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人工股関節全置換術(THA)の基本:理学療法士のための包括的ガイド

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人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty, THA)は、股関節の重篤な疾患に対する効果的な治療法として広く利用されています。本ガイドでは、THAの基本的な手術手技から最新の知見までを解説し、理学療法士が臨床で必要とする知識と術後管理のポイントを網羅的に紹介します。特に、術後の合併症予防とリハビリテーションに焦点を当て、患者のQOL向上に貢献するための具体的なアプローチを提案します。

THAの合併症と発生率

理学療法士としてTHA術後管理において特に注意すべき合併症は以下の通りです:

脱臼:初回手術で0.5-5%、再置換術後はさらに高率になります。

感染:0.1-1%(再置換術後はリスク上昇)。

静脈血栓塞栓症(VTE)

深部静脈血栓症(DVT):10-30%。

肺塞栓症(PE):0.5-1%(致死率0.5%未満)。

神経損傷:0.1-4%。

術中骨折:0.5-3%。

脱臼のメカニズムと予防

従来、前方アプローチでは伸展/内転/外旋、後方アプローチでは屈曲/内転/内旋が脱臼肢位とされてきましたが、実際には以下のようなデータがあります:

前方系アプローチ:前方脱臼43%、後方脱臼57%。

後方系アプローチ:前方脱臼19.4%、後方脱臼80.4%。

このため、アプローチ方法にかかわらず、両方向の脱臼リスクを考慮する必要があります。

脱臼予防の手術的対策

骨頭径の選択:大きい骨頭径(例:32mm)は脱臼しにくい。

摺動部の種類

通常型:骨頭のみが可動。

デュアルモビリティ型:骨頭とライナーが可動(脱臼リスク低減、ただし内部脱臼のリスクあり)。

カップの設置角度

外方開角:40±10°。

前方開角:15±10°。

THAの侵入方法

THAの侵入方法には前方侵入、側方侵入、後方侵入があります。それぞれの利点と欠点は以下の通りです。

前方侵入

利点:筋・腱温存、術後機能回復が速い。

欠点:狭い視野、神経損傷リスク。

側方侵入

利点:広い視野、比較的低い脱臼リスク。

欠点:外転筋切断による術後筋力低下、跛行リスク。

後方侵入

利点:広い術野、低い合併症リスク。

欠点:脱臼リスク(軟部組織修復や外旋筋切除範囲の最小化で改善可能)。

利点

カップ設置精度が向上し、脱臼率が低減されます。

短期的には臨床成績の改善が報告されています。

THA脱臼姿位

伸展・内転・外旋:DAA、ALA(ALS)

屈曲・内転・外旋:DLA

屈曲、内転、内旋:PLA、PA

術後のQOLとリハビリテーション

術後のQOL(生活の質)は疼痛の緩和を中心に高い満足度を示し、術後6ヶ月まで顕著に改善します。その後はプラトーに達することが多いです。QOLに影響する因子としては、性別、年齢、BMI、併存疾患、心理社会的要因などが挙げられます。

術前リハビリテーション

術前リハビリは術後の臨床成績を改善し、特に術後3ヶ月以内の疼痛軽減や在院日数の短縮に効果があります。また、股関節屈曲可動域の改善にも寄与します。

術後リハビリテーション

術後リハビリは疼痛軽減や機能改善に効果的です。ただし、長期的な効果は限定的であるため、3-6ヶ月程度の期間限定で実施することが推奨されます。

まとめ

THAは股関節疾患の患者にとって大きなQOL向上をもたらす手術ですが、術後の合併症リスクやリハビリテーションの重要性を理解することが必要です。多様な手術アプローチやインプラントの選択肢を踏まえ、患者ごとに最適な治療法を選ぶことが理学療法士としての役割です。適切な術後管理とリハビリテーションにより、患者の早期回復と長期的な満足度向上を目指しましょう。

▶︎▷術後理学療法の実際

人工股関節全置換術(THA)の基本:理学療法士のための包括的ガイド

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