を残している事業所が多い中、連携を強化する改定としたことで、自立度向上の成果を更に求めたい改定といえる。
社会参加支援加算は移行支援加算に名称が変更となったが、平成29年の調査において届出事業所が19%にとどまっている。事業所側からは取得をしない理由が様々集まっている実態もあり、各事業所で再整理をされたい。
退院後の集中的なリハビリテーションの介入が可能になった点については、在宅での実生活において切れ目のないサービスの提供が可能になるメリットがある。一方、介護保険制度内での集中的なサービス自体が現実的に可能か考える必要もある点に注意が必要といえる。
上限単位数を考えれば月内日数の残が多いタイミングではすぐに訪問リハで単位を取得しきってしまうことにもなりえるだろう。介護老人保健施設の評価指標の変更も含め、退院・退所日を考慮し活用することで最大効果が得られるのではないだろうか?
改定の捉え方を柔軟にすることで、活きる改定となったと言える。
【目次】