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【会見全文】コロナ後3年間の医業利益率は3.3%程度である|日本医師会

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22日日本医師会は財務省財政制度等審議会(財政審)「秋の建議」を受けて、会長の松本吉郎氏が会見を開きました。20日に財務省より提言された建議に対して、日本医師会は真っ向から猛反論しています。特にコロナ禍における特需によって診療所の利益率が他産業に比べ高い水準となっている点に注目が集まっています。財政審で提言され話題となったのは「診療所の報酬単価5.5%程度引き下げる」ことが明記された点です。他産業に比べて3倍近い利益率(経常利益率※1)に着目し他産業と同水準にすべしとの意見から報酬の引き下げを提言しています。

これに対して松本会長は「財務省が意図的に恣意的な資料を作り上げ、非常に苦しい資料作りであり、苦し紛れの証拠である」と痛烈に批判しました。その上で松本会長は経常利益率ではなく医業利益率※2でみるべきだと主張しています。つまり、コロナ特需は一過性のものであり現在では他産業の利益率と同様になっているため報酬引き下げの根拠にはならないと述べています。

両者一歩も引かない展開ではありますが、マイナス改定を免れることは難しいと現況である感じます。

※1本業で得た利益に加え、本業外で経常的に発生する収益・費用を加味した利益の割合。

※2医業利益から医業費用を差し引いたものが医業利益、この医業利益に医業外収益を加えて医業外費用を差し引いたものが経常利益になる。

【合わせて読む】

診療所の報酬単価5.5%程度引き下げ提言

全文文字起こし

今日はあの非常に自分の心の思いが強いので赤いネクタイを占めてまいりました。財務省の財政制度等審議会(財政審)は11月20日に令和6年度予算の編成等に関する建議、いわゆる秋の建議を公表いたしました。その中では例年通り医療等に関する様々な主張が展開されております。これまで日本医師会は9月29日には同月27日に出された財政審の財政総論に対して、それから11月2日にはその前の日の1日に出された財政審の社会保障の総論と各論に対して計2回にわたって我々の考えを述べてまいりました。

特に11月1日の社会保障の総論に関する議論の中で「医師であるあなた方は、休日診療で働いてその分儲けたからいいじゃないか。コロナによる一時的な儲けで、しばらくは食いつなぎなさい」と言わんばかりの資料が提示されたことに対しても強く反論いたしました。今回は冒頭で述べた秋の建議に対して、日本医師会の考え方を述べさせていただきます。

まず総論ですが財務省が主張するマイナス改定というのは全くもって現実的ではなく、大幅なプラス改定が必要です。財政審の主張は従来のコストカット最優先の主張であり岸田政権が掲げる、コストカット型経済からの完全脱却という方針に背くものだと考えております。また頑張ったところから召し上げるというのは、通常の医療とコロナ対応で頑張った医療事事者の、まさに心が折れる建議であり大変遺憾です。

コロナ対応で利益が上がったから報酬削減というのは、例えば災害対応で残業手当が増えたから、災害の対応後には逆に対応前よりもさらにその分、賃下げをすることと全く同じ主張です。頑張って災害対応したものは、災害対応した翌年は給与を下げるってことであれば、信頼関係を続けることはできません。築けません。次の災害ではおそらくその対応に苦慮するものと思います。

インフレ下で賃金が上がれば税収も保険料も増加しますが、医療従者の賃上げがなされなければ、物価はインフレする一方で賃金は医用介護発でまたデフレに逆戻りしてしまいます。「医療は税金だから引き上げない」という理由には無理があり、公共サービスの一翼を担うような例えば運輸業や情報通信業も物価高で、あるいは賃上げに非常に苦しみ良質なものを安定的に提供するため、あるいは安定的かつ高品質のサービスを展開するためといった理由で、どこも経営努力をしながらもそれに耐かねて値上げをしております。

我々医療会も運輸業や情報通信業の気持ちはよく分かります。同じように物価高騰や賃金上昇の中で、安全かつ質の高い医療を安定的に提供するためには診療報酬の思い切ったプラス改定しかありません。また診療所も中小零細企業であり販売価格や納入価格に転嫁できない中小企業の気持ちもよく分かります。私どもも物価高騰や賃金上昇を価格に転嫁できずに大変苦しんでいます。

各論においてはまず、診療所の医業利益率についてです。財政審は診療所の平均的な経常利益率は8.8%に急増したと指摘した上で、他産業とも比較して過度な経常利益率にならないよう報酬単価を引き下げる必要がある旨を主張しております。またその中で2022年度の中小企業における平均経常利益率は全産業で3.4%、サービス産業で3.1%となってることを紹介しております。

しかしながら11月9日に開催された第170回社会保障審議会医療保険部会でも日本医師会が資料を提出して説明いたしましたが、新型コロナの特例的な影響を除いた場合、新型コロナ流行後3年間の医業利益率は3.3%程度でありこれを見ても、診療報酬の引き下げの余地は全くありません。またコロナ特例は一過性のものであり、今年の5月と10月をもって大幅に縮減されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001165398.pdf

