【文字起こし】非特異的腰痛症に対する理学療法ー骨盤帯および脊柱正中化の理論と実際ー

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骨盤帯及び脊柱の非対称性に対する疫学と臨床

脊柱と骨盤帯については、解剖学的に非対称性であるという報告が良くなされております。こちらの報告(Christophe Boulay,2006)が献体標本での骨盤非対称性に対する三次元的な解析です。3事例ほどを使っての報告なのですが、横断面、矢状面、前額面ともども全ての面で検討されておりまして、結果的に言えば腸骨は左右非対称性であるということです。特に形状的に有意な差があるということで、腸骨稜の高さは左が右よりも高いという報告が出ております。

グラフ1 有意な非対称変数に対する左右の相関係数

1,仙腸関節-寛骨(角度)、2,後内側腸骨バットレス、3,頭蓋骨-寛骨、4,前内側腸骨バットレス、5,翼仙骨/骨盤幅、6,寛骨軸、7,ヒルゲンレイナー角、8,中上部腸骨バットレス。9,仙骨-寛骨(長さ)、10,腸骨稜の方向、11,Wibergの中心-端角、12,大軸孔、13,翼腸骨の傾斜、14,恥骨結合(高さ)、15,腸骨稜-寛骨頂部。

骨盤帯のCT像を使っての解析です。この結果以下の通り、約53.3%と半数以上で右の骨盤帯が左に比べて小さいという報告がなされております。


【対象と方法】(Maziar Badii 2003)

・323例の骨盤/腹部のCT像を3人の検者で測定

・骨盤非対称性はCT前後像で両側臼蓋から腸骨稜の距離差

・無作為に選択した30例で検者間での信頼性を検討

【結果】

・骨盤非対称性は-11mmから+7mm(右骨盤-左骨盤)

・5mm以上が17/323例(5.3%)10mm以上が2/323例(0.6%)

・172/323例(53.3%)で右側骨盤帯が小(平均2.1mm)

・3人の検者間に級内相関係数は0.91


脊柱の非対称性に対しても以下のとおり、多くの非対称性の報告がなされています。


【体幹の非対称性】

・Burwell RG,j Bone Joint Surg Br 1983,65:452-463[Pubmed]

・Vercauteren M,spine 1982,7:555-562[Pubmed]

・Grivas TB,Scoliosis 2006,1:19.[scoliosisjournal]

【胸椎椎体右回旋】

・Kouwenhoven JW,Spine 2006,31:1467-1472.[Pubmed]

【胸椎右凸彎曲】

・Goldberg, C. & F.E. Dowling, 1990. Handedness and the convexity of scoliosis: a re-appraisal. Spine 15: 61–64.[Pubmed]

・Taylor JR. Vascular causes of vertebral asymmetry and the laterality of scoliosis. Med J Aust. 1986;144:533–535. [PubMed]


ほとんどが胸椎の椎体は、右回旋・右凸という報告が多く、本邦での土井先生の報告Toshio Doi 2011によると、脊椎や胸郭に異常のない1200例、それを小児期・思春期・成人期各400例ずつ調べてあります。この結果として、上位終椎(彎曲で一番傾きの強い椎体のこと)Th5、下位終椎Th12で多く認められておいます。

 

男女とも同じような軌跡を描いてるんですが、グラフ3のように全て0よりも右側にシフトするいうことから、脊柱は男女ともに右凸傾向にあるという風になされております。これが小児期・思春期・成人期、年齢毎に見ますと年齢によって加齢に右凸が優位に増加してくるという報告がなされています。

脊柱側弯症患者の湾曲範囲

通常の脊椎の側面の曲率の程度

子供(4〜9歳)、青年(10〜19歳)、および成人(20〜29歳)の側面の湾曲の程度が示されています。右側の曲率には正の値が与えられます。(A)は男性を示し、(B)は女性を示します。

Toshio Doi,et al,Right thoracic curvature in the normal spine.J Orthop Surg Res 2011 Jan 14;6:4.doi: 10.1186/1749-799X-6-4.[Pubmed]

