前回の内容>>「歯が痛いのは、実は鼻のせい?歯科医師による顎関節画像診断!」
パルペーション(触診)で大事なのは◯◯筋
遠藤先生 最近は顎関節症は何か1つの原因だけでは痛みは起きないと考えられています。慢性的なストレス、それは筋肉の緊張や関節の脆弱性、歯ぎしり、精神的ストレスや姿勢などいろいろな原因が加わってある一定のラインを超えると症状がでると考えられています。
だからレントゲンを撮って「あっ左より右側の方が関節が弱そうだな」と思っても実際の症状は反対側にでることもたくさんあります。
画像診断をしたあと、立位姿勢や顎位をみて、あとはパルペーションをします。なかでも咬筋のパルペーションがすごく大事になってきます。
咬筋自体をだいたい1kgの圧で触って、圧痛があるか硬結部があるか確認をします。あとは側頭筋・胸鎖乳突筋・顎二腹筋・僧帽筋上部線維などをみたりします。
顎関節の一番の特徴というのは、浮遊関節であることです。体重の影響をうけません。足や膝というのは、体重や地面からの反力が加わりますよね。顎の関節というのは噛みさえしなければそこに圧力が加わりません。
つまり咬筋を中心とした筋肉形態がおかしくならなければ、痛みや変形はおきにくい。体重が増えたところで顎関節には負担が加わることはありません。
顎関節に負担が加わりやすい姿勢と生活習慣
遠藤先生 普段の生活の中でパソコンやスマホやったりすると頭が下向きになると、上下の歯があたることがある。あたっていると顎関節のストレスも加わりやすくなってしまいます。
その上下の歯があたる時間というのを計算した報告があるのですが、1日でわずか20分以下しかなかったんです。
顎関節症の6割近くの患者さんが「Tooth Contacting Habit(以下:TCH)」といって、歯列を接触させてしまう癖があると言われています。私的にはもうすこし多い印象があるのですが。
顎関節症の方には歯科医師は初期治療として薬物療法と理学療法を行います。痛みが強ければ痛み止めを出してあげて、その次に咬筋を中心とした筋肉のコントロールを行います。
体幹が弱くて顎関節に痛みが出ている人もいる
遠藤先生 TCHなどがあると普段から噛んでいることを噛んでいると感じなくなってしまう。そうすると顎関節にストレスが加わってしまう。
逆に噛まなければストレスは減るんですよ。噛まないといっても食事のときはしっかり噛んでもらいます。それ以外の時(噛む必要ではない時)に噛んでいるっていうことが問題。
そこはPTの得意分野ですよね、筋肉なので。姿勢を診てあげて、頭が前にきている人は、首が屈曲して噛む癖がでやすい。
そのような方には頸部伸展・体幹伸展するようなトレーニング指導をしてあげるとか。あとは噛むという行為は姿勢が安定していることが必要です。
そのためには例えば体幹の評価で、ベットに寝ている状態で、両脚を5秒くらい上げてもらう。5秒ちゃんと上げていられるか。
そのときに顎で食いしばっていたり肩に力が入ってしまう方は、体幹が弱くて顎が痛みがでているんじゃないかなと判断したりします。
あとは口の中の状態を見ていきます。TCHの噛み癖のしるしが舌や頬粘膜についているか、歯が揺れていないか、削られていないかなどです。
顎が痛いひとは、まず理学療法
まずTCHという状況を患者さんに分かってもらうことが大事です。咬筋などが固くなっている状況を普段からよく感じてもらう。患者さん自身に触ってもらって、上下の歯が当たっているかの確認。
認知行動療法といって、徹底的に力を入れないように意識してもらいます。ただ「やっといてくださいね」って言うのではなく、あらゆる場面で意識するように。
例えば頬づえはけっこうストレスがかかります。小学生・中学生・高校生や大学生は授業を受けている姿勢が長いですよね。
右の手で頬杖すると下顎が左に押されて関節に負担がかかる。そういうときは机に肘をつかないような指導をしたりします。自分でコントロールできて、痛みがなくなったりカクカク言わなくなったらそれで治療が終わりです。
顎関節症で顎が痛い人にはまずは理学療法、それでも治らない人にはスプリント。最初は筋肉のコントロールを行います。スプリント療法だけではよくなりません。
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遠藤 優先生経歴
都立医療技術短期大学(現:首都大学東京)理学療法学科卒東京理科大学第二経営工学部卒
昭和大学歯学部卒
歯科医師免許取得
西小岩歯科クリニック院長
文京学院大学兼任講師(口腔理学療法)