大腿骨頸部骨折の概要と分類

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大腿骨頸部骨折(Femoral Neck Fractures:FNF)年間に約17万人が受傷しており、2030年には約26万人に達することが報告されています1) 。この骨折は通常、外側骨折と内側骨折の2つのタイプに分けられます。外側骨折は、大腿骨頚部の骨が外側(ふとももの外側)で折れる状態を指します。このタイプの骨折は、通常、大腿骨頚部の一部が外側にずれる傾向があります。

一方、内側骨折は、大腿骨頚部の骨が内側(ふとももの内側)で折れる状態を指します。内側骨折は比較的まれであり、外側骨折よりも重篤な状態である場合があります。内側骨折では、大腿骨頚部の一部が内側にずれることがあり、血管や神経組織への影響が懸念されます。

 

危険因子2)

・女性に多い。閉経後は閉経前に比べて大腿骨頸部骨折を起こす可能性が2倍高い3)
・骨密度の減少4)
・薬物によっては、コルチゾンなどの骨密度の低下を引き起こす可能性があります。
・カルシウムとビタミン D が骨量を増加させることはよく知られているため、不足すると股関節骨折を含むいくつかの骨折を引き起こす可能性があります。
・年齢が上がるほど、股関節骨折のリスクが高くなります。これらの骨折の 90% は 70 歳以上の人に発生します。
・アルコールとタバコは骨量を減少させ、股関節骨折のリスクを高める可能性があります。
・内分泌疾患は骨のもろさを引き起こす可能性があります
・身体活動は筋肉量と骨量にとって非常に重要です。
・脳卒中は、股関節骨折を引き起こす可能性のある転倒の危険因子を増加させます。
・パーキンソン病は、股関節骨折を引き起こす可能性のある転倒の危険因子を増加させます。

Garden分類

FNFを評価するための放射線学的分類法です。この分類法は、骨折の変位(移動)の程度に基づいています。以下に、Garden分類の4つのステージを示します。

Garden I:不完全骨折または衝撃骨折。骨折線は大腿骨頸部の下部を通過し、大腿骨頭は正常な位置にあります。

Garden II:完全骨折だが、大腿骨頭はまだ正常な位置にあります(非変位性骨折)。

Garden III:完全骨折で、大腿骨頭が部分的に移動しています(部分的に変位した骨折)。

Garden IV:完全骨折で、大腿骨頭が完全に移動しています(完全に変位した骨折)。

Garden分類は、骨折の重症度を評価し、治療計画を立てるための重要なツールです。非変位性骨折(Garden IとII)は通常、内部固定により治療され、変位性骨折(Garden IIIとIV)は股関節置換手術を必要とすることが多いです。

手術の種類

multiple pinning(マルチプルピンニング)

この手術では、股関節の正しい位置と安定性を回復するために、複数の金属ピン(または釘)が使用されます。multiple pinning手術は、通常、股関節の骨折や脱臼の治療に使用されます。手術中、外科医は骨折や損傷した関節の骨を正しい位置に戻し、それを安定させるために複数のピンを使用します。これにより、骨が固定され、正常な骨癒合(骨の再結合)が促進されます。ピンは通常、股関節周囲の骨に挿入され、骨を固定する役割を果たします。ピンは一時的に使用され、骨が十分に癒合するまで固定された状態に留まります。その後、ピンは通常、別の手術または外科的な処置によって取り外されることがあります。

*ハンソンピン(Hansen pin)は、使用される特定のピンの一種です。金属製の細長いピンで、一端にはネジのような特殊な形状があります。ピンは骨に挿入され、骨折した骨片を安定させるために使用されます。

術後合併症

大腿骨頚部骨折の術後合併症には、以下のようなものがあります:

(1)骨癒合の問題:大腿骨頚部骨折の術後、骨片が十分に癒合しない場合があります。これは骨折の治りが遅れることを意味し、再手術や追加の治療が必要になる場合があります。

