週の真ん中水曜日の江原です。慢性疼痛を評価する質問紙(自己報告式)のご紹介。本日はPain Disability Index(PDI:疼痛生活障害指標)についてです。
PDI開発とその背景
PDIは痛みによる生活全般への影響、つまり生活障害を評価する汎用的な質問紙として1984年にPollardによって開発されました1)。現在、日本の慢性疼痛領域で生活障害を測定する評価としては、疼痛生活障害評価尺度 (Pain Disability Assessment Scale: PDAS) が普及しています2)。私も臨床で問題なく使用できていると感じたPDASですが、以下の問題があるそうです。
・質問数が20と比較的多く同一患者に対して複数回実施するには負担が大きい
・日本独自の尺度で国際比較が困難
確かにPUBMEDでPDASについて検索すると、日本人の筆頭の論文で世界で使われているものではなさそうです。一方でPDIは国際的に広まっていて、Pollard先生自身によって妥当性が報告されています。
PDI開発の背景には様々な要因があると言われていますが、開発当時の慢性疼痛の研究において「疼痛治療は疼痛レベルを下げるよりも、機能的能力を向上させる方がより効果的」であるという現在のスタンダードが確立された時期であることが影響しています。
また疼痛による障害を定義することが難しく、それまでは画像所見の重篤さ(ex.腰椎が変形しているからこの方の痛みは強い)が障害の大きさになるというような理解が一般的(ICIDH制定間もない頃)でありました。
疼痛障害を日常生活への支障を含むように広げることで、慢性疼痛のような状態の患者の障害を評価することを可能にしました。