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リハビリ介護士の育成がもたらす可能性──日慢協記者会見レポート

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この記事のポイント(要約)

リハビリ視点を持つ介護職(リハビリ介護士)の養成 が日慢協の記者会見で提言された。
高齢者の寝たきり防止・ADL向上には、介護職とリハビリ専門職の連携が不可欠。
・介護職のリハビリ的視点の強化により、日常のADLケアが機能改善につながる
・一部のPTOTSTからは 「専門職の仕事が奪われる」 との懸念もあるが、これは 「役割の拡張」と捉えるべき
PTOTSTは、より専門的なリハビリに集中しつつ、介護職への指導を強化する役割が求められる。

詳細は本文をご覧ください。

 

リハビリ視点を持つ介護職の必要性が高まる

日本慢性期医療協会(以下、日慢協)は、2月13日に開催した定例記者会見にて、「リハビリの視点・知識・技術を持つ介護職(リハビリ介護士)の養成」の必要性を強調しました。
2025年には団塊世代が後期高齢者(75歳以上)に突入し、高齢者の医療・介護ニーズは今後急激に増加・複雑化していくことが予測されています。このような状況において、リハビリテーション専門職と連携しながら、日常生活支援を行う介護職の役割がますます重要視されることになります。

日慢協の橋本康子会長は、「リハビリの視点を持った介護福祉士を養成し、日常のADLケアをリハビリの機会として活用することが、寝たきり予防や要介護度改善につながる」と述べました。

介護現場におけるリハビリ的視点の導入

近年、介護業界では人材確保が大きな課題となっており、介護職員数の減少が続いています。そのため、ICTやロボットの導入による生産性向上が進められていますが、それでもなお「人の手」が必要な場面は多く、介護職員が担う役割の重要性は変わりません。

しかし、従来の介護職員の業務には「リハビリの視点」が十分に組み込まれていないため、寝たきり防止やADL維持・向上といった観点が抜け落ちがち でした。例えば、「背もたれを倒したまま食事をすることによる誤嚥リスク」や、「力学的視点が不足した移乗動作による介護者の腰痛リスク」などが挙げられます。

リハビリ専門職との連携が鍵

リハビリ専門職(PTOTST)が直接的に介入できる時間は限られており、例えば、リハビリ療法士が関わる時間は 1日最大3時間程度 に留まる一方で、介護職員は 1日4~5時間にわたり患者と接する 機会があります。
この長時間の関わりをリハビリ機会として活用することで、少量・頻回のトレーニング を実施でき、患者の自立支援につながることが期待されます。

橋本会長は、「リハビリ専門職が介護職員に対して、日常のケアを通じてリハビリ的視点を持たせることが極めて重要」と述べ、リハビリ専門職による指導の必要性を強調しました。

診療報酬・介護報酬での評価も議論

現在、介護福祉士の配置に対して診療報酬・介護報酬上の加算が一部新設されていますが、リハビリ的視点を持った介護職員に対する明確な評価制度はまだ確立されていません。
日慢協では、リハビリ視点を持った介護職(リハビリ介護士)の養成に向けた研修制度を検討しており、例えば「1泊2日での研修と、年1回のフォローアップ研修」を実施する案が議論されています。

さらに、「リハビリ介護士の役割を診療報酬・介護報酬上で適切に評価すること」が今後の重要な課題として挙げられました。地域包括ケア推進病棟協会が提唱する「POC(Point of Care)リハビリ」(患者の傍らで短時間のADL訓練を行う手法)との整合性も図りながら、厚生労働省への提言が行われる見込みです。

リハビリ介護士の可能性

リハビリ介護士の育成により、介護現場でのリハビリ的視点が広がることで、「寝たきり高齢者を減らす」「ADL低下を防ぐ」「介護職員の負担を軽減する」 といった複数のメリットが期待されます。
特に、リハビリ視点を持った介護職が、患者の日常生活において自然な形で機能訓練を行うことができれば、回復期リハビリ後のADL低下を防ぎ、自宅復帰・施設入所後の生活の質を向上させることが可能です。

また、適切なリハビリ介護技術を身につけることで、介護職員自身の身体的負担(特に腰痛リスク)の軽減にもつながります。

まとめ

リハビリ介護士の養成と適切な評価制度の導入は、今後の介護・リハビリテーション分野において極めて重要な課題です。

リハビリ専門職である PTOTSTが果たすべき役割は、介護職員へリハビリ視点を伝えること に加え、「どのように指導すれば、現場での実践につながるのか」を考慮することが求められます。

今後の動向として、リハビリ専門職と介護職の協働体制の強化、診療報酬・介護報酬の適正な評価、研修制度の整備 などが重要なポイントとなるでしょう。

リハビリ専門職として、介護現場との連携をどのように深めるか、今こそ真剣に考える時です。

▶︎⽇本慢性期医療協会 定例記者会⾒

リハビリ介護士の育成がもたらす可能性──日慢協記者会見レポート

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