(2)感染:手術に伴うリスクとして、手術部位が感染する可能性があります。感染症の症状には発熱、発赤、腫脹、排出物の異常などがあります。感染が疑われる場合は、早期の治療が必要です。

(3)血栓症:手術後、静脈血栓症(深部静脈血栓症または肺血栓塞栓症)のリスクがあります。これは、血液が凝固して血管内で塊を作り、血液の流れを阻害する状態です。血栓症の症状には、足の腫脹、疼痛、呼吸困難などがあります。

(4)変形や不安定性:術後に大腿骨頚部骨折が不適切に固定されたり、骨片がずれたりすると、変形や不安定性が生じる可能性があります。これは正常な動作や関節の機能に影響を与えることがあります。

(5)高齢者における合併症:高齢者の場合、大腿骨頚部骨折の手術はリスクが高い場合があります。合併症として、麻酔関連の問題、心血管の負担、認知機能の低下などがあります。

参考文献

1) 荻野 浩:大腿骨頸部骨折の発生状況.Osteoporosis Japan,. 2002, 10: 18-20

2)Grisso JA, Kelsey JL, Strom BL, Ghiu GY, Maislin G, O'Brien LA, Hoffman S, Kaplan F. Risk factors for falls as a cause of hip fracture in women. New England journal of medicine. 1991 May 9;324(19):1326-31.

3)Banks E, Reeves GK, Beral V, Balkwill A, Liu B, Roddam A, Million Women Study Collaborators. Hip fracture incidence in relation to age, menopausal status, and age at menopause: prospective analysis. PLoS medicine. 2009 Nov 10;6(11):e1000181.

4)Angthong C, Suntharapa T, Harnroongroj T. Major risk factors for the second contralateral hip fracture in the elderly. Acta orthopaedica et traumatologica turcica. 2009 May 1;43(3):193-8.

http://www.mayoclinic.com/health/hip-fracture/DS00185/DSECTION=risk-factors 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK538236/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7345750/

THA術後の理学療法3つの課題

前回TKA術後理学療法の講習会は大人気となり、アンケートでも特に要望の多かったTHA術後理学療法についてお話しいただきます。宮嶋先生は、全国的にみても非常に多くのTHAを行っている病院に勤務した経験があり、これまで400例以上のTHA術後患者さんを診てきました。THA術後の理学療法で重要となってくるのが、

(1)脱臼に対する対応
(2)脱臼させずに屈曲可動域を向上させる事
(3)跛行に対する治療

だと思います。今回は、その3つについて徹底的に深く且つわかりやすく解説したいと思います。今回のセミナーに参加して頂くと、

・脱臼についての不安が軽減し、自信を持ってADL指導が出来る
・脱臼におびえずに屈曲可動域を向上させられる
・しっかりとプロトコール通りに退院させることができ、医師や上司に信頼される
・「歩き方が綺麗になった」と患者さんに喜んでもらえる

といったことが出来るとようになります。

*1週間限定のアーカイブ配信あり。

プログラム

(1)THAの脱臼について徹底解説
・THAはそもそも何故脱臼するのか?
・脱臼しやすいTHAの条件(侵入方法、カップの前開き、外開き、骨頭径)
・知らないと危ない骨盤と大腿骨前捻角の影響
・脱臼予防方法について

(2)THA後屈曲可動域の改善方法
・脱臼しない股関節屈曲可動域訓練
・股関節屈曲の3大制限因子
・人工関節特有の曲げ方とは?

(3)THA後に多い跛行への評価・治療
・反り腰歩行への評価・治療
・デュシェンヌ歩行への評価・治療
・疼痛への恐怖が強い人への対応

講師:
Confidence代表
宮嶋 佑(理学療法士)

概要

【日時】 7月30日(日) AM10:00~12:00
【参加費】3,300円
【定員】50名 
【参加方法】ZOOM(オンライン会議室)にて行います。お申し込みの方へ、後日専用の視聴ページをご案内致します。

お申し込み▶︎https://tha-physicaltherapy.peatix.com/

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