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基礎医学シリーズ解剖学編―外側広筋―

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皆さん、こんにちは。火曜日担当の藤本裕汰です。本日もよろしくお願い致します。前々回は大腿直筋について解説しました。本日は外側広筋に対してスポットを当てて解説していきたいと思います。

解剖学的特徴 

外側広筋は大腿直筋同様に大腿四頭筋の1つになります。大腿四頭筋は人体で最大の体積である大きい筋肉になります。大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋が存在し、多くの場合は3層構造になっています1)

外側広筋は共同腱(大腿四頭筋腱)の外側に連続する外側広筋長頭と膝蓋骨外側ならびに外側膝蓋支帯に連続する外側広筋斜走線維に分けられます2)。そのため、膝関節の伸展のみではなく膝蓋骨の動きにも大きく関与します。起始・停止や作用に関しては以下の様になります。

外側広筋の特徴

外側広筋の特徴としては大腿直筋と同様に羽状筋であること・先ほどの解説の中で説明したように2つの線維に分けられることが大きな特徴になります。

 

羽状筋に関しては大腿直筋の際にも解説しましたが、ストレッチの際に筋が伸張されにくい可能性があります。そのためダイレクトストレッチをすることで柔軟性の改善を図ることが可能になります。

 

もう一つの特徴としては2つの線維に分かれることになります。その中で斜走線維に関しては外側筋間中隔・腸脛靭帯から起始し、膝蓋骨に付着します。そのため、膝蓋骨の外側移動に関与し、膝関節の疼痛など生じる要因になることが臨床上多くなります。

 

また、斜走線維が起始する外側筋間中隔とは大腿二頭筋と外側広筋を隔てる筋膜であり、屈筋・伸筋を隔てる重要な役割があります。そのため柔軟性が低下することで屈筋・伸筋ともに筋の発揮効率が低下し、過剰収縮に繋がることがあります。そのため、臨床上ではターゲットにすることも多く意識する必要があります。

外側広筋と臨床

外側広筋について解説していますが、臨床上大きな問題になるのが外側広筋の過緊張・過剰使用になります。考えられる要因に関しては様々な要因が考えられますが以下の要素が臨床上多く、問題になりやすい印象です。

 

内側広筋の筋力低下に関しては非常に多いです。内側広筋に筋力低下が生じることで大腿直筋や外側広筋の過剰収縮に繋がり、疼痛を訴える例など多く存在します。その様な場合には内側広筋の強化が必要になります。

 

大腿直筋の解説の中でも説明していますが、内側広筋の強化に関しては股関節内転運動を組み合わせた膝伸展運動で内側広筋斜頭の選択的な活動は認められず、外側広筋の活動の減少を認めた3)と報告されており、外側広筋の活動を抑えるために上記の方法は有効であると考えられます。また、足部を背屈位でセッティングを行ったときが内側広筋の筋活動量は最も高い値を示した4)との報告もあり、これらの情報を元にセッティングなど行うことが有効であると考えられます。

 

大腿筋膜張筋や外側ハムストの過剰使用に関しては先ほど説明した、起始の影響で外側広筋の負担に繋がります。そのため、大腿筋膜張筋や外側ハムストがなぜ過剰使用しているか考えていく必要があります。要因に関して考えられるものとしては以下の要因が考えられます。

大腿筋膜張筋に関しては以前も触れているので、外側ハムストについて中心に説明します。大殿筋・ハムストリングスは股関節伸展筋であり、歩行などでも非常に重要な筋肉になります。大殿筋は筋力低下が生じやすく、結果としてハムストリングスの過緊張に繋がることがあります。また、仙腸関節の安定化に関わる仙結節靭帯とハムストリングスが筋連結しているため、仙腸関節の不安定により代償的にハムストリングスの過剰使用に繋がることもあります。

 

骨盤後傾や膝関節屈曲位に関しては前回の記事においても解説しています。以下の論文の中でも骨盤後傾することで膝関節の屈曲が増加すると報告しています。膝関節屈曲位になるとより膝関節伸展筋の収縮が必要となり、負担に繋がります。

 

これらの要素を評価していくことで外側広筋の過剰使用・過緊張を抑制することが出来ます。また、解説の中で話した外側筋間中隔の癒着がある場合も臨床では問題になります。その場合は外側広筋・大腿二頭筋の筋間をダイレクトにストレッチすることで改善することが多いです。

 

本日は外側広筋について解説しました。以前のリンクも以下にあるので参考にしていただければ幸いです。本日もお読みいただきありがとうございました。

 

【参考文献】

1)Waligora AC, et al: Clinical anatomy of the quadriceps femoris and extensor apparatus of the knee.Clin Orthop Relat Res 467 (12):3297-3306,2009

2)林典雄: 運動療法のための機能解剖学的触診技術 下肢•体幹.メジカルビュー社,2012

3) Earl JE, Schmitz RJ, et al: Activation of the VMO and VL during dynamic minisquat  exercises with and without isometric hip adduction. J Electromyogr Kinesiol 11(6): 381-386,2001

4)CoughJV,LadleyG:An investigation into the efectivenes of variosu forms of quadriceps exercises.Physiother57:356-361,1971

5) 中道哲朗,他:立位における骨盤後傾角度変化が大腿筋膜張筋、大腿二頭筋および内側広筋の筋電図積分値に及ぼす影響.関西理学 6: 77–83, 2006

 

【基礎医学シリーズ解剖学編】 

第1回:殿筋群

第2回:小趾外転筋

第3回:後脛骨筋

第4回:前脛骨筋

第5回:多裂筋

第6回:大腿筋膜張筋

第7回:後頭下筋

第8回:頸長筋

第9回:外腹斜筋

第10回:内腹斜筋

第11回:腸腰筋

第12回:下腿三頭筋

第13回:長腓骨筋

第14回:大胸筋・小胸筋

第15回:深層外旋六筋

第16回:縫工筋

第17回:足部内在筋

第18回:大腿直筋

第19回:外側広筋

基礎医学シリーズ解剖学編―外側広筋―

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