へし折られた天狗の鼻
千葉先生 シーズンオフ(キャンプ前)に、あるピッチャーが肩を見てくれないかって僕のとこにきました。当時の人はみんな知っているくらいの選手。投球時に肩に違和感があるとのことでした。
以前、その選手がウォーミングアップするのをたまたま見たことがありました。ウォーミングアップのときにダンベルエクササイズをしていたんです。 「やっぱりエースだとそこまでするんだな」「自己管理が出来ているんだな」って感心しました。
そんな先入観を持ったまま、その選手の肩を診てしまったので適切な処置もできず、適切な指示を与えることも出来ませんでした。結果、その選手はキャンプに入っても肩の調子が悪く、遂には投球時に痛みを感じるようになってしまいました。
それ以降、必死に肩の治療をやりましたが、1度だけ痛み無く投球させることが出来ましたが、それ以外は痛みを無くすことはできず。結局、シーズンに入っても痛みは取れず、その年の結果は散々でした。
最後の登板が終わったとき、その選手に「今年肩の痛みが全くなくマウンドに上がれたのはキャンプのときの一回だけだった。」と言われました。 ものすごくショックだったのを覚えています。天狗の鼻を折られました。
その選手に頭を下げて、チーフトレーナーにも頭を下げて、「昭和(昭和大学藤が丘リハビリテーション病院)に一緒にきてください。」と頼みました。そして筒井先生と山口先生に診てもらった。その後は山口先生たちが全面的に協力してくれ、アドバイスをくれながら進めていって最初は上手くいかなかったんだけど、徐々に調子が出てきて痛みなく投げれるようになってきた。
その年はシーズン中に10勝できるまで投げれるようになりました。一番うれしかったのは、復帰して一番最初に勝った試合。もちろん勝ったのがうれしかったんだけど、実はその日は僕の誕生日だったのですが、その選手はウイニングボールを僕にくれたんです。
すごく感動しましたし、努力が報われたと感じた瞬間でした。これがジャイアンツ挫折と喜びを感じた出来事かな。
入谷先生と山口先生からの指導
千葉先生 3年経ってそろそろジャイアンツの中でも仕事をする基盤ができてきてこれからいろいろできるなと思っていた時、山口先生から昭和に戻ってこないかって言われました。正直かなり悩みました。でも、このままずっとジャイアンツのトレーナーとしてやっていってはいけないなという思いはありました。
なぜかというとジャイアンツという枠組みの中で選手を見続けると、診る疾患層というのにすごく偏りが出来てしまいます。当時の僕はいろんな疾患の患者さんをみたいという気持ちはありましたので、かなり悩みましたが、昭和に戻る決心をしました。
戻ってからは、山口先生から肩を学ぶようになりました。入谷先生から足を教わり、山口先生から上肢を教わったこと、これは私の理学療法人生にとって大きな財産です。
スポーツリハをやりたい人 へ
千葉先生 ボクが昭和に入ったときに山嵜先生に「お前は何がしたいんだ?」って言われたことがあって、僕はスポーツリハをしたいって言ったんですが、「うちはスポーツリハをやってないからなあ」って言われました。
当時、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院には既にたくさんのスポーツ選手が訪れていました。スポーツ障害の患者だから特別な事をやるのではなく、整形外科疾患の延長線上中にOAもあれば投球障害もある。
ただ、整形疾患に対する理学療法、を追及するのみ、ということを山嵜先生から教えて頂きました。その教えは、今も僕の基本理念です。
だから、スポーツリハをやりたいって言う人たちには、ベースには整形外科疾患に対するリハビリの経験や技術は必要だと思います。ただチャンスは少ないと思うので、もしチャンスがあればすぐに食いついたほうがいいと思います。
それでチャンスを掴んだ後のことでアドバイスするなら、自分がやりたいことをできる環境になるまでに時間がかかるっていうこと。人間関係・信頼関係を構築して初めて自分のやりたいことが出来てくるので入職した最初は苦労すると思う。そういうことも覚悟する必要がある。
それが一番大事ではないかなと思います。
プロフェッショナルとは
千葉先生 今の自分に満足せず、自分を進化させるために常に新しい知識を求め、技術を研鑽している人。
千葉先生のおすすめする書籍
スティーブ・ジョブズ流のシンプルなプレゼン手法に、日本文化「Zen(禅)」を融合させた世界最新のプレゼンメソッドを【映像(80分)+ビジュアルブック】であますところなく学べます。講師を務めるのは住友電気工業や米アップルを経て独立し、今ではプレゼンの実施や指導における世界の第一人者として知られるガー・レイノルズ氏。
彼の著書『プレゼンテーション Zen』は世界17カ国で発売され、15万部以上の大ベストセラーになっています。
(出典:Amazon.co.jp)
千葉慎一先生経歴
1989年3月 岩手リハビリテーション学院卒業1989年4月 盛岡繋温泉病院入職
1992年4月 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院入職
1995年2月 東京読売巨人軍トレーナー
1998年4月 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院入職
2013年3月 昭和大学大学院保健医療学研究科修士課程修了
2015年1月 昭和大学病院リハビリテーションセンターへ異動
その他
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
日本肩関節理学療法研究会理事