これだけは知っておきたい!変形性股関節症の臼蓋被覆率の高め方

3768 posts

皆さんこんにちは。茨城県で理学療法士をしています宮嶋佑です。

>>宮嶋先生のTHAセミナーを受講する<<

今回は変形性股関節症患者さんを担当した際にこれだけは知っておきたいという知識を紹介します。私は以前、全国的にみても非常に多くの人工股関節全置換術を行っている病院に勤務していた経験があり、多くの変形性股関節症患者さんを担当しました。今回紹介する知識は、転職したての頃の私が知らなかったばかりに、

・患者さんが全然良くならない

・悪化してしまい手術をすることになった

・知らないせいで先生に怒られた

という苦い経験をする羽目になったものです。この記事を最後まで読んでいただけると、僕と同じような思いをしないで済むようになり、

・自信をもって患者さんに説明をすることが出来る

・変形を予防するためにやるべきことが分かる

・先生に信頼される

といったことが出来ると思いますので、是非最後までご覧ください!

①2次性がほとんどである

1つ目に知っておいて欲しい知識は、変形性股関節症は臼蓋形成不全や先天性股関節脱臼などから生じる2次性がほとんどという事です(ちなみに変形性膝関節症は原因がはっきりしない1次性がほとんどと言われております)。つまり、変形性股関節症は「臼蓋形成不全に対しての対応が超重要」と言えます。股関節疾患のリハビリオーダーが出る際は、「変形性股関節症」と「臼蓋形成不全」の診断がつくことが多いです。この両者の関係性を知らなかった昔の僕は、患者さんの痛みや訴えに集中してしまい、臼蓋形成不全から変形性股関節症へ移行するのを予防するという考えが全くありませんでした。

そのことにより、痛みが改善したにもかかわらず主治医の先生に激怒されました。理由としては、

①Finger floor disitance(指床間距離)が全く改善していなかったこと(なぜこれが大切なのかは後ほど解説します)

②予防のための自主トレ指導が不十分であったこと

というものでした。僕の経験上、整形外科の先生は、目先の症状だけでなく非常に長い期間のことを考えていらっしゃると思います。よって、臼蓋形成不全でリハビリのオーダーが出た際は「変形性股関節症への進行を予防しよう」と考えたり、変形性股関節症のオーダーが出た際は「臼蓋形成不全症から進行したのかな?」と必ず考えるようにしましょう。

②臼蓋の被覆率

2つ目に知ってほしいのは、臼蓋の被覆率です。臼蓋の被覆率とは何かというと、大腿骨頭を臼蓋がどれくらい覆っているかという事です。下の図を見てください。

左が正常の股関節で右側が臼蓋形成不全と思ってください。臼蓋形成不全では、正常と比べて大腿骨頭を臼蓋があまり覆っていないのが分かると思います。これを臼蓋の被覆率が低下した状態と言います。臼蓋の被覆率が低下すると何がまずいのかというと、軟骨の摩耗が正常と比べて早くなってしまう事です。

下の図を見てください。

こちらも向かって左(右股関節)が正常で右(左股関節)が臼蓋形成不全です。正常と比べて、臼蓋形成不全では大腿骨頭を覆っている臼蓋の面積が少ないので、より少ない面積に大腿骨頭からの圧が加わります。それによって軟骨の一部分に圧が集中する事になり軟骨の摩耗が早まってしまいます。だから臼蓋形成不全から変形性股関節症に進行する患者さんが多いんですね。よって臼蓋形成不全から変形性股関節症に進行するのを防ぐためには、臼蓋の被覆率をいかに高めるか?が重要となります。

臼蓋の被覆率を高めるには?

臼蓋の被覆率が低下している臼蓋形成不全は生まれつきの骨構造異常である為、保存療法で臼蓋形成不全を治すことは出来ません。しかし、股関節のアライメントによって臼蓋の被覆率は変化します。その為、我々セラピストはなるべく被覆率が高まるアライメントを促し、被覆率が低下するアライメントを予防する事で、進行を予防することが出来ます。ではどういったアライメントが被覆率を向上させるのでしょうか?

