糖尿病性腎症に対する理学療法

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糖尿病性腎症に対する理学療法の重要性と適切な運動プログラムについて検討します。糖尿病性腎症では過去に運動制限が推奨されていました。これは、運動により短期間で尿蛋白排泄が増加し、血液量や糸球体濾過率(GFR)が減少するためです。しかし、最近の研究では、適切な運動が腎機能悪化に繋がるとは限らないことが示されています。2012年〜2013年と、現在の2018年〜2019年の運動指針において、糖尿病性腎症に対するアプローチは変化しました。現在では、運動は原則可能とされ、病態に応じて運動量を調整することが推奨されています。

糖尿病運動療法の種類と組み合わせ

1.有酸素運動: 歩行、ジョギング、水泳など、酸素の供給に見合った強度で行う運動。インスリンの感受性向上が期待できます。

2.レジスタンス運動: スクワットやダンベル運動など、重錘や抵抗に対して行う運動。筋肉量の増加や筋力向上が期待できます。

3.バランス運動: 返却裏やステップ練習など、姿勢を保つための運動。生活機能の維持や向上に役立ちます。

糖尿病性腎症の病態別運動負荷

糖尿病性腎症の患者に対する運動負荷の指標は特定されていませんが、慢性腎不全のステージに応じた運動負荷が提案されています。たとえば、慢性腎不全ステージ1では5〜6 METs以下の運動が推奨され、ステージが進むにつれて、運動負荷は減少し、ステージ4や5では3〜4 METs以下の運動が推奨されます。

病態別理学療法の提案

ステージ1: 糖尿病の運動療法を基本とし、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせる。

ステージ3A3B: 浮腫や息切れ、食欲不振などの症状を考慮し、中等度から高強度の運動は避ける。

ステージ4-5: 日常生活動作や体力維持程度の運動に留め、尿毒症の症状が出現しやすいため注意が必要。

透析中の運動療法

透析中の患者に対しては、週3回から4回の有酸素運動に加え、低強度から中強度の筋力運動を推奨します。特に非透析日に30分間の息切れが生じない速

さを保つことができます。レジスタンス運動では、自重やセラバンドを用いたトレーニングを推奨し、筋力増強や基礎代謝向上が期待できます。

糖尿病性腎症の病態に応じた理学療法は、患者の生活の質を改善し、腎機能のさらなる悪化を防ぐために重要です。運動プログラムの選択と強度は、患者の病態や身体能力に合わせて慎重に調整されるべきです。理学療法士は、運動療法を通じて患者の健康管理に貢献できる重要な役割を担っています。

参考:糖尿病合併症に対する理学療法シリーズ Vol.4 【糖尿病性腎症】(セラピスTV)

【目次】

チャプター1:糖尿病性腎症の病態①
チャプター2:糖尿病性腎症の病態②
チャプター3:糖尿病性腎症に対する理学療法
チャプター4:理学療法実施時のリスク管理
チャプター5:症例紹介①早期腎症期/腎不全期
チャプター6:症例紹介②透析療法期/まとめ

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糖尿病性腎症に対する理学療法

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