今回も三輪書店様よりご献本いただきましたので、勝手に書評しようと思います。今回の書籍は「運動器の傷害と機能障害―その病態とメカニズム」です。参考書で個人的に注目するのは、帯に書かれている文言です。
有名人の推薦文もありますが、ここに書かれるコピーは著者の想いが集約されていると考えています。本書の帯には「メカニズムを基盤としたリハビリテーション医療」と書かれており、この点を頭に入れた状態で本書を拝見しようと思います。
それでは具体的な内容に迫っていきましょう。
タイトルから読み解く
参考書で重要な点として、先ほどお伝えした帯もさることながら、タイトルも個人的には重要です。おそらく編集者の方々、著者の方々においても頭を悩ませるところだと思います。
本書のタイトルでは「傷害」も文字が使われ、「障害」という言葉の前に「機能」を用いています。これは本書を読み進めていくと分かりますが、運動器を理解するために必要な学問の垂直統合が行われていると感じます。
我々が行う、リハビリテーション医学において基礎医学(解剖学、生理学、運動学その他)が重要であることは言うまでもありません。しかし、参考書を見てみるとそのほとんどは、生理学が抜けていたり、解剖学が抜けていたり、運動学が抜けていたり。
中には、運動学のみで押し切る参考書もあります。つまり、独立した学問で一つの現象を捉えた参考書に対して、各学問を統合して病態やメカニズムを解説した、実は他にはない書籍であると感じています。
その理由に、次に語る内容が関わってきているのだと思います。
15章への想い
参考書では、「帯」「タイトル」の他に必ず読む部分として「序章」があります。ここには、出版に至るまでのストーリーや著者の想い、裏話が書いてあるため、個人的にお気に入りの部分です。強いて言うと、このような著者、編集者、出版社の想いを事前に理解した上で読み進めると、参考書の見え方は180°変わるものだったりします。
本書の「序」でも、著者のエピソードが描かれており、個人的に気になった点は本書「15章立て」の理由についてです。本書は、講義の設定時間数である90分15コマを想定しており、15章となっています。
つまり、ここに書かれている内容は学生のうちから理解しておいて欲しい内容であるとの想いが感じられます。私が受けた教育では、それぞれの学問をバラバラに学んだ結果、実習や臨床に立ってから知識を統合していく作業が必要でした。
そんな教育システムの課題を解決するための方法が本書には書かれていると思います。一つの学問で全てを理解することはできません。本書を通して、学問のつながりを意識した学びを体感されてみてください。