糖尿病性足病変に対する理学療法

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はじめに

糖尿病性の合併症として、足病変は大きな問題となっています。本記事では、糖尿病性足病変に対する理学療法の実際について解説します。

理学療法の位置づけ

国際ワーキンググループ(IWGDF)のガイドラインでは、リスクに応じて足部の観察や履物の調整、可動域練習などの運動療法が推奨されています。ただし、予防効果に関する科学的根拠は乏しい部分があります。一方、創部の観察と履物の支援を行うことで、切断リスクを低減できる可能性が示唆されています。

理学療法の効果

神経障害のある患者に対して、レジスタンストレーニングは筋力向上に有効です。また、筋力トレーニングとバランス練習を組み合わせることで、バランス能力が向上することが報告されています。さらに、歩行能力が低下した患者に対して、週2回のリハビリを6ヶ月間行うことで歩行スピードが改善したという知見があります。

日本人患者では、米国人と比較して筋力が低い傾向にあります。私たちの共同研究では、糖尿病による下肢創傷患者に対して早期リハを実施した結果、歩行獲得や自宅復帰率が高まることが明らかになりました。また、足趾切断患者を対象とした研究では、リスフラン関節での切断や高齢、虚血があると歩行自立が困難になる一方、早期リハを行うことでQOLが向上することが分かっています。

病期に応じた理学療法

発症予防期:リスク評価(足部形状、歩行状況、履物のチェックなど)

→創傷治療期:オフローディング(圧除去)、免荷歩行練習、靴の調整、可動域練習

→再発予防期:リスク管理、オフローディング継続、QOL評価、アドヒアランス指導

→切断後:義足練習、非切断側の管理、ADL指導、家族指導

理学療法の適用範囲

動脈疾患による血行障害:有酸素運動による血行動態改善

可動域制限による異常足底圧:下肢筋力練習、可動域練習

歩行や履物による過剰な足底負荷:免荷デバイスの調整

実際の進め方

感染管理期:ベッドサイドでマイルドな可動域/筋力練習

→創傷治療・安静期:電気刺激療法(EMS)による廃用予防

→創傷安定期:オフローディング下での立位荷重練習、足底圧評価

→ADL確認期:動作チェックと指導

まとめ

感染管理の中でも廃用予防を行い、体重負荷時期に応じた創傷状態への配慮が重要です。抜糸後は、ADL向上と再発予防に取り組むことが肝心です。術前から適切な評価を行い、安全に理学療法を進めていく必要があります。

参考:糖尿病合併症に対する理学療法シリーズ Vol.5【足病変】(セラピスTV)

【目次】

チャプター1:疫学的背景
チャプター2:生理学的な視点①
チャプター3:生理学的な視点②
チャプター4:運動学的な視点
チャプター5:運動療法の流れ
チャプター6:運動機能評価のポイント
チャプター7:運動療法(各論)
チャプター8:注意点(リスク管理)①
チャプター9:注意点(リスク管理)②
チャプター10:臨床研究

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糖尿病性足病変に対する理学療法

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