本件につきましては財務省が意図的に恣意的な資料を作り上げておりますが、財務省としても無理やり持ってきた3年分の資料で物を言わざるを得なかった背景もあるかと思います。非常に苦しい資料作りであり、苦し紛れの証拠であると思います。

医療・介護分野の賃金上昇は、他産業に大きく遅れを取っています。賃上げという岸田政権の重要政策を踏まえて今年の春闘の平均賃上げ率3.58%や人事院勧告の上昇分約3.3%の差を埋めるだけではなく5%以上に上がると見込まれる来春の春闘に匹敵する対応が必要です。

医療分野における賃上げにつきましては、高齢化の伸びにとどまることなく診療報酬の大幅なアップなしでは成し遂げられません。なお財政審は経常利益率を見て主張を展開しておりますが、経常利益は一過性ものである補助金とも含めた収益であり、日本医師会は以前から診療報酬による対応の必要性は医業利益率で見るべきだと考えております。利益剰余金につきましては11月2日の定例会見でも詳細申し上げましたが、さらに追加しますと固定資産や設備が含まれたものであり、現預金はそのうちの一部に過ぎません。通常医療機関の資産のうち固定資産が占める割合は半分程度です。従って利益剰余金を賃上げの原資とすべきといった考えは荒唐無稽であります。

よく「税金であるから」ということを主張されておりますけれども、医療機関に入った診療報酬は例えば約半分は人件費として従業員の元に入ります。しかしながら残りの半分は、例えば水道高熱費、それから薬代、注射代いろんな材料代それから広告費、諸々の産業に半分ぐらいは支払えるわけです。そしてまた人件費で支払われた給料もその方を経て、全て最終的には世の中全体に還流されています。そういったことを考えれば、税金だからと言って内部留保をもう1回元に戻せというのは、間違った考えだと私たちは考えています。

次に現役世代の負担についてです。資料にお示しさせていただきましたが財政審の建議では、診療所の報酬単価の引き下げにより年収500万円の方の保険料負担が年間5000円相当軽減されるといった主張をしております。しかし3.3%の賃上げが引き続き実施されれば保険料も増えますけれども、保険料を除いた収入はそれ以上に増えます。収入500万円の方の場合2年後の保険料は1万1750円増え、この中に労使合計5000円のうちの2500円も十分含まれ、保険料を除く収入は年間31万8250円ほど増えることになります。岸田政権が掲げるコストカト型経済からの完全脱却は、現役世代の手取りを増やしながら、社会保障は現在の保険料率のままで十分行うことができます。

先日の会見でも示しました通り2040年を見据えた社会保障の将来見通しでは、2025年度の協会けんぽの保険料率は10.8%に上がるとされていますが、ここ数年間のコロナ禍があった中でも現在の協会けんぽの保険料率は2012年から10年以上変わらず10%のままであります。デフレ下のコストカット型経済を踏襲し、国民に過度な不安を煽るべきではありません。地域別診療報酬につきましては11月2日の各論の会見でも申し上げましが、既に解決済みの問題と考えております。

財政審は診療所の地域間偏在の対応として診療所不足地域と診療所過剰地域で異なる1点あたり単価を設定するといった、地域別診療報酬への移行を主張しております。しかし仮にこのような対応を取った場合、都市部ほど窓口負担が安くなり医師不足地域の住民はさらなる負担感を強いられます。その結果都市部へのさらなる一極集中が進むなど国が取り組んでいる地方創生に逆行した動きが加速されかねません。一方で財政審は医療会に対し、賃上げ促進税制の積極的な活用を求めています。しかしながらこの賃上げ促進税制は給与等に当てるための他のものから支払いを受ける金額を控除して優遇措置の適を行うものであり、処遇改善が一部の医療従事者に限られることもあって減税効果の得られる医療機関は、ほぼ実際にはありません。また賃上げ促進税制に関して、赤字法人であっても賃上げを促進するための繰り越し控除制度が装置されております。けれどもそもそも診療報酬が増えなければ、空振り規定に近い状態になってしまいます。

従って医療機関が賃上げ促進税制を利用できるよう、基本診療料を中心とする診療報酬の引き上げが必要不可欠だと考えております。その他の論点につきましては9月29日とと10月2日の定例記者会見において述べましたので主張したいことは、まだまだ沢山ありますけれども今回は割愛させていただきます。改めて今回の診療報酬改定では、30年ぶりの賃金上昇、物価高騰への対応がなされなければなりません。この中で医療従事者が頑張った証である一時的な収益を前提にするなど、言語同断であり大幅なプラス改定がなされなければなりません。社会保障の伸びを高齢化の範囲内に抑えるという対応はまさにデフレ下の異物であります。インフレ下では、税収も保険料も増加します。賃上げ物価高騰への対応は、高齢化の伸びのシーリングに制約された従来の改定ではなく、診療報酬改定の中において、別枠で行う必要があることを改めて主張いたします。

【会見全文】コロナ後3年間の医業利益率は3.3%程度である|日本医師会

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