【ド・ケルバン腱鞘炎】"信頼性の高い鑑別"と"筋膜アプローチ"

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今回は、ドケルバン腱鞘炎についてフォーカスしてみたいと思います。臨床でも難渋しやすいドケルバン腱鞘炎の鑑別方法からアプローチまでわかりやすく解説していきます‼︎

ドケルバン腱鞘炎の鑑別

ドケルバン腱鞘炎は、橈骨茎状突起部の第1背側区画における短母指伸筋腱と長母指外転筋腱の狭窄性腱鞘炎である。このように定義される、手関節橈側の痛みを訴える腱鞘炎として知られています。今回は、そのドケルバン腱鞘炎と予測するための徒手検査をご紹介します。

Finkelstein test (フィンケルシュタインテスト)

方法:

①検者が患者の母指を把持して、反対側の上肢で手関節を固定する。

②母指の屈曲(尺側内転)を他動運動で誘導する。

陽性判定:手関節背側橈側部に疼痛が生じる。

Eichhoff test(アイヒホッフテスト)

方法:

①患者自身の母指を示指〜小指で握らせる。

②手関節を自動尺屈させる。

陽性判定:橈骨茎状突起周囲に疼痛が生じる。

この2つの検査の違いは、他動か自動かというところですね。

検査の信頼性

では、臨床でこの2つのテストどちらを使う方がより検査の信頼性が高いかというところですが、結論から言うと、Finkelstein test の方が特異度が100%との報告があり信頼性が高いです。

引用文献

[1]適切な判断を導くための整形外科徒手検査法 エビデンスに基づく評価制度と検査のポイント , 編 : 村松将司 三木貴弘 , メジカルビュー社 , 2020,p182d

とされています。

つまり、Finkelstein testは特異度が高いため、本検査で陽性となれば、ドケルバン腱鞘炎の可能性が高いと言えます。

また、Eichhoff testも比較的特異度は高い方ですが、

・偽陽性が多いとの報告もある

・母指CM関節症でも陽性になることがある

このことから、Finkelstein test を選択する方がオススメです。

ドケルバン腱鞘炎と筋膜の関係

今回も、筋膜のお話をしていきますので、ドケルバン腱鞘炎に関連する筋膜の機能解剖を理解する必要があります。まず、前提として理解しておくべきことは、筋膜が高密度化を起こす(硬くなる)とその周囲の筋肉の伸張性や筋出力も低下するということ。

ドケルバン腱鞘炎は、短母指伸筋と長母指外転筋間の隔壁の有無・腱の滑走が症状に影響を与える。

引用:整形外科リハビリテーション学会 改訂第2版 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション-上肢・体幹 株式会社メジカルビュー社 2014 p222

と言われていることから、臨床において短母指伸筋と長母指外転筋間の腱の滑走を改善させることが重要なポイントとなります。

また、ドケルバン腱鞘炎は肥厚した支帯に起因する腱インピンジメントであり、手首の支帯は前腕筋膜が強化された組織であることから前腕筋膜に生じる変性は手首の支帯に影響を及ぼし、腱インピンジメントの原因になり得る。

引用:Carla Stecco 筋膜系の機能解剖アトラス 医歯薬出版 2018 p278-288

つまり、前腕筋膜の機能障害により手首の支帯が肥厚することによって、短母指伸筋と長母指外転筋間の腱が適切に滑走できず、狭窄性腱鞘炎としてドケルバン腱鞘炎が発症すると解釈できます。

さらに、母指球筋と小指球筋の多くの線維は、手首の屈筋支帯に挿入する。さらに、手の浅層の背側筋膜は側面で小指球と母指球の筋膜と連続的であり、遠位で伸筋腱の展開と混ざり合う。

引用:Carla Stecco 筋膜系の機能解剖アトラス 医歯薬出版 2018 p278-288

このことから、前腕筋膜が強化された組織である屈筋支帯の機能異常が生じると、母指球筋の筋膜を介して伸筋腱の滑走性を低下させる可能性があることが理解できます。

その前腕筋膜の中でも筋膜のアプローチにおいてドケルバン腱鞘炎に有効なポイントがあります。

それは、

です。つまり、ドケルバン腱鞘炎の痛みを解決させるためには、「屈筋支帯の橈側の滑走を改善させる」ことが臨床上での重要なポイントになります。

筋膜の評価方法

では、具体的にどのように評価を行えばいいのか?それは、前腕の遠位橈側で皮膚の動きが悪い部分を探すことです。

▼実際にはこんな感じ

屈筋支帯の上を滑らすように丁寧に触っていくと高密度化を起こしているケースでは、皮膚の動きまで悪く固まっているようなポイントがあります。そこを少し圧迫してフリクションした時に痛みを訴えるような場合はそこの筋膜が硬くなっていると判断します。

筋膜への具体的なアプローチ方法

では、これに対し実際にどういうアプローチをしていけばいいのか?それは、前腕の遠位橈側で皮膚の動きを改善させることです。

▼実際にはこんな感じ

正しくアプローチできていると、「ごりごりした感じ」と「痛み」があります。その固さと痛みが取れるまで3分程度続けてみてください。このアプローチは、深筋膜に対し機械的刺激と炎症反応による熱刺激を加えてヒアルロン酸の状態を変えるので、かなりの痛みを伴います。なので、アプローチはマイルドに行ってくださいね。

また、アプローチの目的と理由をしっかりと患者さんに説明し、同意を得てから介入してください。さて、このアプローチを行ったら前後でFinkelstein testや動作時痛などの症状の変化をみてみてください。これで改善がみられるようであれば、数回に分けて介入を続けて症状の改善を目指します。(1回の介入で取り切るのは難しいです。)

いかがでしたか?

今回はドケルバン腱鞘炎の鑑別方法と筋膜アプローチをご紹介しました。ただ、今回ご紹介した筋膜アプローチはあくまで「一例」です。本当は、このケースにおいてもまだ何パターンもアプローチの方法があります。

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【ド・ケルバン腱鞘炎】"信頼性の高い鑑別"と"筋膜アプローチ"

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