私どもが一番臨床で感じる下肢長差、外反母趾だったりとか、膝関節OA(変形性関節症:osteoarthritis略)であるとか、股関節OAによっての下肢長差が骨盤と脊柱に及ぼす影響に対しての報告がなされておりましてこれが正常人での報告(Marcel Betsch 2012)です。プラットフォーム(治療台)の0のところを、赤の点線とすると骨盤傾斜はこの左右差が大きくなればなるほど、骨盤は傾斜大きくなりまして骨盤での回旋に関しても同様に大きくなる。

プラットフォームの高さ(0、5、10、15 mm)の平均骨盤傾斜(SDを含む)(mm)

さまざまなプラットフォームの高さに対する度単位の平均骨盤回旋

Marcel Betsch,Michael Wild,Birgit Große,Walter Rapp,Thomas Horstmann. The effect of simulating leg length inequality on spinal posture and pelvic position: a dynamic rasterstereographic analysis. Eur Spine J 2012 Apr; 21(4): 691–697..[Pubmed]

すなわち骨盤帯の傾斜と回旋というのが、下肢長差が増加すると増加する傾向にあるという風に言われております。脊柱に対する報告を見てみますと、これが残念なことながら前額面・矢状面・皮膚表面の変化で見ても、脊柱の変化はわずか。

脊柱前額面の変化

脊柱矢状面の変化

皮膚表面の変化

まとめると、下肢長差は骨盤帯の傾斜と回旋には顕著な影響を及ぼしますが、脊柱に対しての変化はわずかということになっております。その骨盤帯の左右差に対する触診の信頼性に対するレビューですが、カッパ値※(値が1に近いほど一致度が高い)が0.4以上いちを超える報告はなく骨盤での触診は信頼性が低いという報告になっております。

カッパ係数:ある現象を2人の観察者が観察した場合の結果がどの程度一致しているかを表す統計量


【結果】

・23論文が検索、14論文が診断基準に一致せず除外。

・解剖学的ランドマーク触診評価の信頼性評価を検討。K値は以下の通り

ASIA(上前腸骨棘):-0.01〜0.19

PSIS(上後腸骨棘):0.04〜0.15

ILA(下外側角)水平面:-0.03〜0.11

ILA前額面:-0.01〜0.08

仙骨溝:-0.4〜0.37

腰椎横突起(L1-L5):0.04〜0.17


腰痛群と正常群脊柱での脊柱可動性と非対称性

腰痛歴のない59人の被験者と機械的な片側腰痛54人の患者を人体測定フレームを使用して、立った状態での骨盤の非対称性を測定した研究では、側屈の可動域を健常群と腰痛群で比較すると可動域の絶対値※はほとんど変わらないと報告しています(Al-Eisa E 2006)。ただ、非対称性においては顕著な差がありまして、これは回旋でも同じような報告が出ております。結果的に腰痛群は、可動域の絶対値は変わらないですが、非対称性が顕著であることが報告されています。これは腰痛群の特徴であるとされています。

※絶対値:0からどれだけ離れているかを表す値。

次に、ローテーション関連のスポーツをしなかった腰痛のない41人とローテーション関連のスポーツをした腰痛のある50人を調べた研究で、四肢の動きと腰椎・骨盤の動きを三次元モーションキャプチャーを使用して調べた結果を以下に示します(グラフはデータ参考に作成)。膝の屈曲角度は腰痛群が優位に小さくてその代償として、腰痛群においては骨盤の前傾角が大ききくなっています。股関節の回旋に関しては、外旋角度は腰痛群で有意に大きくて骨盤の回旋角度も大きいという結果が示されました。自動運動の非対称性は腰痛群において顕著であるという報告にまとめられるかと思います。

まとめますと骨盤帯と脊柱の非対称性に関して、解剖学的な疫学を調べてみますと、明らかに非対称性は解剖学的に認められるということになるかと思います。ただそれを鑑別のために、我々が従来用いてきた触診ではその再現性が低いということで、今回自動運動と圧痛点から鑑みた鑑別方法を行っております。

 

骨盤帯非対称性の鑑別方法の実際

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