本件のポイント
- ・認知症はがんに比べて、生活上の問題や法的な問題、感情的・社会的影響についてより恐れられている。
- ・認知症の有病率は実際よりも過大評価されている。
- ・自分が認知症になった時はできるだけ早く知りたいが、配偶者の場合はそうではないことも少なくない。
本件の概要
保健学研究科の大庭輝准教授らが、国内の大学病院の通院患者及び同行者およそ200名を対象に認知症に対する態度や一般的な認識、診断された場合の意向について調査した研究がBMC Health Services Researchに5月3日に掲載された。
最も恐れられている疾患はがんであり、認知症は2番目に恐れられている疾患であった。ただし、認知症はがんに比べて生活上の問題や法的な問題、感情的・社会的影響について、疾患を恐れる理由として多く挙げられていた。認知症の有病率に対する認識は、平均で65歳までに18.1%、85歳までに43.7%が認知症になると回答され、実際の有病率である1.5%(65-69歳)と27%(85歳)に比べて過大評価されていた。認知症になった時にできるだけ早く診断を知りたいと回答した割合は、自分の場合には95.9%であったが、配偶者の場合では67.5%に減少した。配偶者の認知症の診断を知りたくない理由として「できる限り普段通りに生活するため(75.5%)」、「不必要な心配を避けるため(73.6%)」が多く挙げられた。
これらの結果を踏まえて、認知症に関する啓発が必要であること、医師は認知症の診断について本人や家族と話し合うこと、診断に伴う様々な心理社会的影響を和らげるためのサポートが重要であることが提言された。
論文に関する記事はHealthDayJapan(http://healthdayjapan.com/2021/07/05/41529/)から複数のメディア媒体に配信された。
論文
Oba et al. (2021). Attitude toward dementia and preferences for diagnosis in Japanese health service consumers. BMC Health Services Research, 21, 411.
https://bmchealthservres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12913-021-06381-9
共同研究者
京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学
松岡 照之
加藤 佑佳
成本 迅
Health Behaviour Research Collaborative, School of Medicine and Public Health,Faculty of Health and Medicine, University of Newcastle
Rochelle Watson
Elise Mansfield
Rob Sanson-Fisher
詳細▶︎https://www.hirosaki-u.ac.jp/57872.html
注)紹介している論文の多くは、単に論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎません。論文で報告された新たな知見が社会へ実装されるには、多くの場合、さらに研究や実証を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。