週の真ん中水曜日の江原です。本日は高齢者の痛みについて書きたいと思います。当院のリハビリ科の平均年齢は約70歳で、若い方よりも高齢の方を担当することが多いので高齢者の痛みに対応しているのが常です。以前書いた「【SPOT Writer】痛みとともに生活する高齢者へのリハビリの注意点」も是非参考にしてください。
高齢者が発症しやすい痛みの疾患
日本のような超高齢者社会を迎える国にとって、高齢者の痛みについて考えることは重要です。痛みだけではないですが運動器疾患により寝たきりの原因にもなり、ADL・QOLの低下原因になります。痛みについて学べる「痛みのコアカリキュラム」では、4つの疾患群を提示しています。
筋骨格系の痛み(慢性筋骨格系疾患)
帯状疱疹後神経痛
脳梗塞・脳出血後疼痛
がんの痛み
この中でも当院でリハビリの頻度が多い、筋骨格系疼痛と帯状疱疹後神経痛を取り上げます。
筋骨格系の痛み
厚生労働省の国民生活基礎調査では、男女ともに毎回身体症状の1位か2位にランクインするのが腰痛と肩こりで、関節痛を含め筋骨格系疼痛の主訴は全年齢を通じて多いです。加齢により骨関節系は変性、変形を起こし骨関節疾患を発症しやすくなり増加します。
慢性疼痛の領域では、画像所見で確認できる脊柱や関節変形は痛みの原因にならないという論文がいくつも出されていますが、器質的な疼痛である慢性二次性筋骨格系疼痛の高齢者も多く原因検索と治療がなされています。ペインクリニックだと1度から数回の治療で改善するのは、若年~壮年世代の方で高齢者は治療しても痛みが戻ることが多く定期的に治療を受けています。
このような方に集学的治療の一環としてリハビリが処方されています。またメカニズムは明らかではありませんが、局所から広範囲に拡大しやすい特徴があります。疼痛範囲が拡大する慢性疼痛には末梢神経や中枢神経系がそのメカニズムが関与すると推測されています。
感作の可能性を評価しようと無痛部位の圧痛やCSI(Central Sensitization Inventory)を実施しても、圧痛やCSIの高い値が認められないこともしばしばあり、疼痛強度の増大や疼痛範囲拡大などの痛みアセスメントに悩む場面が多いです。加齢による痛覚閾値の低下、ロコモーティヴシンドロームなどの全身性の運動機能低下、抑うつ、不活動の悪循環の形成が筋骨格系疼痛の重症化に関わると考えられています。従って、局所治療や疼痛部位のみへの介入では限界を感じると思います。