本日は、Medical Rehabilitation No.260で「リハビリテーション治療の進歩と社会復帰支援」を執筆されました後藤博様よりご献本いただきましたのでご紹介いたします。
誰得制度
今回のテーマは「脳卒中患者の社会復帰を支える」として、後藤さんは当事者の視点で執筆されています。当事者を支える支援には様々な制度はあれど、複雑で全てを理解しているとは言いにくい。医療従事者にとっても理解が難しい制度は、患者とその家族にとってはよりハードルが高いものとなります。
一般社会では、プロダクトアウト、マーケットインという言葉が用いられますが、まさに制度設計がユーザー目線で作られたものとは言い難いものも多く存在します。どこか、「制度は用意した。あとは好きにやってくれ」と言わんばかりに感じることでしょう。
では、患者とその家族はどのような支援を必要としているのでしょうか?今回はこの点に関して、現行制度の問題点を患者とその家族視点から説明され、その問題点に対する改善策が述べられています。
目次
脳卒中患者の社会復帰に向けた支援:德弘 昭博
機能的ゴール決定の道筋とそれにふさわしい生活の場の決定,特に職業復帰への支援制度への理解は脳卒中のリハビリテーション医療のアウトカムの向上に役立つと思われる.
リハビリテーション治療の進歩と社会復帰支援:伊藤 英明ほか
脳卒中患者の社会復帰を支えるリハビリテーション治療の方法として経頭蓋直流電気刺激療法,CI療法,ボツリヌス療法について概説する.
脳卒中患者が期待する共生社会:後藤 博ほか
筆者は脳卒中を発症してから社会復帰する前後で様々な患者・家族,支援者と交流してきた.そこから感じ得た私見を交え,当事者の立場から地域共生社会への期待を概術する.
脳卒中後の社会復帰における困りごと―患者会アンケート調査より―:秋山 美紀ほか
治療や制度が分化され一貫した支援が得にくいこと,地域リハビリテーションの不足,職場や社会の理解の不足などが,脳卒中患者の社会復帰の隘路になっていた.
社会復帰を支える社会資源:藤井由記代
患者・家族の生活課題は多岐にわたるため,生活課題の解決には複数の機関による支援ネットワークの構築が必要となる.本稿ではよく活用される社会資源を紹介する.
高次脳機能障害のある方への社会復帰支援:渡邉 修
脳卒中によって生じる高次脳機能障害は社会復帰を阻害する大きな要因である.医療職は,高次脳機能障害者に生じるニーズを聞き取りながら,患者を支援する家族を含めた包括的なリハビリテーション治療を組み立てていく必要がある.
失語症のある人への意思疎通支援―失語症者向け意思疎通支援者養成事業の概要と福岡県での経過―:佐藤 文保ほか
2018年より失語症のある人への公的な支援事業として失語症者向け意思疎通支援者養成事業が始まった.社会参加促進を目的とした事業の概要と課題,福岡県での取り組みについて述べた.
自動車運転再開の可否判断と問題点・注意点:加藤 徳明
「高次脳機能障害者の自動車運転再開の指針(Ver.3)」を紹介する.合併症の有無や後遺症の程度を十分に把握し,失語症や半側空間無視患者では慎重に判断をする必要がある.
中途障害者における就労継続支援体制の現状と課題:八重田 淳
中途障害者の医療リハビリテーションから職業リハビリテーション,そして社会復帰に至るまでの継続的な支援の流れを学ぶ.
治療と仕事の両立支援におけるリハビリテーションの役割―両立支援コーディネーターの視点から―:佐藤さとみほか
治療と仕事の両立支援における医療機関と事業場の協働は,脳卒中後の復職に欠かせない.事業場が求める医療機関からの情報とリハビリテーションの役割について述べる.