下の図を見てください。

まずは、骨盤の前傾位(股関節屈曲位)の方が後傾位(股関節伸展位)と比べて被覆率が向上します。前述したFinger Floor Distance(以下よりFFD)はハムストリングスの柔軟性を評価する検査であり、間接的に骨盤前傾が出来るか?を評価しています。

FFDが低下している⇒ハムストリングスの柔軟性低下⇒骨盤前傾が出にくい

FFDが向上している⇒ハムストリングスの柔軟性改善している⇒骨盤前傾出やすくなっている

という事ですね。だから、FFDの数値が全く変わらなかったことに先生は激怒したという訳です。続きまして股関節外転位と内転位を比べてみます。

こちらの図を見てわかるように、股関節外転位の方が内転位と比べて被覆率が向上します。そのため股関節外転の可動域低下や内転位での歩行となるトレンデレンブルグ歩行は、臼蓋形成不全の患者さんにとって必ず改善しなければならないものになります。最後に股関節内旋位と外旋位を比較してみましょう。

ご覧の通り、股関節内旋位の方が外旋位と比較して被覆率が向上しているのが分かります。よって、外旋筋の伸張性低下による股関節外旋アライメントも改善が必須のものと言えますね。

臨床で気を付けなければならない事

ここまで、臼蓋の被覆率について紹介した上で臨床で注意しなければならないことをお伝えします。それは、「骨盤前傾アライメントと股関節内旋アライメントを安易に治さない」という事です。臼蓋形成不全や変形性股関節症の患者さんは、骨盤前傾+股関節内旋アライメントを呈している事が非常に多いです。

 

正常のアライメントから逸脱した姿勢をみると治したくなるのがセラピストの性かもしれませんが、上述した様に骨盤前傾と股関節内旋は臼蓋の被覆率を向上させてくれます。よって、安易にアライメントを治してしまう事によって、疼痛が増悪したり変形が進行してしまう恐れがあります。骨盤の過剰な前傾+腰椎の伸展によって腰痛が生じてしまう事もあるので、絶対に直してはいけないわけではありませんが、安易に治さずにより全体的に評価してから治療するようにしてください。以上参考になれば嬉しいです!最後までお読みいただきありがとうございました!

THA術後の理学療法3つの課題

前回TKA術後理学療法の講習会は大人気となり、アンケートでも特に要望の多かったTHA術後理学療法についてお話しいただきます。宮嶋先生は、全国的にみても非常に多くのTHAを行っている病院に勤務した経験があり、これまで400例以上のTHA術後患者さんを診てきました。THA術後の理学療法で重要となってくるのが、

(1)脱臼に対する対応
(2)脱臼させずに屈曲可動域を向上させる事
(3)跛行に対する治療

だと思います。今回は、その3つについて徹底的に深く且つわかりやすく解説したいと思います。今回のセミナーに参加して頂くと、

・脱臼についての不安が軽減し、自信を持ってADL指導が出来る
・脱臼におびえずに屈曲可動域を向上させられる
・しっかりとプロトコール通りに退院させることができ、医師や上司に信頼される
・「歩き方が綺麗になった」と患者さんに喜んでもらえる

といったことが出来るとようになります。

*1週間限定のアーカイブ配信あり。

プログラム

(1)THAの脱臼について徹底解説
・THAはそもそも何故脱臼するのか?
・脱臼しやすいTHAの条件(侵入方法、カップの前開き、外開き、骨頭径)
・知らないと危ない骨盤と大腿骨前捻角の影響
・脱臼予防方法について

(2)THA後屈曲可動域の改善方法
・脱臼しない股関節屈曲可動域訓練
・股関節屈曲の3大制限因子
・人工関節特有の曲げ方とは?

(3)THA後に多い跛行への評価・治療
・反り腰歩行への評価・治療
・デュシェンヌ歩行への評価・治療
・疼痛への恐怖が強い人への対応

講師:
Confidence代表
宮嶋 佑(理学療法士)

概要

【日時】 7月30日(日) AM10:00~12:00
【参加費】3,300円
【定員】50名 
【参加方法】ZOOM(オンライン会議室)にて行います。お申し込みの方へ、後日専用の視聴ページをご案内致します。

お申し込み▶︎https://tha-physicaltherapy.peatix.com/

これだけは知っておきたい!変形性股関節症の臼蓋被覆率の高め方

Popular articles

PR

Articles